【プレスリリース】パブリックコメント意見提出の制限検討に関するコメント〜民意の「制限」ではなく「反映」を〜
プレスリリース
2025年4月15日
国際環境NGO 350.org Japan
パブリックコメント意見提出の制限検討に関するコメント
〜民意の「制限」ではなく「反映」を〜
3月末より日本経済新聞などのメディアが、政府内で、パブリックコメントにおいて提出される意見の数が「異常件数」であり、政府内で意見提出に制限を加える検討がなされていると相次いで報じました。国際環境NGO 350.org Japanは、気候危機に対処し公正なエネルギー転換を進めるための民主主義のあり方として、パブリックコメントの制限ではなく、市民参加の実質的な拡大と民意の反映を求めます。
今回報じられた動きは、これまでの日本の気候エネルギー政策の多くが、事実上、化石燃料と原子力を重視する産業界など一部の利害関係者の意見をもとに形成されてきたことを象徴するものです。今年2月に閣議決定された温室効果ガス排出削減目標は、昨年に経済団体連合会が提案したものとまったく同じ数値です。気候・エネルギー政策の審議会で高い目標設定を求める複数の委員の意見が無視されただけでなく、パブリックコメントで提出された「この目標では不十分であり、引き上げるべきだ」という市民の声も反映されませんでした。省庁が示す政策の方向性に産業界の代表が集う審議会でお墨付きをあたえ、国会での議論もなく閣議決定でまとめてしまうという閉じた政策プロセスを見直す必要があります。
政策プロセスをオープンで民主的なものとするため、審議会の委員バランスの健全化や機能不全の改善、2012年のエネルギー政策に関する国民的議論のように討論型世論調査・全国各地での意見聴取会の複数開催といった対応、とりまとめられた政府案について国会で十分に議論を尽くすことなど、気候危機の解決を求める民意を政策に反映させるための追加施策をとることを求めます。
国際環境NGO 350.org Japanのジャパン・キャンペーナーの伊与田昌慶は次のようにコメントしています。
「日本で民主主義が欠如している問題は、気候変動政策に限りません。昨年5月の水俣病患者団体と環境大臣の懇談会で環境省職員がマイクを強制的にオフにした問題と地続きです。市民が環境汚染に係るデータの情報開示請求をしても「不開示」とされて黒塗りの文書が届くような、情報公開の不十分さともつながっています。今もっとも問わねばならないのは、パブリックコメントをどうすべきかということよりも、民主主義の制限にいかに抗うか、そして市民参加と民意の反映をいかに進めるか、であるべきです。
PFAS(有機フッ素化合物)に関する欧州のパブリックコメントにおいて、環境規制の強化に反対する意見が日本から大量に提出されたと報じられています。日本から意見を出した者の中には経済産業省の職員もいたとされています。国内の市民に対しては『大量に意見を出し過ぎだ』と言いながら、海外のパブリックコメントには日本の政府職員が産業界とともに規制強化反対の意見を投稿していることは、日本政府がパブリックコメントを含む民意の反映プロセスと民主主義をいかに軽視しているのかを示しています」
国際環境NGO 350.org Japanのジュニア・フィールド・オーガナイザーの飯塚里沙は次のようにコメントしています。
「気候危機はすべての市民に影響します。コメなど農作物の不作、異常な山火事、猛暑の熱中症リスク、豪雨などの気候災害など、無関係でいられる人は一人もいません。つまり、すべての市民が、気候危機をとめるために声をあげる権利が、そしてその声が政策に反映される権利が十分にあるはずなのです。パリ協定1.5℃目標に向けてますます対策を加速させなければならない中、市民参加や民意反映を制限することは、ただ化石燃料や原子力を重視する一部産業界の意向のみを汲み取ることで対策のさらなる停滞につながる懸念があります。マイクをオフにするように私たち市民の声を消すことはできません。これからも子どもたちの未来をまもるため、手を取り合って、市民主導の再生可能エネルギーへの公正な転換を進められるよう、私たちは声をあげ、行動し続けます」
参考記事
- 日本経済新聞(2025年3月24日)「パブコメ「異常件数」相次ぐ SNSで動員、かすむ民意」
- NHK(2025年3月25日)パブリックコメント1万件超も 職員の負担増 AIなど対策検討へ
- RIEF(2025年4月8日)EUのPFAS(有機フッ素化合物)規制策に対する日本からの「規制阻止」を求めるパブコメに、経済産業省役人も意見提出。日本の官民連携によるPFAS規制阻止行動にEU側も驚き
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伊与田昌慶(いよだまさよし)
国際環境NGO 350.orgジャパン・キャンペーナー
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