2015年7月7日、衛星写真には太平洋上の台風が2つと熱帯低気圧が1つ、また台風発生警戒区域が1カ所、および広範囲で増加中の対流が映っている 写真:JMA MTSAT-2/NOAA
中国や日本、朝鮮半島、フィリピンで猛威を振るっている複数の台風の破壊力は、海水温の上昇の影響で過去40年間で50%も強力になっていることが研究により分かりました。
研究者達は、将来的にも地球温暖化が大規模な暴風雨をさらに巨大化させる恐れがあり、これらの国々で増加中の沿岸地域の住民達にとって、脅威となると警告しています。
「この増加は極めて現実的なものです」と、ノースカロライナ大学チャペルヒル校で新研究を牽引するウェイ・メイ教授は話します。 「この結果は沿岸地域に多くの人口を抱えている東アジアの国々にとって、非常に重要だと我々は考えています。 住民たちは、こうした台風の強大化に注意を払わなくてはなりません。台風上陸によって、より大きな被害を受ける恐れがあるからです。」
台風は、東アジアで壊滅的な影響をもたらす恐れがあります。 2013年には、台風「ハイヤン」がフィリピンを直撃し、少なくとも6,300人が死亡、1,100万人に影響を及ぼしました。 1975年に中国を襲った台風「ニーナ」により、1日に100cmもの雨が降り、22万9千人の死者を出し、600万もの建物が破壊されました。 先週は台風「ライオンロック」が北日本で11人の死者を出し、停電や物理的損害をもたらしました。一方、7月には台風「ネパルタック」が台湾と中国を襲い、少なくとも9人が死亡し、破壊の爪痕を残していきました。
この新研究(ネイチャージオサイエンスに掲載)によると、研究者達が日本とハワイでそれぞれで独自に収集したデータを元に、収集過程での差異を考慮すると、太平洋北西部の台風は1977年から平均して12~15%も強力になっているという調査結果が導きだされました。 その間、強さが4や5クラスに分類される最も苛烈な台風は、2〜3倍の強さになった地域もあり、陸地を直撃する暴風雨の強度が最も強く観測されています。
台風の強度は最大瞬間風速により計測されますが、台風の強度そのものが15%上がるだけで、強風や高潮、豪雨、洪水などの破壊力は50%も上昇してしまうのです。
台風「ラマスン(現地ではグレンダと呼称)」の強風から逃れるために木の下に避難する人々、2014年7月、被害を受けたフィリピンの首都マニラにて 写真: ロメオ・ラノコ/ロイター
台風が上陸する際に強大化する原因は、勢力を増す嵐に対して温暖化した沿岸海域がさらに多くのエネルギーを与え、風速が増す勢いがを強めてしまうことにあると、研究者達は指摘しています。
このような現象を検証するには、40年という期間は比較的短いため、東アジアでの海の温暖化が人為的か自然サイクルによるものなのか、判断は難しいところです。 しかしウェイ教授は、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が予測した将来の世界規模の温暖化が、東アジア地域の海の温度を上げ、より強力な台風を引き起こす恐れさえあると、言い切っています。
「台風が強さを増してきており、温暖化によりこれからも威力を増し続けるでしょう。」 また、教授は将来の台風への備えだけでなく、温暖化を抑制するためのCO2排出削減の両方の必要性を訴えています。 「台風の強度の変化を理解することは、防災対策として非常に重要なことです。」
マサチューセッツ工科大学の熱帯低気圧の専門家であるケリー・エマヌエル教授(新研究には不参加)は、次のように述べています。 「この結果には、東南アジアや中国に影響を及ぼすより破壊力の高い現象が起きており、その強さはさらに加速的に増えていくという疑念がわずかながら残ります。」
「この結果は、この地域の国々には非常に重要なことです。結局のところ、上陸する台風の大きさと強さが問題だからです。」 「より強い暴風雨の襲来によって、極めて高い破壊力を持ち非常に多くの命を奪う驚異的な高潮が発生します。」 これまでのエマヌエル教授の研究では、気候変動を抑制しなかった場合、より強い台風が現在より高い頻度で発生しやすくなるという結果が出ているのです。