世界最大の資産運用会社ブラックロックは気候変動をポートフォリオのリスク要因に位置づける
フェレイドン・シオンシャンシ(Fereidoon Sionshansi)著
(2016年10月7日 のエナジーポスト掲載記事より [許可を得て転載 ])
世界最大の民間資産運用会社ブラックロックは、ポートフォリオ(投資家が保有する金融商品の一覧)の重要なリスク要因に「気候変動」を加え、リスク計算することを表明。ニュースレター「Energy Informer」出版者兼代表フェレイドン・シオンシャンシ氏が伝えます。 シオンシャン氏によると、この決定はエネルギー部門全体に大きな影響を与えるようです。
ブラックロックは、並大抵の資産運用会社ではありません。 4.9兆米ドル(500兆円超)もの資産を誇る、世界最大の民間資産運用会社です。 必然的に、同社の主張はもちろん、その企業行動は、とても重要な意味を持つことになります。 そのブラックロック社が2016年9月に発表したレポートは、少し控えめに言ったとしても、これまでのグローバル投資とリスク管理のあり方を変える転機となるかもしれません。 レポートには、こう明記されています。「もはや投資家は、気候変動を無視するわけにはいきません。 その科学的根拠について懐疑的な人もいるかもしれませんが、気候関連の規制や技術革新に向けた機運はますます高まり、誰もがその影響を受けることになるでしょう。」
(出典:http://energypost.eu/climate-change-becomes-prime-investment-driver/)
その先も引用します。「当社ブラックロックの精鋭な投資専門スタッフの知見に基づき、投資家は気候リスクをどう軽減できるか、またこれをチャンスとして生かせるのか、あるいはプラスの影響となり得るのか詳述します。 当社では、投資利益を最大化させるという従来の目標について妥協せずとも、気候に配慮した投資は可能である、という結論に至りました。 また今後は、気候をめぐる議論において検討されている手段も見つめていきます。そのひとつとして、コスト効率の良い排出量削減方法である炭素価格制度の導入が挙げられます。」
レポートは、こう締めくくられています。 「当社は、次の結論に至りました。 全ての投資家は、気候変動への認識を見極めた投資決定をすべきです。」
あまりに単刀直入だと思われるかもしれません。
高コストな天候
1980年から2015年までの米国で発生した10億ドル規模の災害
(出典:http://energypost.eu/climate-change-becomes-prime-investment-driver/)
要するに、ブラックロックは「気候変動を明確なリスク要因として、投資ポートフォリオのリスク計算をする」と言っているのです。 これは、まさに転機となる一大事です。
暴風雨などの気象災害がますます勢力を増し、多発していることなどを受け、投資家や保険業界も、気温上昇による影響を感じ始めています。
そこで、ブラックロックは、気候変動をめぐる新たなリスク管理方針として「温室効果ガス排出量を企業の売上高率として計算すること、気温上昇が企業収益にどの程度打撃となるのか予測すること、また廃棄物をほとんど出さずに生み出した売上高を計算すること」を掲げています。
つまり、今後ブラックロックは、投資対象となる全ての企業について、「どの程度の気候リスクにさらされているか」、「気候変動に影響されない企業体制が整っているか」、また「気候変動で得をするかどうか」といったことを検討していくことになります。 …
【イベントレポート】10月はイベントの秋!
食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋と「~の秋」とよく表現されますが、350 Japanチームにとって10月はイベントの秋です!350 JapanはMy Bank My Future キャンペーンのサポーターを募るために、10月はエンゲージメントを中心にチームとして活動しました。今まで行ってきたイベントの様子を少しご紹介します!
グローバルフェスタ2016(10月1~2日)
外務省主催のグローバルフェスタでの初ブース出展でした。太陽光発電で携帯をチャージできるステーションも備え付けました!
新しい仲間で集合写真。
350 Japanボランティアの方と楽しい、新たな地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」への批准レースを表したアクションもできました。
POWER SHIFT-Energy Democracy-(10月5日)
「デンキを選べば社会が変わる!」というモットーで電力の再生可能エネルギーへの移行を推進している パワーシフト・キャンペーンさんのイベントに清水イアンが登壇&DJしました!元SEALDsの奥田愛基さんなどの豪華メンバーと共に、トークに参加しました!
土と平和の祭典(10月15~16日)
地球を祝う祭典で5代目のアースマンが登場しました!アースマンが司会するトークセッションが開かれるなど、色々と盛り上がりました!
イベントの写真はすべてこちらのFacebookアルバムでご覧になれます!…
気候変動に関する「数値」を再考慮する
(執筆者 ビル・マッキベン、執筆先NEW REPUBLIC)
人類の未来は数学に依存しています。木曜日に発表された新しい研究内の“数値”は、今までで最も不吉なものでした。
その“数値”とは、単純な計算で、地球温暖化に地球をこれ以上蝕まれたくなかったら、世界の既存炭鉱や原油採掘用の井戸内に眠る化石燃料を、あとどれだけ燃やすことができるのか、詳しく説明しています。 言い換えれば、私たちの目標が、地球の温度上昇を2℃以下(世界の国々が合意した上限)に抑えるためには、あとどのくらい新たに掘削できるのでしょうか?
答えは、ゼロ。
そうです。今回発表された新しい研究によると、この壊滅的な温暖化を防止しようと真剣に考えるなら、今後一切、新しい炭鉱を掘ったり、新しい土地に油田用の穴を開けたり、さらにパイプラインを構築したりすることは許されないのです。 そう、ただの1つも。 既に私たち人間は、化石燃料の辺境地まで拡大し終えており、 今後私たちができる唯一の選択は、既に採掘済みの化石燃料由来のエネルギーを、迅速的に管理して減らすことです。
新しい数値は驚異的です。 わずか4年前に、「地球温暖化に関する非常に恐ろしい新たな数値(Global Warming’s Terrifying New Math)」」と題するエッセイを書き、 その中で、私はロンドンに拠点を置くシンクタンク、Carbon Tracker Initiativeの研究を引用しました。 その研究では、世界の化石燃料業界が特定する石炭、石油、ガスの未開発埋蔵量は、地球の温度上昇を2℃未満に抑えたい場合に私たちが燃やせる炭素量の、5倍にも及ぶことが明らかになりました。 つまり、エネルギー企業が所有権を主張する化石燃料を全て掘り尽くし、燃やしてしまった場合、地球が5倍加熱されてしまうということです。 この計算により、さまざまな大学や教会、財団が、化石燃料関連株からの大規模な投資撤退を始めました。 そしてそれ以来、投資撤退が社会通念となっています。 現在、中央銀行総裁や世界の指導者の多くが、化石燃料の埋蔵量の大部分を地中に残しておく必要があることに同意しています。
しかし、新しい数値はさらに強烈です。 これは、ワシントンに拠点を置くシンクタンク、Oil Change International(OCI)
…【米国】アマルガメイテッド銀行が環境に配慮した投融資方針を表明: 気候変動リスクへの対応策に歴史的な一歩を踏み出す
アマルガメイテッド銀行ウェブサイトの記事を翻訳、古野真編集
アマルガメイテッド銀行は、再生可能エネルギー100%の未来実現へ取り組むことで、2番目に大きい“ネット・ゼロ・エネルギー銀行”となります。 この大きな一歩により、気候変動対策を牽引する産業界のリーダーであることを表明しました。 産業界がこぞって後に続くように、そして重要な持続的変化を起こすための挑戦なのです。
ニューヨーク、2016年9月19日ー今週、アマルガメイテッド銀行が米国の金融機関では初めて、化石燃料関連産業への投資撤退を表明しました。 国内最大のアマルガメイテッド銀行は、株主の過半数が組合という特徴を持っています。同行は、気候変動リスクから40億ドルの投資引き上げを表明しただけでなく、気候変動によるリスクを基準とした融資と融資慣行の評価まで、引き上げの範疇に含めています。
「人々と地球環境を優先する経済へ再投資するというアマルガメイテッド銀行の決断は、世界中に広まることでしょう。 金融セクターには、我々の社会を危険な化石燃料経済から移行させる能力、そして言うまでもなく大きな責任があります。我々の後を追うのが賢明だと他行もすぐに理解するでしょう。」とベーブ氏は話します。
アマルガメイテッド銀行は、気候変動による深刻な経済的リスクを示す自身の投資資産、運用、貸付ポートフォリオに関する主要方針の一連の手順を公開しており、 このニュースは、同行が指導的役割を担っている、気候変動問題の対応策をさらに推し進めることとなります。 またアマルガメイテッド銀行は、残された産業界に対して、炭素汚染を減らすために重要かつ具体的な措置を取るよう呼びかけています。
気候変動リスクへの対応策の一環として、本日アマルガメイテッド銀行は以下のことを表明しました。
- アマルガメイテッド銀行は、気候変動に関する財政腐敗やモラルハザードを懸念している顧客に提供する、新たなサービスの範囲や製品を構成するだけではなく、自身の資産や貸付ポートフォリオ全体の炭素リスクを減らすため、新たな方針を採用します。
- アマルガメイテッド銀行は、まず2017年まで、そしてさらにその先を目指して運営のネット・ゼロ・エネルギー化に取り組み、2番目に大規模なネット・ゼロ銀行を築き上げていきます。
- アマルガメイテッド銀行は、2017年にブロンクス旗艦店でのソーラーエネルギー運用化や、CDPとの提携により実現したThe Climate Groupのキャンペーン“RE100”への参加などを通して、再生可能エネルギー100%の未来に向けて動き出します。
投資判断に影響を及ぼす環境的配慮や社会的配慮、そして管理時の配慮を促す責任投資などに関する“国連原則の制定”に署名した者として、アマルガメイテッド銀行は価値を基準とした銀行業務を熱心に実践してきました。 本日発表された声明では、同行はグローバルな政策行動、炭素バブル、異常気象の影響は対処すべき重大な財政的懸念事項であるということを、はっきりと表明しました。
「私達は誠実であるべきです。我々は拡大し続ける環境危機に直面しており、アマルガメイテッド銀行はこれ以上見て見ぬふりをすることはないでしょう。」と、アマルガメイテッド銀行CEO兼頭取のケイス・メストリッチ氏は言います。 「革新と大胆な行動を誇る業界として、私達は皆リーダーとなり、実際に行動を起こして未来を変えなければなりません。 本日の発表は、私たちの未来に向けた確実な一歩ではありますが、気候を安定させ、持続可能な環境を創り出すには、皆さんも共に行動を変えていく必要があります。」
今年の初めにアマルガメイテッド銀行は、環境やグリーンバンキング、そして持続可能性の分野で急成長する組織や顧客の育成と、そのサービスを担当するサステナブル・バンキング部門を立ち上げ、イヴァン・フリッシュベルク氏を同部門の第一副部長として抜擢しました。 本日の発表内容に加え、同行は気候変動リスクへの対処、あるいは独自の持続可能性の目標のための銀行利用を模索中の大型投資家から個人まで、あらゆる顧客に提供する既存製品の構成も続けていきます。
これらの新たな行動の準備として、アマルガメイテッド銀行は、カーボンニュートラル計画を推進する環境防衛基金の気候変動対応部である“Divest Invest Network”の投資リーダーと提携し、再生可能エネルギー100%の未来実現に向けて取り組むグローバル企業のリーダー達が集うThe Climate GroupのキャンペーンRE100に参加します。
「アマルガメイテッド銀行が示しているリーダーシップは、投資ポートフォリオにおける気候変動リスクに対応するために必要なモラルと、受託者義務のつながりに対する意識が高まっていることを反映しています。 これは違いを強調する行動であり、市場に対する強いシグナルとなるでしょう。」と、Wallace Global Fund執行取締役の慈善コミュニティ対象バリュー投資のリーダー、エレン・ドーシー氏は言います。…
350との出会い
このブログは350.org Japanのイベントに参加した、ICUの学生小南菜月さんによって書かれたものです。
ICUには環境系のサークルや団体が企画を催し、学生が環境について考える機会を持つE-weeksと呼ばれる週間があります。
私はその期間中に、環境研究の授業のレポートを書くため350.org Japanのみなさんによる特別企画に参加しました。「『ダイベストメント』って何?」というタイトルで、参加する前の私はまさにダイベストメントとはいったい何だろうという気持ちでした。ダイベストメントとは、気候変動への懸念から化石燃料に関わる企業への投資をやめることです。日本ではほとんど知られていませんが、世界では40か国約500団体が取り組んでおり、その中には大学も多く含まれるのですが、その理由は企画の最後にわかりました。
はじめに気候変動を緩和させるために個人ができる取り組みを出し合いました。CO2を減らす、リデュース・リユース・リサイクルをする、節電する、自然エネルギーを利用する、植林する、地産地消などが挙げられました。
ダイベストメント運動が世界的にかつてないほどの盛り上がりを見せている背景には、2015年パリで行われたCOP21で産業革命前からの気温上昇を2℃より十分に低く抑える目標を掲げた上、さらに1.5℃以内と、より厳しい水準へ努力するという採択がされたことがあります。現在その1.5℃を守るために「あとこれだけ炭素を排出できる」という炭素予算はCO2換算で243ギガトンだそうです。そして現在地中に埋蔵が確認されている石炭などの化石燃料からの換算量は3670ギガトン、現在世界の年間排出量は40ギガトンです。つまり埋蔵量の90%以上は使えず、今のペースで排出を続けると6年で気温が1.5℃上昇してしまいます。
このように地球温暖化は急速に進んでおり、現在もカナダのフォートマクマレーでは山火事の時期が2か月早まり、5月10日にはソロモン諸島の島が5つ沈没したという報道があったそうです。そこで個人がそれぞれで行動しているだけでは足りない、もっと大きな組織を動かそうと立ち上がったのが350.orgです。
日本の大手銀行は石炭を含むに関わる企業へ莫大な投資をしていて、私達も知らず知らずのうちに地球温暖化に加担していること、同じように投資を行っている大学があることを初めて知り、驚きました。しかし、大学では情報を開示してくれないところもあるらしく、実際には状況がわからないそうです。
この企画で最も刺激を受けたのが、アメリカのスタンフォード大学でダイベストメント運動をしている二人の学生JosephとEmily、現在オーストラリア350.org職員で自分の母校にダイベストメントを行っているRayとSkypeで話したことです。スタンフォード大学では生徒の投票で75%の賛成を得て石炭関連企業への投資をやめることを大学が決め、今は次のステップに向けて模索しているそうです。
ICUの学生が、大学が投資先の情報を開示してくれない場合はどうしたらいいか尋ねたとき、「私達も同じ状況だったけれど、化石燃料に関わる企業をすべてリストアップしてそこへ投資しないよう大学に言ったよ。」と答えてくれて、なんてパワフルな学生達なのだろうと思いました。
アメリカやオーストラリアでは学生達が大学でデモをしたり、学長室の前に張り込んだりしてダイベストメント運動を展開しているようです。日本では考えられませんが、彼らはそのような日本でこそデモなんて起こったらインパクトが大きいのではないか、と話していました。なぜダイベストメント運動に関わるようになったのか聞くと、節電やリサイクル、研究なども大事だと思うけれど、そういったことはもう何十年もやっているのに状況は変わらない、市民が一体となってトップの決断に直接影響を与えたいと思ったからだそうです。
Rayの話にはさらに感銘を受けました。彼は学生時代、気候変動について調べるため奨学金を受けてモルディブから来ていたAdamと友達になったそうです。大学1年生のころRayは自分の大学が気候変動などについての勉強を教えているにもかかわらず石炭、化石燃料の会社に投資をしていて憤りを覚えました。水没の危機にさらされているモルディブから来たAdamもがっかりしてしまいました。親友が祖国を失ってしまう、彼の子どもは住むところもなく難民になってしまう、と思ったRayは自分が立ち上がるしかないと考え、ダイベストメントを始めたそうです。オーストラリアでは政府の情報開示法によって大学が情報開示を拒否できないようになっているそうです。E-weeksで参加した他の企画では個人個人が環境のことを考えてできることに焦点が当てられていましたが、その一方で、権力を持つ組織にはたらきかけるくらいしないと地球温暖化の状況は変わらないのかもしれないと危機感を覚えました。
大学でダイベストメントが行われる理由は、大学の求める学生像とダイベストメントの目的に重なる部分があるからだという話が出ました。正直、大学の教育理念や目指す学生像は文面で読むだけで深く考えたこともありませんでしたが、ICUが掲げる「信頼される地球市民を育むリベラルアーツのグローバルな展開」を考えてみると、自分もICUの学生として海外に目を向け、地球に目を向け、行動を起こさなければならないと思いました。デモをしたり実際に投資をやめさせたりすることだけではなく、今回のようなイベントを通じてもっとたくさんの人にダイベストメントについて知ってもらいたいとのことだったので、今回の体験を周りの人にどんどん話したいと思っています。
E-weeksのイベントで刺激を受けて自分も今後ダイベストメントに関わりたいと思うようになり、先日初めて350.orgのミーティングに参加させていただきました。一方的に話を聞くだけでなくグループごとに質問を考えるなど、とても参加しやすい雰囲気で居心地が良かったです。また、海外の方も参加していたので、本当に地球規模のことについて考えているのだ、という実感がありました。議題の一つに、新しいキャンペーン”My Bank My Future”が出てきました。2017年9月までに信用金庫・地方銀行・労働金庫を中心に3つの銀行にダイベストメントを表明、もしくは化石燃料・原発投資を行っていないことを宣言してもらうことを目指すキャンペーンです。E-weeksで聞いた話の中で最も衝撃だったことの一つが、自分の預金が化石燃料・原発関連企業へ投資されていたことなので、このキャンペーンを通して、私のように自分が銀行に預けたお金の行方など深く考えたことがない方に現状を知ってもらいたいです。
…化石燃料への投資が激減
2016年9月17日、キーラン・クーク(Kieran Cook)、クライメート・ニュース・ネットワーク
2016年9月17日、ロンドン – 世界のエネルギー分野で革命的な変化が起こっています。2015年、石油と天然ガスへの投資が25%減少する一方で、再生可能エネルギーへの投資が30%以上増加しています。
国際エネルギー機関 (IEA)事務局長のファティ・ビロルは、「“石油と天然ガスへの投資”がこれほど減少したことは、未だかつて見たことがありません。」と、事務局長就任後初の世界のエネルギー投資の報告書をロンドンで公表した際に述べました。そして、.
「我々が行った指摘は、気候変動とパリ協定に対し、非常に重要なメッセージを発しています。 政府や企業、市場などは、何が進行しているか理解できなければ、目指すべきところにはたどり着けません。」
化石燃料を再生可能エネルギーに変えていくことは、気候変動との闘いにおいて欠かせません。
エネルギー安全保障を重視しているIEAは、2015年における世界のエネルギー分野への投資は全体で8%減少して、1兆8,000億米ドルだったと発表しました。
化石燃料製品
石油と天然ガスへの投資が減少した理由の一つは、原油価格やその他化石燃料産業の製品価格の下落でした。
再生可能エネルギーへの投資額は、過去4年間で毎年ほぼ同程度です。しかし、再生可能エネルギーの発電効率が改善し資本コストが低下した結果、2015年の発電量は約1.3倍になりました。
「投資は、二酸化炭素排出量が少ない電源の資源へと大きく移行していますが、この動きは現在も進行している。」とIEAの報告書に記されています。 「化石燃料は依然としてエネルギー供給の大勢を占めていますが、投資構成の流れはエネルギー再編へと動いています。」
IEAの再生可能エネルギーの専門家であるラズロ・ヴァッロは、再生可能エネルギーはコストが下がるにつれ、政府補助金の必要性も下がったと語りました。 過去5年で太陽光発電の価格は80%下落し、風力発電も全体で3分の1まで下がりました。
ヴァッロによると、洋上風力発電はこれまで高コストと考えられていましたが、タービンのサイズが大きくなり、効率的な建設手法が採用されるようになったことで、価格も競争力が向上してきたそうです。 低金利もまた、再生可能エネルギーへの投資を後押ししました。
一部では、気候変動の原因である二酸化炭素排出量を抑えるためには、原子力発電も重要であると考えられています。
「化石燃料は依然としてエネルギー供給の大勢を占めていますが、投資構成の流れはエネルギー再編へと動いています。」
IEAによると、再生可能エネルギーの価格が下落している一方、原子力発電は減少することなく、むしろ増加しています。 つまり、引き続き原子力発電の安全性や核廃棄物についての懸念が残っているのです。.
IEAの報告書によると、二酸化炭素を発生しないエネルギーの明るい新たな夜明けを望む人々には、厳しい知らせがあります。 それは、最も汚染を引き起こす燃料である石炭に、引き続き多額の投資が行われているのです。 昨年、主にアジアとオーストラリアにおいて、石炭事業に600億米ドルを超える投資が行われました。
建設された石炭火力発電所の多くが亜臨界圧、つまり深刻な汚染を引き起こす…
利用銀行を乗り換える:オーストラリア人の半数近くが気候変動対策のための行動を検討中
筆者:Michael Slezak、The Guardian紙
財務活動家団体Market Forcesが代行した世論調査によると、半数近くのオーストラリア人は、「利用中の銀行が気候変動を促進するプロジェクトに資金を融資していることを知ったら、銀行を乗り換える可能性がある」ことが明らかになりました。
100以上のオーストラリアの著名人および企業が、大手4銀行が化石燃料産業を拡大させるプロジェクトへの支援を停止するよう求める書簡に、署名したという結果も出ました。 署名にはJM Coetzee、Charlotte Wood、James Bradley、Missy Higgins、Peter Singer、Jack Mundeyらや労働組合、修道会や保守団体のものも含まれています。
Essential Researchが実施した1,017名を対象とした世論調査では、「利用する銀行が、環境破壊や気候変動を促進しない企業やプロジェクトに投資していることをどの程度重視するか?」という質問に対し、大手4銀行を利用中の回答者の74%は、少なくとも「ある程度は重視している」と回答した。
また48%は、「利用中の銀行が、環境破壊や気候変動を促進するプロジェクトに融資していることを知ったら、銀行を乗り換える可能性がある」と回答しています。
アンケート調査員たちが、特定の種類のプロジェクトにまで話を掘り下げると、回答者たちは非常に心配そうな様子を見せました。 47%は、「利用中の銀行が、世界遺産であるグレートバリアリーフでの石炭やガスの輸出プロジェクトに融資していると知ったら、銀行の乗り換えをする可能性がある」、 48%は、「利用中の銀行が農村付近の炭層ガスプロジェクトに融資していると知ったら、銀行を乗り換える可能性がある」とも回答しています。
大手4行はまた、“気温上昇を2℃未満に抑える”という目標の支持を決定しており、これに対してアンケート回答者たちは強く賛同しました。 一方、65%の人々は「その目標を支持するのであれば、銀行はもう化石燃料産業を発展させるプロジェクトへ融資すべきではない」と表明しています。
8月、Market …
アジア地域を襲う台風が激化、研究により判明
2015年7月7日、衛星写真には太平洋上の台風が2つと熱帯低気圧が1つ、また台風発生警戒区域が1カ所、および広範囲で増加中の対流が映っている 写真:JMA MTSAT-2/NOAA
中国や日本、朝鮮半島、フィリピンで猛威を振るっている複数の台風の破壊力は、海水温の上昇の影響で過去40年間で50%も強力になっていることが研究により分かりました。
研究者達は、将来的にも地球温暖化が大規模な暴風雨をさらに巨大化させる恐れがあり、これらの国々で増加中の沿岸地域の住民達にとって、脅威となると警告しています。
「この増加は極めて現実的なものです」と、ノースカロライナ大学チャペルヒル校で新研究を牽引するウェイ・メイ教授は話します。 「この結果は沿岸地域に多くの人口を抱えている東アジアの国々にとって、非常に重要だと我々は考えています。 住民たちは、こうした台風の強大化に注意を払わなくてはなりません。台風上陸によって、より大きな被害を受ける恐れがあるからです。」
台風は、東アジアで壊滅的な影響をもたらす恐れがあります。 2013年には、台風「ハイヤン」がフィリピンを直撃し、少なくとも6,300人が死亡、1,100万人に影響を及ぼしました。 1975年に中国を襲った台風「ニーナ」により、1日に100cmもの雨が降り、22万9千人の死者を出し、600万もの建物が破壊されました。 先週は台風「ライオンロック」が北日本で11人の死者を出し、停電や物理的損害をもたらしました。一方、7月には台風「ネパルタック」が台湾と中国を襲い、少なくとも9人が死亡し、破壊の爪痕を残していきました。
この新研究(ネイチャージオサイエンスに掲載)によると、研究者達が日本とハワイでそれぞれで独自に収集したデータを元に、収集過程での差異を考慮すると、太平洋北西部の台風は1977年から平均して12~15%も強力になっているという調査結果が導きだされました。 その間、強さが4や5クラスに分類される最も苛烈な台風は、2〜3倍の強さになった地域もあり、陸地を直撃する暴風雨の強度が最も強く観測されています。
台風の強度は最大瞬間風速により計測されますが、台風の強度そのものが15%上がるだけで、強風や高潮、豪雨、洪水などの破壊力は50%も上昇してしまうのです。
台風「ラマスン(現地ではグレンダと呼称)」の強風から逃れるために木の下に避難する人々、2014年7月、被害を受けたフィリピンの首都マニラにて 写真: ロメオ・ラノコ/ロイター
台風が上陸する際に強大化する原因は、勢力を増す嵐に対して温暖化した沿岸海域がさらに多くのエネルギーを与え、風速が増す勢いがを強めてしまうことにあると、研究者達は指摘しています。
このような現象を検証するには、40年という期間は比較的短いため、東アジアでの海の温暖化が人為的か自然サイクルによるものなのか、判断は難しいところです。 しかしウェイ教授は、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が予測した将来の世界規模の温暖化が、東アジア地域の海の温度を上げ、より強力な台風を引き起こす恐れさえあると、言い切っています。
「台風が強さを増してきており、温暖化によりこれからも威力を増し続けるでしょう。」 また、教授は将来の台風への備えだけでなく、温暖化を抑制するためのCO2排出削減の両方の必要性を訴えています。 「台風の強度の変化を理解することは、防災対策として非常に重要なことです。」
マサチューセッツ工科大学の熱帯低気圧の専門家であるケリー・エマヌエル教授(新研究には不参加)は、次のように述べています。 「この結果には、東南アジアや中国…
スペイン初の再生可能エネルギー協同組合の物語
2010年、ヘイスベルト・フェインク氏と仲間たちがキャンペーンを開始しました スペインで初めての再生可能エネルギー協同組合に参加する350人を探すためです。 6年後、ソム・エネルヒア組合は27000人の組合員と37000人の顧客を得て、今や3200世帯が1年間に必要とする電力を再生可能エネルギーで賄うまでになりました。
フェインク氏と仲間たちが法的な障害や財政危機にも屈せず組合の運営をなんとか成功させてきた方法をフェインク氏に尋ねました。
ソム・エネルヒアは利用可能な再生可能エネルギー資源(太陽光、風力、バイオガス、バイオマス)による発電を行い、組合員の自発的な経済援助によって運営されています。 協同組合は市町の地方自治体が平等な立場で組織しており、組合の方針はそれらの自治体によって決定されます。 現在、組合は従来の電力市場で提供されている価格より安い値段で電力を販売しています。 市場価格より1kWhあたり0.5セント安いのです。
組合を始めたきっかけは何だったのですか?
– 2005年に妻とスペインへ引っ越してきたときに古い農場を買ったのです– フェインク氏は言います。 – 私たちはそこで電力を得るのが非常に難しいことに驚きました。 最初はソーラーパネルとバッテリーを設置することを考えました。– フェインク氏は続けます –それから家の隣に風力タービンを置くことに関心を持つようになったのです。 しかし、そのために法的、経済的、実用的なあらゆる点で事がより複雑になり始めました。しばらくして、他の人達とより大型の風力タービンに投資した方が事はずっと簡単になることに気付きました。 私はスペインで協同組合を探し始めましたが、そもそも組合が存在しないようだったのでそれならば自分で設立してしまおうと考えました。友人たちに提案してみましたが、友人たちの多くは私が提案する前から組合に関心を持っていたようでした。
2010年12月には自分たちで再生可能エネルギー発電を行い、使用することを共通の目的として157人の参加者が集まりました。 参加者たちは2011年1月に必要な許可を申請するために動き始め、10月までにはサービスが開始されました。最初の顧客数は数百人程度でした。
(2010年10月、ソム・エネルヒアにて)
逆境を乗り越えて…
中国の主要省庁、グリーンファイナンスに意欲
エド・キング
中国の主要省庁が、「環境に優しい」国内投資を推進する一連の指針を採択
9月1日、中国人民銀行は声明 を発表し、今後は「環境に優しい金融制度の構築に向けたガイドライン」に基づいたの国内融資を行うことを明らかにしました。
同ガイドラインの下、環境に配慮した開発基金が設立され、また地方政府には環境に配慮したインフラ計画の推進が求められことになります。
中国人民銀行の周小川(シュウ・ショウセン)総裁は、「環境に配慮した金融制度の構築は、中国の国家戦略となった」と述べています。
同ガイドラインには、国家発展改革委員会や環境保護部、財務部などの主要省庁が参加しています。
国連環境計画によると、中国の再生可能エネルギーやクリーンエネルギーの輸送機関、エネルギー効率分野の開発費用は、年間およそ6,000億米ドル(約61兆円)になるそうです。
「環境に優しい」と分類されたプロジェクトへの融資には助成金が交付され、また将来的には、企業は環境情報の開示制度への参加が義務づけられるようになります。
中国人民銀行の声明には、次のように記載されています。「ガイドラインは、環境に関わる保険および権取引の策定、また環境汚染責任保険制度の導入に関わる法規制の作成を求める。」
「またガイドラインは、多様なカーボン・ファイナンス(排出権取引など、排出削減に関わる金融)商品の開発を支援すると同時に、エネルギーや水に関わる権利、CO2排出権、その他の環境権を取引するための市場と、これらの権利に基づいた金融ツールの開発を推進する。」
さらに各省庁が「全ての要求事項を忠実に実施」すべきであることも明記されています。
一方、何が「環境に優しい」と分類されるのか、その基準については、ガイドラインではほとんど触れられていません。 国際環境NGOグリーンピースが先週公表した調査によると、中国は高効率の石炭発電プロジェクトを「クリーンで環境に優しい」と分類しているそうです。
国際NPO気候債券イニシアチブ(Climate Bonds Initiative)の最新レポートには、こう記載されています。「中国のガイドラインで“環境に優しい”と分類されるプロジェクトは、国際的なグリーンボンド(気候変動対策や環境保護プロジェクトの資金調達のために発行される債券)市場の基準とは相容れないことがある。これは特に、化石燃料プロジェクト、化石燃料を利用した公共の交通機関に関わるプロジェクト、またサプライチェーン事業への投資などにおいて顕著である。」
とは言え、金融界ウォッチャーによれば、中国人民銀行の声明は、G20によるグリーンファイナンス促進に向けた強力な後押しと相まって、中国政府の環境保護政策をいっそう引き立てているようです。
G20で採択された「杭州合意」のもと、先進20カ国首脳は、環境に配慮した融資の規模をさらに拡大していくこと、また環境保護促進のための政策について連携して取り組んでいくことに合意しました。
国連環境計画(UNEP)のエリック・ソルハイム事務局長は、次のように述べています。「中国の最高幹部が国の金融機関に呼びかけたことで、国内金融制度を改革し、環境に配慮した開発のニーズに応える、という国家野心をより強固なものにしています。」
「残りの国々もこの声明にならうことを願っています。」
…
東アジア気候変動リーダーズキャンプで得たアイディアとつながり
インターンの高橋淳志です。
8月27日から8月29日まで韓国で行われたEACLC(East Asia Climate Leaders Camp:東アジア気候変動リーダーズキャンプ)に参加してきました。
キャンプは職場である国際環境NPO「350.org」の主催で行われ、日本・韓国・台湾・香港・中国・フィリピン・インドネシア・ベトナムの8カ国・地域の350.orgメンバーや環境保護団体スタッフなどが集まりました。(写真はプレゼンを行う韓国チームです。)
テーマは「ダイベストメント+気候変動との闘い最前線」で、参加者は火力発電所の被害について知るとともにダイベストメント(化石燃料関連会社からの投資撤退)を自分の国でいかに広めていくか、知り、考える機会を得ました。
ダイベストメントは欧米を中心に進んでおり、東アジアでは目立った動きがありません。中国やベトナムのように権威主義体制が、市民団体の活動を制限している例もあります。そのような制約の中で、どのような協力が出来るか、熱を帯びた議論が行われました。
まず初日に行われたのは、参加者が今の仕事につくきっかけとなった出来ごとについて語り合うセッションでした。私は台湾の環境NPOの職員と話しました。350.orgは主に気候変動の原因となる温室効果ガスの排出を根拠にして、石炭火力発電所を問題視しています。しかし彼女が働いている団体は、大気汚染を問題視して活動しているとのことでした。彼女たちが持ってきた資料によれば、台湾中部にある台中市には韓国資本が開発した、570万kw(キロワット)にも及ぶ世界最大の火力発電所群(10基の石炭火力発電所と4基の石油火力発電所)が立地しているといいます。
これまで350.org Japanのキャンペーンでは、気候変動の問題を中心に据えてきました。しかし今後は大気汚染に焦点を当てて、立地地域住民の健康被害に焦点を当てるキャンペーンを行う必要もあるかもしれないと彼女の話を聴いて感じました。
またベトナムからの参加者が、日本の政府機関であるJBIC(国際協力銀行)やJICA(国際協力機構)の石炭支援を問題視していることも、大きな衝撃を私に与えました。環境NPOの業界に入り、日本の企業や政府機関が石炭事業を海外で行っていることを知ってはいました。しかし実際に現地人が反発している様子を聞くと、一日本人として責任を感じざるを得ませんでした。
日本企業や日本政府は、日本の高効率の石炭火力発電技術は、世界の大気汚染や気候変動を軽減するのに資すると考えています。しかし途上国企業や政府が石炭火力発電所誘致を望み、現地の住民が反発しているという民意がねじれた状況で、日本企業や政府が石炭事業を進めるべきとは、とても思えませんでした。
2日目はフィールド・トリップに行きました。キャンプが行われた忠清南道(チュンチョンナムド:日本でいう都道府県)には、韓国の石炭火力発電所の約半分が立地しています。
(Danjing石炭火力発電所の遠景)
地元で反対運動に行っている方によれば、石炭火力発電所からの排出物によって、ガンなどの形で健康被害が出ているそうです。私たちはダンジン石炭火力発電所と、その新規立地計画予定を見学しました。近くには家族連れが海水浴を楽しむビーチがあり、とても環境汚染が起きている場所とは思えませんでした。
日本では94基の石炭火力発電所が現存し、48基の新規石炭火力発電所建設計画があります。電力生産は、石炭の他にも天然ガスや原子力、再生可能エネルギーなどの多様な代替手段があります。日本にこんなに石炭火力発電所は必要なのか、改めて考えさせられるフィールド・トリップとなりました。
(「汚い石炭を止めろ」という意味のバナーを掲げる参加者)
3日目は他の地域とどんな協力が出来るか参加者が話し合いました。例えば気候変動や大気汚染は、被害に脆弱な人々が多い、途上国においてより悪影響が大きくなります。途上国で日本企業がプロジェクトを行っている場合、途上国と日本の市民団体が共同でキャンペーンを行うことが出来るという提案がなされました。その話を聞いて、私たち先進国の環境NPOには、気候変動や大気汚染の被害を受けている人々の声を、大量排出者が多くいる先進国に届ける役割があると思うに至りました。
(プレゼンを行う中国チーム)
また日本人は石炭火力発電所がもたらす気候変動や大気汚染の被害をよく知らないので、途上国の人々の被害を共有することは日本人の啓発につながるというアイディアを得ることが出来ました。
私が今回のキャンプで感じた一番の教訓は、「難しいからこそやる価値がある」ということです。石炭火力発電所のプロジェクトを止めたり、金融機関に「パリ合意」と整合的な投融資方針を取り入れてもらうことは簡単ではありません。しかし簡単ではないからこそ、誰かが本気で取り組み、気候変動や大気汚染の被害に苦しむ人々を減らしていく必要があります。そう思えたことが、このキャンプに参加して得た一番の収穫だと思います。
今回のつながりを一度きりで終わらせないために、今後は東アジアの350.orgチームと他の環境保護団体が共同でキャンペーンを展開するためのプラットフォームづくりへとフェーズが移行していきます。このプログラムに参加したことによって、同じ問題に取り組んでいる仲間が東アジア中にいることを確認出来、私たちの取り組みに対する無言の後押しを受けたような気がしました。
企業の資産が突然負債に? 「カーボン・バブル」の隠れたリスク
インターンの高橋淳志です。
今日は350.orgが重要と考えている「座礁資産」と「カーボンバブル」について概説します。
座礁資産とは、現在埋蔵量として資産価値を持っている化石燃料や化石燃料関連インフラのうち、気候変動規制が行われることによって、その価値がなくなる恐れがある資産を指します。つまり現在化石燃料会社の資産として計上されている埋蔵資源が、使えないものに変わる恐れがあるのです。これには埋蔵されている化石燃料のみならず、石炭運搬設備、石油精製所、LNG液化基地なども含まれます。
350.orgによれば、現在の化石燃料埋蔵量に含まれる炭素の量は、2734から5385ギガトンに上ります。昨年のパリ協定では「産業革命前と比べて世界の平均気温上昇を1.5℃~2℃以内に抑える」という目標が採択されました。パリ協定の1.5℃目標を達成するためには、使えるのは200ギガトン程度、2℃目標の場合は470ギガトン程度しか使えないことになります。つまり現在確認されている化石燃料の埋蔵量のうち、約9割は使えないことになるのです。だいたい世界の二酸化炭素の総排出量が40ギガトン程度なので、今の水準の総排出量を継続してしまえば、1.5℃目標ではあと5年、2℃目標ではあと11年しか二酸化炭素を排出できません。
350.orgは、気候変動規制に伴って化石燃料資産が、資産として評価されなくなる状態を「カーボン・バブル」と呼び警鐘を鳴らしています。今まで資産だったと考えられていたものが、ある日突然資産でなくなり、化石燃料関連企業の株式や債券の保有者に損害と混乱をもたらす恐れがあります。
つい最近ライス大学のベーカー研究所が発表した作業文書によれば、化石燃料産業にとっての気候変動のリスクは以下の四つに分けられています。
・政策リスク(政府の規制や政策変更へのコミットメントのリスク)
・需要リスク(気候変動などによって世界的に需要が下がっているリスク)
・ダイベストメント・リスク(株主や草の根運動のプレッシャによって、投資家が化石燃料産業の株式の保有を避けるリスク)
・競合リスク(化石燃料生産者間の競合や、原発や再生可能エネルギーと競合するリスク)
作業文書の著者は、これらのリスクよりも、圧倒的に気候変動対策が失敗した時のリスクの方が大きいと主張しています。2006年に発表された「スターン・レビュー」と同様、気候変動対策コストは対策しなかった場合のコストを下回るという結論に達したものと思われます。
現在資産として計上されている化石燃料が座礁資産として日本でも顕在化すれば、多額のエネルギー事業を抱える日本の総合商社や、エネルギー関連企業にも大きな負の影響が及びます。これらの企業の株価が下落し、投資家の資産を傷つけることになると予測されます。
日本での座礁資産については「オックスフォード大学スミス企業環境大学院持続可能金融プログラム」が今年の5月に発表した報告書が日本でも報道されました。報告書は、日本政府が石炭火力発電を奨励してきたことを指摘し、現在計画段階にある49基の石炭火力発電所が完成すれば、供給過剰となって発電所が座礁資産となる恐れがあると警告しています。それらの資産の合計は約7兆円から9兆円にも上るといいます。発電所が座礁資産となれば、当然電力会社の負債となって、最終的には電力料金に跳ね返ってきます。電力会社の石炭偏重が、国民の負担を増やす恐れがあるのです。
(この報告書には日本人研究者から批判も出ています。例えば以下のリンクを参照ください。しかしこれらの批判は、石炭火力発電への投資を正当化するものではありません)
火力発電所は数十年運営してようやく元が取れる事業です。今石炭火力発電所に投融資するということは、30年後、40年後も使われるという見込みが初めて合理的に許容されます。この報告書は本当にそれらが必要なのかという、重要な疑問を投げかけています。
350.org およびその日本支部である350.org Japanは、気候変動による被害のみならず、気候変動対策によって発生する「座礁資産」や「カーボン・バブル」について警鐘をならしています。今後は個人のダイベストメントを促すMy Bank My Futureというキャンペーンを展開していく予定なので、今後とも350.or Japanの活動に注目してくだされば幸いです。
【参考リンク】
- ベーカー研究所の作業文書(英語) http://bakerinstitute.org/media/files/files/6b58fc69/WorkingPaper-ClimateRisk-072116.pdf
- オックスフォード大学スミス企業環境大学院の持続可能金融プログラムの報告書(日本語) http://www.smithschool.ox.ac.uk/research-programmes/stranded-assets/satc-japan-japanese.pdf
- GEPR:オックスフォード大の石炭火力座礁資産化論に異議あり(日本語) http://www.gepr.org/ja/contents/20160606-01/
【過去記事】先日開催したイベントの様子です。350.org/ja/ethicalinvestment_eventreport/
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【イベント・レポート】「金融界の世界貢献:気候変動とエネルギー問題の解決に向けた社会的責任投資行動」
このブログは現在350.org Japanのインターンである、高橋淳志君によって書かれたイベントレポートです。
350.org Japanは、去る8月8日にシンポジウム「金融界の世界貢献:気候変動とエネルギー問題の解決に向けた社会的責任投資行動」を開催致しました。
イベントは二部構成で行われ、第一部では海外および国内の化石燃料取引やエネルギー投融資について三名がプレゼンテーションを行い、第二部では新聞記者、シンクタンク研究員、生協職員などの多様なゲスト・スピーカーがパネル・ディスカッションを展開しました。
この記事では、スピーカーの話を聞く中で、私が興味をひかれたことを中心にイベントを振り返ります。
まず主催団体である350.org Japan代表の古野と、350.org Japanのサポーターを公言してはばからない「ガイア・イニシアティブ」の野中ともよさんが挨拶に立ちました。特に野中さんは、私たちが気候変動に取り組む上での障害や背景を解りやすくお話して頂きました。豊富な経験に裏打ちされた情熱的なお話で、私たちも納得感を持って聴くことが出来ました。
世界のトレンドはどうなっているのか? ――国際的に進む脱炭素化と日本の現状――
まずはじめにオーストラリアの調査機関のジュリアン・ヴィンセント氏が、世界およびオーストラリアの化石燃料取引や投融資に関するプレゼンテーションを行いました。面白いと思ったのは、それまで右肩上がりだった世界の石炭輸入量が、2014に初めて前年比で減少に転じ、その後も減少しているという事実です。これは世界が石炭から脱却し始めている兆しと言えます。
また、ヴィンセント氏がCEOを務めるMarket Forcesのwebサイトでは、日本企業のプロジェクトがオーストラリアや地球の環境を壊している現実が指摘されています。(リンクはこちら)特に国際石油開発帝石(INPEX)や三大ガス会社、みずほ銀行(どこも就職活動生に人気!)などが携わった「イクシスLNGプロジェクト」は、名だたる日本企業が参加しています。
続いて「 特定非営利活動法人A SEED JAPAN」の 西島香織様より、海外の金融機関のダイベストメントの方針について報告頂きました。西島様のプレゼンテーションによれば、海外の金融機関の中には、石炭火力発電所への投融資からのダイベストメントのみならず、石炭の採掘プロジェクトからダイベストメントに踏み切る会社も既に出てきています。
日本の総合商社なども、海外で石炭採掘プロジェクトを行っています。350.orgや海外の研究機関は、このような化石燃料プロジェクトは、気候変動規制などによって無駄な投資に終わるリスク資産(「座礁資産(stranded assets)」と呼ばれています)であると指摘しています。総合商社「三井物産」のグループ会社で、石炭採掘プロジェクトを行っている会社のwebサイト(英語のみ)
海外の金融機関も、化石燃料開発プロジェクトが、長期的に見ればリスクの大きい投資であるという認識を持つようになった結果、ダイベストメントを決断するに至ったと考えられます。
第一部の最後に、主催団体350.org Japan代表の古野より、日本の民間金融機関の化石燃料および原発関連企業への投融資状況をまとめた報告書について発表させて頂きました。古野は改めてレポートの要約を行い、以下の四点を指摘しました。
・日本の金融機関は、化石燃料・原発関連企業へ巨額の投融資を行っている。
・このまま化石燃料への支援を続ければ、昨年のパリ協定の目標達成は困難になる。
・このまま原発関連への投資を続ければ、再生可能エネルギーへの移行を妨げる。
・化石燃料・原発関連企業への投融資が確認されなかった金融機関が、47社あった。
レポート本文は次のサイトよりご覧になれます:350.org/ja/my-bank-my-future-ja/
全てはリテラシーの問題?情報発信の必要性
パネル・ディスカッションで多くのゲスト・スピーカーの方が問題視していたのは、日本人のお金に対するリテラシーの低さでした。例えば企業に入り社会人となった人は、保険会社の人から(旧態依然とした高度成長期のままの)ライフ・プランを提示され、唯々諾々と保険に加入してしまうそうです。また、皆さんも我が身を振り返ればそうかもしれませんが、預金の預け先を決める時に「勤務先から指定されているから」「便利だから」という理由で深く考えずに決めてしまっている場合も多いのではないでしょうか。
あるゲスト・スピーカーは消費者が、「公正な投融資方針」というニーズを示さないから、金融機関も動かない、と指摘していました。金融機関も営利企業ですから、顧客の要望があれば検討せざるを得ません。ただしそのためには顧客である私たち一人一人がリテラシーを身につけ行動をとる必要があります。そういった情報発信も、350.org …
スウェーデンのAP4公的年金基金は、株式投資のポートフォリオを見直すと発表:今後は脱炭素化の組織のみを対象に
執筆者 AP4(スウェーデン第4公的年金基金)
気候変動の悪影響による損害リスクを低減するために、スウェーデン第4公的年金基金 (AP4)は、全体の21.8%にあたる国際的な株式投資のポートフォリオ(2016年6月1日現在、147億米ドル中32億米ドル)を、低炭素戦略に割り当てています。また、2020年までに全ての国際的ポートフォリオを見直し、脱炭素化するという長期的目標を設定しています。…
【イベント案内】8/8(月)シンポジウム金融界の世界貢献:気候変動とエネルギー問題の解決に向けた社会的責任投資行動
この度、下記のイベントを開催する運びとなりました。
金融界の世界貢献:気候変動とエネルギー問題の解決に向けた社会的責任投資行動
日時:
平成28年8月8日(月) 19~22時(18:40開場)
会場:
WATERRAS COMMON HALL (ワテラスコモンホール)
https://goo.gl/maps/T1YXvniok6T2
〒101-0063東京都千代田区神田淡路町2丁目101番地 WATERRAS COMMON 3階
アクセス:
東京メトロ千代田線「新御茶ノ水」駅徒歩約2分
JR「御茶ノ水」駅徒歩約3分
東京メトロ丸ノ内線「淡路町」駅徒歩約2分
概要:
最近では気候変動リスクを配慮した投融資方針の策定が、企業の“社会的責任投資”行動の一環として注目を集めています。昨年12月のパリで開催された国連気候変動会議(COP21)では、金融安定理事会(FSB)によって気候変動関連の金融情報公開のタスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の立ち上げが発表されました。気候変動リスクを危惧し、米国の銀行が地球温暖化の原因であるCO2排出量が最も多い石炭などの化石燃料から投資撤退を表明するダイベストメントという動きにも関心が高まりつつあります。
これからは金融機関が気候変動問題に対して、どのような社会的な投融資方針を策定し、それを公開しているかどうかが企業評価の指標として用いられるようになるでしょう。このような背景から、350.org Japanは邦銀と機関投資家の化石燃料および原子力関連企業への投融資(株式、債券、融資、引受)状況を調べるため、142の金融持ち株会社およびその傘下にある198の子会社を対象にした報告書をまとめました。本シンポジウムではその報告書を発表するとともに、幅広い分野で活躍されている専門家をお招きし、脱炭素社会そして持続可能な未来の実現を支えるお金の流れをつくる道を探ります。
プログラム:
19:00~ ご挨拶 野中ともよ様(特定非営利活動法人ガイア・イニシアティブ)
司会: 桃井貴子(特定非営利活動法人 …
解説:アジアの国々は石炭に関する方向性をどのように変えつつあるか
今年初め、世界銀行総裁が次のように述べました。
「もしアジアが今後も石炭火力発電所を稼働し続けるなら、人類は滅亡する運命にある。 これは、人類と地球に取り返しのつかない惨事を招くことになるだろう。」
アジアの主要経済国における「石炭政策の変化の兆候」について述べた、ジム・ヤン・キムの警鐘を、既に耳にしたことがある人もいるかもしれません。…
ユネスコに、世界最大のマングローブ林を保護するように要請するために、5万人が請願書に署名
インドとバングラデシュ沿いに広がる40万ヘクタールのシュンドルボン国立公園は、世界最大のマングローブ林です。この国立公園はベンガルトラの最大の生息地であり、イラワジ川やガンジス川のイルカなど、他の絶滅危惧種も保護しています。さらに、マングローブ林はシュンドルボンおよびその近くに住む400万人の人々を激しい暴風雨などの災害から守る、「防災の森」として極めて重要な役割を果たしています。
シュンドルボン国立公園は、1987年に世界遺産として登録され、生物圏保護区に指定されています。 生態系を維持し、この地域に住む人々の生活を向上させるための数十年にわたるさまざまな管理の取り組みが実施されてきました。
Bangladesh-India Friendship Power Company (Pvt) Ltd.(バングラデシュ・インド友好電力会社)の下で、NTPC India(インド国営火力発電公社)は、シュンドルボンの緩衝地帯から4キロ離れたところに1320メガワットのランパル石炭火力発電所の建設計画を進めています。この石炭火力発電所は、ポシュレ川から毎日、大量の水を汲み上げ、発電機の冷却後、汲み上げた水の役5倍の汚水を排出し、マングローブが頼る水を汚染し、水のバランスを変えてしまいます。 また、この発電所を稼働させるために、年間472万トン(大型ダンプカーおおよそ142万台)の石炭を輸入する必要があります。この量が、狭い水路を通って船で輸送されため、ポシュレ川は石油や石炭流出のリスクや騒音公害にさらされます。
石炭開発から世界遺産のシュンドルボン国立公園を守るため、この国立公園を危機遺産リストに追加するようにユネスコに求める請願書への署名を350.orgやFriends of the Earth U.S.などの国際環境団体が呼びかけました。5万人以上の署名者が集まり、来週イスタンブールで会合を開かれる世界遺産委員会に合わせて請願書はユネスコに今週提出されました。
住民の生活や健康および絶滅危惧種の生態環境を脅かすこの石炭火力発電所計画への資金が行わないように、私たちはインド輸出入銀行 (Export-Import Bank of India)に働きかけ、ランパル石炭火力発電所の建設計画に反対し続けます。
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世界中に広まるダイベストメント運動: ベルリンは、化石燃料及び原発から撤退する最新の都市です
執筆者:Alexander C. Kaufman、シニアビジネスエディター、ハフィントンポスト
ベルリン議会は木曜日に、石炭、ガス、石油会社、原発関連会社、武器製造会社から資金を引き上げるように、ダイベストメントを進めることに投票しました。
2050年までにCO2排出量ゼロを目指すという、ドイツの首都の目標の一環である新しい投資方針は、当市の8億5,280万ドル、または7億5,000万ユーロの年金基金を、ドイツの巨大石油会社であるRWEおよびE.ON、さらに、フランスの巨獣、Totalの株式投資から強制的に撤退させます。このベルリンのダイベストメント表明は、世界中に広まるダイベストメント運動にさらに勢いを与えるでしょう。…
#Coal Japan: G7から欠けていた温暖化対策、そして日本の石炭ギャンブル
地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」の署名式が、4月にニューヨークの国連本部で行われました。5月下旬に三重県の伊勢志摩で開催されたG7サミットはそれに続く、最も大きな国際的なイベントだったにも関わらず、地球温暖化や気候変動問題に対する取り組みへの進展はありませんでした。日本は世界をリードする機会を逃してしまったと言っても良いでしょう。
日本の国内外での石炭開発や石炭火力発電所への多額の投融資を明らかにし、日本の機関投資家に化石燃料への投資を止めるように呼びかけるため、350.org JapanはG7サミットの直前に合わせてSTOP!石炭投資アクションを行いました。
国内でも国外でもあまり知られていませんが、日本は世界で一番石炭への公的支援を行っている国です。 米国のNRDC をはじめとするNGO団体が発表したG7国家による石炭出資額に関するの新たな報告書によると、日本は2007年から2015年の間に海外の石炭火力発電所と石炭開発に 220億ドル以上の出資を行いました。これはなんと、G7国家による石炭への公的支援総額の52%にのぼります。
上のグラフが示す通り、日本はG7内ではずばぬけて多額な公的支援を石炭関連事業へと注いでいます。
さらに知られていないのが、銀行などの日本の民間金融機関が世界中の石炭および化石燃料関連企業に巨額の資金を注ぎ込んでいることです。 昨年、350.org Japanが行った調査では、2014年に日本の民間銀行および保険会社が国内の石炭関連企業に対し、5兆円(約450億米ドル)の投融資を行っていたことが明らかになりました。
また、日本は現在国内に47基もの新たな石炭火力発電所の建造を計画しています。地球温暖化、公衆衛生、そして日本の経済にとってこれは絶望的な知らせです。ハーバード大学およびグリーンピースによる最新の報告書によると、これらの新たな発電所の稼働期間中に少なくとも1万人もの若年死亡者が出るおそれがあることが分かりました。 また、オックスフォード大学の研究では日本の火力発電所は新旧問わず800億米ドルに相当する座礁資産となる可能性があることが明らかになりました。
世界は再生可能エネルギー中心の電力供給体制へ向かっているにも関わらず、なぜ日本はまだ化石燃料への投資を続けているのでしょうか?
2011年3月11日の東日本大震災によって福島原発がメルトダウンを起こし、それは原発に対する大規模な反対運動に繋がりました。それ以降、日本は化石燃料、特に石炭への依存度を高めてきました。
しかし、原子力エネルギーの代替として化石燃料の使用量を増やすことは、日本がパリ協定に基づく責任を果たさないということを意味します。そしてさらに持続可能な道から離れ、他の先進国から孤立してしまいます。
日本の地球温暖化政策への不十分さと、今なお続いている原子力災害を踏まえ、私達は100%再生可能エネルギー社会への転換を促進するために化石燃料および原子力への投資撤退を運動を推し進めています。
#cooljapan それとも #coaljapan ?
5月19日(木)、20日からのG7財務大臣会合を留意し、財務省の前で麻生太郎財務大臣に日本の石炭事業への新規融資の即時に終わらせること、そして再生可能エネルギー投資への切り替えを求めるメッセージを伝えるためのアクションを行いました。 経産省が推進している「Cool Japan」をもじって、350.org Japanメンバーは、麻生太郎財務大臣に扮したイアンと共に、「Coal Japan」と書かれたタスキを身に着け、「クリーン」で「安い」 石炭を出勤中の通行人に配りました。 このアクションの一環としてCOAL JAPANのウェブサイトも立ち上げ、ハフィントンポストにもブログがアップされました。…
クールジャパン、それともコールジャパン?
[このブログは日本ダイベストメントキャンペーン担当の古野真がハフィントンポストへ投稿したブログである。 English below.]
G7伊勢志摩サミットに合わせて、日本の石炭推進の状況を世に知らしめるべく、「コールジャパン」キャンペーンを私たちは始動することにした。日出る国日本を「コール」な国から真に「クール」な国へと変えることが、「コールジャパン」の目的だ。
今週末三重県伊勢志摩で行われるG7伊勢志摩サミットを直前に迎え、現在世界中の目が日本の動向に向けられている。
G7が開催される伊勢志摩には日本が世界に誇る文化の象徴、伊勢神宮がある。またそれ以外にも、最先端テクノロジーやユニークなアートなど、日本は世界に誇るべき「モノ」や「文化」で溢れている。
このような「日本の魅力」を日本政府は組織的に世界に発信しており、その中でも代表的なキャンペーンが経済産業省が進める「クールジャパン」だ。
しかし、果たして日本は本当に「クール」なのだろうか?
あまり知られていないことだが、日本は現在石炭火力発電所を国内に47基新設する計画を進めている。これは他のG7諸国の脱炭素計画に真っ向から逆行する動きであり、石炭推進について日本はG7の中で完全に孤立している。
また、日本は他のG7諸国とは比べようのないほど巨額な公的資金を石炭関連プロジェクトにつぎ込んでいる。その額は2007年から2014年の間に2000億ドルに登る。日本には「クール」より「コール(石炭)」の呼び名の方が、はるかにお似合いのようだ。
近年では、G7の米国、英国やフランスなどが石炭事業への国際的支援に対する規制を厳しくしており、これらの国々は国内でも次々と石炭火力発電所を廃止している。イギリスはすでに完全な脱石炭化を達成しつつあり、アメリカも古い石炭火力発電所を急ピッチで閉じている。その数は過去5年間の間で200以上に達している。
しかし、日本は相変わらず世界一の海外石炭事業推進国として邁進しており、脱炭素化へと進む世界から次第に見放されている。
コールは一切クールではない。
石炭(コール)は自然環境にも人々の暮らしにも壊滅的な影響をもたらす地球温暖化の主な原因である。そして皮肉なことに、日本は気候変動による被害をもっとも大きく受ける国の一つなのだ。例えば、地球の平均気温が4度上昇すると、首都圏でも750万人が海面上昇による被害を受けると言われている。2度の上昇の場合でも420万人分の世帯が浸水すると言われている。
このような深刻な影響があるからこそ、2015年のG7では21世紀後半までに完全に脱炭素化した世界を目指すことが合意されたのだ。さらに、2015年の末にパリで開催された気候変動に関する国際会議では、2050年までに完全なる脱炭素社会を実現することが、世界195カ国により合意された。
言い換えると、温室効果ガスを大量に排出する石炭をエネルギー原として使用することはもはや不可能であり、「石炭にはもう未来が無い」と日本を含む世界が合意したのだ。そして上記の合意を達成するため、世界は温室効果ガスの大幅な削減と、再生可能エネルギーの導入を急速に加速させることが求められている。
一方、世界と結んだ約束とは裏腹に、国内で石炭火力発電所の新設を進め、世界の石炭事業を支える日本は完全に孤立している。しかも、日本は消費する石炭の100%をオーストラリアやインドネシアといった海外から輸入しているのだ。このまま石炭や化石燃料依存を続けると、国はエネルギー自給率を向上できず、また世界経済の不安定性にさらされることになる。
では一体、何が「コールジャパン」を支える原動力となっているのか?
その答えはすばり「お金の流れ」である。日本の公的金融機関や民間銀行、または機関投資家が運用するお金が、大手一般電力会社などへと流れている。これらの企業は自らの利益を守るために、再生可能エネルギーの導入や成長を、あらゆる手を使い抑えているのだ。
去年私たち「350.org Japan」が行った調査により、日本のメガバンクグループ(三菱東京UFJ、みずほ、三井住友銀行、三井住友信託銀行)が化石燃料や原発に関わる企業へ巨額な投資や融資を行っていることが明らかになった。2014年度での投融資総額は、なんと5兆3890億円にまで登った。
同報告書により、日本の生命保険会社も化石燃料・原発関連企業に約4兆3千億円の投資を行っていることが明らかになった。
しかし、同時に希望の光が差し込んでいるのも事実である。日本の金融と環境技術の力を持続可能なエネルギーに集中させれば、日本は必ず自然エネルギーの世界的リーダーになれる。日本では毎年約200億米ドルが新たな自然エネルギープロジェクトに投資されており、これにより年間800万キロワット(kW)の新たな電源が供給されている。これまでなんども大きな改革を成し遂げてきた日本は、世界の先を行く環境大国に成り上がるポテンシャルを十分に秘めている。
G7 が間近へと迫る中、日本は選択を迫られている。「コール」を選ぶのか、それとも「クール」を選ぶのか。世界は私たちの答えを待っているのだ。
350.org Japanは日本も正しい方向へと導くために、「#DivestJapan」キャンペーンを通して、日本の市民、銀行、生命保険会社、年金基金や公的機関が化石燃料や原子力に関わる企業から「ダイベストメント」(=投資撤退)をするよう呼びかけている。そして、ダイベストメントして引きあげた資金を、持続可能な開発を支える自然エネルギーなどへ転換することを提案している。詳しい情報は公式ホームページ www.350.org/ja にてご覧ください。
現在のお金の流れを持続可能な開発へと転換できれば、私たちは真に「クールジャパン」として世界から賞賛されるだろう。
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