【プレスリリース】温室効果ガス削減目標を「2035年60%削減」とする政府方針案に抗議します
プレスリリース
2024年12月5日
国際環境NGO 350.org Japan
温室効果ガス削減目標を「2035年60%削減」とする政府方針案に抗議します
11月25日、政府は審議会において2035年までの温室効果ガス排出量を「2013年比で2035年までに60%削減」とする目標案を示しました。国際環境NGO 350.org Japanは、この水準が気候危機の悪影響を最小化するためには極めて不十分であること、そして審議会を含む検討プロセスが民主的に機能していないことについて厳重に抗議するとともに、「81%削減」への目標案の引き上げを強く求めます。
11月にアゼルバイジャンで開催された気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)において、浅尾慶一郎環境大臣は、日本が新たに策定し提出する新目標は、1.5℃目標に整合的な野心的なものにすると言明しました。そして、COP29において、研究者たちの国際プロジェクトである”Climate Action Tracker”は、パリ協定の1.5℃目標を達成するためには、日本においては「2013年比で2035年までに温室効果ガスの81%削減が必要」との分析を発表しています。これまで、IPCC報告書の執筆者を含む複数の科学者や専門家が日本政府に対して野心的な目標の策定を求める共同声明を発表したことがブルームバーグによって報じられています。1.5℃目標の達成のためには、今後人類社会が排出することのできる累積CO2排出量はおおよそ明らかになっており、より大幅な排出削減を一刻も早く前倒しで進めることが肝要になっています。
国際環境NGO 350.org Japanのジャパン・キャンペーナーである伊与田昌慶は次のようにコメントしました。
「今年も日本で記録的な猛暑が発生し、また能登などにおいて未曾有の豪雨が発生するなど、甚大な被害が広がりました。また、COP29バクー会議においては、世界において緊急の気候対策を進めるべき先進国の責任が強調され、英国政府が『2035年までに81%』との目標を発表しています。そのような中、今般政府が示した『2035年までに60%』という目標案は、極めて不十分です。化石燃料ビジネスを続ける大企業の多い経団連が提案した2035年目標と同じ数値であることは、日本政府が気候危機の解決ではなく、化石燃料ビジネスの既得権益を守ることを優先していることを示しています。この目標では、国内外の市民をさらなる気候危機にさらすだけでなく、化石燃料による大気汚染を放置し、COP合意に基づいて『再エネ3倍』をめざす世界において脱化石燃料のビジネスチャンスを逃すことになります。人々の生死や産業の行方を左右する目標に係る案が、委員による十分な議論や国民的議論を欠いたまま示され、拙速に既成事実化されるようなことはあってはなりません」
国際環境NGO 350.org Japanのジュニア・フィールド・オーガナイザーの飯塚里沙は次のようにコメントしました。
「政府が示した60%という目標案は、国内外で気候危機のリスクに直面する人々をさらなる苦境に立たせ、死に追いやることになります。より高い目標を求めている審議会委員に対して環境省が「意見提出を差し控えるように求めた」との報道もありました。また、気候危機からより大きな被害を受ける次世代の若者などには十分に議論に参加する機会がないままでした。地球全体の未来を左右する重要な気候危機対策の検討の場で、このような民主的でない事態が発生することは到底容認できません。政府は、10月23日時点で638通寄せられている『エネルギー政策に関する意見箱』の意見も含め、丁寧に時間をかけて民意を反映させ、公平かつ民主的なエネルギー政策及び気候目標をとりまとめるべきです」
以上
国際環境NGO 350.org Japanへのお問い合わせ
伊与田昌慶(いよだまさよし)
国際環境NGO 350.orgジャパン・キャンペーナー
メールアドレス:[email protected]