2023年12月2日

【プレスリリース】米国や日本等による「原子力発電3倍」の発表に対するコメント

プレスリリース

2023年12月2日
国際環境NGO 350.org

 

米国や日本等による
「原子力発電3倍」の発表に対するコメント

 

本日、国連気候変動会合COP28に際して、米国、英国、フランス、ルーマニア、スウェーデン、アラブ首長国連邦、日本、韓国等が、2050年までに原子力発電を3倍に増やすとの声明を発表しました。

この発表を受けて、350.orgジャパン・キャンペーナーの伊与田昌慶は次のようにコメントしています。
「パリ協定の気候目標に向けて必要な脱炭素化を加速させるために、危険な原子力を利用する余地はありません。日本では、2011年に東京電力福島第一原子力発電所事故が発生しましたが、いまだにその原因は特定されておらず、多くの人々が苦しんでいます。日本は、気候危機を利用して原子力への依存を正当化する一方で、CO2を大量に排出する産業の化石燃料ビジネスを延命させようとしています。それは危険な目くらまし以外の何ものでもありません。
2000年代以降、原子力産業のロビイストたちが主導してきた「原子力ルネサンス」の試みは、決して成功しませんでした。私たちには、気候危機に対する、より安価で、より安全で、より民主的で、より迅速な解決策がすでにあるのです。つまり、再生可能エネルギーと省エネルギーです」

350.orgヨーロッパ地域ディレクターのNicolò Wojewodaは次のようにコメントしています。
「英国には、2030年までに化石燃料を段階的廃止する責任があります。原子力のような不確かで危険な技術ではなく、再生可能エネルギーへの移行に投資しなければなりません。COP28では、2030年までに世界全体で再エネを3倍にする提案が出されています。原子力ではなく再エネに集中する必要があります。スナク首相は、気候変動対策に真剣に取り組んでこなかったため、国内での支持が得られない中、ドバイに到着することとなりました。英国は、風力発電や太陽光発電のような実証済みの解決策で気候危機に対処する歴史的責任を果たさなければなりません」

350.org北米ディレクターのJeff Ordowerは次のようにコメントしています。
「バイデン政権が化石燃料に代わるエネルギーへの投資を検討していることは評価しますが、危険な原子力のために浪費する時間はありません。目標を達成するには、すべての化石燃料の完全廃止と並行して、再生可能エネルギーを3倍にすることが絶対に必要です。しかし、再生可能エネルギーの解決策は、風力や太陽光のように、安全かつ公正に調達され、導入される必要があります。私たちは、米国やその他の大排出国が、私たちが必要とする迅速かつ完全な移行に全力で取り組むか否か、原子力を口実にすべきことを怠らないか、注視しています」

350.orgフランス・キャンペーナーのSoraya Fettihは次のようにコメントしています。
「気候変動に取り組むために必要な規模とペースで排出量を削減するには、原子力エネルギーへの投資は非効率な手段です。原子力は再生可能エネルギーよりも稼働までにはるかに時間がかかります。気候危機の緊急性を考えると、原子力はCOP28で焦点として取り上げられるべきではありません。むしろ、フランスは最終的な目標に注目し、2030年までに化石燃料の完全な廃止と、再生可能な太陽光と風力を3倍、エネルギー効率を2倍とすることを支援すべきです」

350.orgパシフィック・マネージングディレクターのJoseph  Sikuluは次のようにコメントしています。
「アジア太平洋地域における原子力発電の負の遺産は、気候を破壊する化石燃料と同様に有害なものです。原子力は気候変動に対する解決策ではありません。また、原子力発電を気候変動に対する解決策として提示するのはグリーンウォッシュです。原発は、私たちの人類にとって安全ではなく、手頃な価格でもありません。最悪の気候危機に対処するには、化石燃料を早急に段階的に廃止し、安全でクリーンで公平な再生可能エネルギーのような真の解決策に移行する必要があります」

350.orgアフリカの地域ディレクターのLandry Ninteretseは次のようにコメントしています。
「米国がアフリカ諸国との原子力協力を模索していると報じられていますが、原子力に伴うリスクとコストは利益をはるかに上回り、アフリカの地域社会の利益にならないことは明らかです。アフリカが安全で持続可能なエネルギーの未来をめざす最善かつ唯一の方法は、再生可能エネルギーの活用です。そのためには、アフリカの膨大な再エネ資源に多額の投資をする必要があります。原子力をめぐって時間と労力を浪費するのではなく、化石燃料から、正義に根ざした再生可能エネルギーシステムへの公正な移行を支援するために、財源を結集することに焦点を当てるべきです」

以上

 

参考情報 

放射性廃棄物:

  • 長寿命の放射性廃棄物は、処分と格納に課題がある。
  • 放射性廃棄物の安全な貯蔵方法は依然として深刻な課題である。

 

原発事故:

  • チェルノブイリや福島のような事故は、原子力発電の失敗が壊滅的な結果をもたらす可能性を浮き彫りにした。
  • 原子力施設の安全性や事故の可能性に対する懸念は、国民の不安を高め続けている。

 

核拡散:

  • 核技術の普及は核兵器拡散のリスクを高める。
  • デュアルユース技術が軍事目的に悪用される可能性がある。

 

高い初期費用:

  • 原子力発電所の建設には多額の初期資本コストがかかる。
  • 原子力プロジェクトに関連する財務リスクは、投資を抑制する可能性がある。

 

燃料資源をめぐる限界:

  • ウラン埋蔵量に限りがあるため、原子力エネルギーの長期的持続可能性に懸念が生じる。
  • 資源の限界に対処するためには、代替燃料サイクルまたは増殖炉の開発が必要だが、その見通しは立っていない。

 

遅い普及:

  • 原子力発電所の承認と建設には長くて複雑な規制プロセスが必要なため、他のエネルギー源に比べて導入が遅れる。

 

自然災害に対する脆弱性:

  • 原子力発電所は、地震、洪水、津波などの自然災害に対して脆弱であり、さらなるリスクをもたらす可能性がある。

 

国民の認識:

  • 国民の否定的な認識や原発事故への恐怖は、原子力エネルギーの社会的受容を妨げる可能性がある。

 

廃炉の課題

  • 運転寿命が尽きた原子力施設の廃炉には、技術的・財政的な課題がある。

 

安全保障上のリスク:

  • 原子力施設はテロ攻撃の標的となる可能性があり、そのような脅威から施設を守るためには多大な資源が必要である。

 

 

問い合わせ先:

国際環境NGO 350.org ジャパン キャンペーナー

伊与田昌慶(いよだまさよし)

Email: [email protected]