産業革命前からの地球平均気温上昇は、すでに1℃を超えました。約1℃の温暖化でも、「観測史上最高気温」、「記録的な豪雨」といった非日常的な言葉が日常になってしまいました。
そんな中、気候変動に関する科学者・専門家が集う「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、最新の報告書において「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と指摘しました。
現在、各国政府が掲げている2030年までの気候変動目標・対策は不十分ですーーーそれがすべて達成されたとしても、2.7℃の温暖化を招いてしまいます。
グテーレス国連事務総長は「気候活動家は時に、危険な過激派だと評されます。しかし、真に危険な過激派は、化石燃料の生産を拡大している国々です。新たな化石燃料インフラへの投資は、道徳的・経済的な狂気です」と語っています。
化石燃料の生産拡大を続ける産業界とそれを支援する金融業界、そしてこれとつながる政治家たちには、「脱化石」への方向転換が必要です。
私たちには「ソリューション(解決策)」があります。
省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギー100%の社会に転換すれば、化石燃料から脱却し、気候危機の悪化を食い止めることができます。
それだけではありません。大気汚染物質を減らし、私たちはより健康になります。省エネ・再エネ産業でのクリーンな雇用機会が増えます。何十兆円という化石燃料輸入コストを減らし、エネルギー自給率を高めます。そして、化石燃料と異なり、ウクライナ侵攻を推し進めるロシアのような国の戦争資金になるリスクも減らせます。
だからこそ、世界では、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行が進んでいます。この流れを止めることは誰にもできません。
進むべき方向は間違っていないのです。足りないのはスピードです。
いま必要なのは、危険な原子力のようなまやかしのソリューションではなく、省エネ&再エネという真のソリューションをこれまでにないスピードで広げること。その責任と能力を持っている化石燃料企業と政府が、見せかけではない、ほんとうの変化をただちに起こすこと。そしてその過程で、誰も取り残さない、公正な移行を確保することです。
350.orgは、気候危機の解決に向け、世界約180か国で運動を展開しています。
多様な人びとが参加し、力を合わせることのできるムーブメントを広げ、全ての生命・将来世代がより安全で公正で心豊かに生きられる社会の実現を目指しています。
気候変動による最悪の状態を回避できる今だからこそ、みなさまからのサポートをよろしくお願いいたします。
350.org Japanチームリーダー代行
伊与田 昌慶
350.org Japanチームリーダー代行
いよだ まさよし
経歴
1986年愛知県生まれ。
2009年立命館大学国際関係学部卒業、学士(国際関係学)。2011年京都大学大学院地球環境学舎修士課程修了、修士(地球環境学)。2011年より特定非営利活動法人気候ネットワーク勤務。2022年より国際環境NGO 350.org Japanに参加。これまでに阪南大学、京都女子大学大学院、大阪成蹊大学、立命館大学で非常勤講師。2007年より国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)に毎回参加し、気候変動交渉・政策の調査や政策提言に取り組む。
著書に、”Local Energy Governance: Opportunities and Challenges for Renewable and Decentralised Energy in France and Japan”(共著、Routledge、2022年)他。「気候危機への最新の知見 : IPCC第6次報告書 」『世界(956)』(単著、岩波書店、2022年)など雑誌メディアへの寄稿多数。