2023年11月1日

【声明】電源開発、松島石炭火力発電所の休廃止とGENESIS松島計画の遅延を発表:脱石炭と再エネによる公正な移行を

声明

2023年11月1日
国際環境NGO 350.org Japan

 

電源開発、松島石炭火力発電所の休廃止とGENESIS松島計画の遅延を発表:
脱石炭と再エネによる公正な移行を

 

10月31日、電源開発株式会社(J-POWER)は、2024年度末で長崎県の石炭火力発電所「松島火力発電所」の1号機を廃止、2号機を休止するとともに、GENESIS松島計画を遅らせると発表しました。当初、GENESIS松島は、2024年に工事を開始し、2026年度に運転を開始する計画だったものが、今回の発表においては2026年に工事を、2028年度に運転を開始することをめざすとされました。

 

松島火力発電所の1号機と2号機は、1981年に運転開始した、それぞれ50万kWの超臨界圧(SC)という旧式の低効率な石炭火力発電設備です。カーボンニュートラル目標に向けてCOPやG7などで石炭火力発電の削減や新設停止などが合意される中、効率の劣る松島火力発電所の2基はいち早くフェーズアウトさせることが求められていました。

GENESIS松島は、2号機に10万kW相当の石炭ガス化発電設備を付加する計画ですが、残り40万kWの旧式の石炭発電設備を温存することになります。石炭ガス化発電設備によって削減できるCO2排出量はわずかであり、本来であれば「排出ゼロ」のために急ぎ廃炉すべきものを延命させるとして、国内外から厳しい批判が寄せられています。さらに、大気汚染物質の排出量が他の発電所よりも大きいことも問題視されてきました。

今回の発表の前日である10月30日には、国際環境NGO 350.org Japanと気候ネットワーク及び市民有志が、東京のJ-POWER本店前で、ハロウィンにちなんでゾンビの仮装をしてGENESIS松島計画の中止を訴えました(写真)。松島火力発電所の休廃止とGENESIS松島計画の遅延は、国際的な脱石炭の潮流に加え、気候正義を求めるNGOや市民有志が環境アセスメントでの反対意見提出や様々な抗議アクションを実施してきたことの成果であると言えます。

電源開発株式会社本店前で「STOP GENESIS松島」「気候危機は解決できる」「TRICK OR 脱石炭」と訴える市民アクション

写真:2023年10月30日、ハロウィンにちなんでゾンビに仮装して東京のJ-POWER本店前でGENESIS松島計画に抗議する市民アクション(Photo: Daiki Tateyama)

 

 

J-POWERは、気候危機の現実と最新の科学的知見を踏まえ、松島火力発電の廃止を進め、GENESIS松島計画を中止するとともに、すべての石炭火力発電をフェーズアウトさせ、再生可能エネルギーによるクリーンな雇用を創出する方向にかじを切るべきです。

 

 

国際環境NGO 350.orgジャパンチーム・リーダーの荒尾日南子は次のようにコメントしています。

「日本において公正な再生可能エネルギー拡大の足かせになっているのが、GENESIS松島のように、政府の政策のもと延命されている石炭火力発電です。再エネに舵を切れば、気候危機への対策になるだけでなく、大気汚染から子どもたちをまもり、若者にサステナブルな雇用機会を提供し、化石燃料や核燃料の採掘や運搬に伴う自然生態系の破壊を防ぎ、地域コミュニティのお金の流出を防ぎ循環型経済をつくることにつながります」

国際環境NGO 350.orgジャパン・キャンペーナーの伊与田昌慶は次のようにコメントしています。

「GENESIS松島計画は、グテーレス国連事務総長が言う『石炭中毒』の日本の象徴であり、脱炭素に舵を切れない日本の気候・エネルギー政策『エネルギー基本計画』の後進性を如実に示しています。今回、J-POWERは、計画を遅らせながらもあくまで実現をめざすとしましたが、数週間後のCOP28などを経て、脱石炭・脱化石・再エネ3倍の潮流はますます強く、不可逆的なものになります。地元地域の雇用・環境、そして世界の安全な気候のためには、石炭火力に拘泥せず、省エネ・再エネへ転換すべきです。政府はそのための公正な移行を責任をもって急ぐべきです」

10月30日、J-POWERにGENESIS松島計画の中止を求めるアクションに参加した350 Japan市民ボランティアの井上知春さんは、次のようにコメントしています。

「気候危機が深刻であることは、度重なる猛暑、豪雨、台風などの災害が示しています。私たち市民が、最大のCO2排出源である石炭火力発電に目を向け、声をあげることは大切です。だからこそ、GENESIS松島計画の中止を求めるアクションに参加しました。その翌日に早速J-POWERから新たな発表があったことに、手応えを感じています。持続可能な未来のため、これからもアクションに参加していきたいと思います」

以上

 

問い合わせ先:

国際環境NGO 350.org ジャパン キャンペーナー

伊与田昌慶(いよだまさよし)

Email: [email protected]