気候ムーブメントの成長+オーガナイジング

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パンデミックにおける組織づくりやオーガナイジングでは、350チームとそのパートナーの皆の創造力、団結力、そして時には「何とかなる」と信じて思い切ることが求められました。長年にわたり、署名運動や議員への意見書提出、電話での働きかけといった活動を通じ、350は気候アクションを推進してきましたが、完全にリモートでの組織づくりとオーガナイジングには、新たなツールやトレーニングが必要とされました。リモートベースで「ジャスト・リカバリー(公正な再建)」や「グローバル・ファイナンス」をはじめとしたキャンペーンを展開し、新たなパートナーシップを築いたうえ、連携を強化していくためです。

2020年、オンラインのオーガナイジング、トレーニング、パートナーシップ構築を組み合わせることにより、市民の力を強化し、よりパワフルな気候リーダーの育成を促した、エキサイティングな成功事例を、ここに誇りを持ってご紹介します。
南アフリカで、350チームはパートナーと連携し「気候正義同盟(Climate Justice Coalition)」を新たに結成しました。この同盟は、労働組合、市民団体、草の根団体、地域に根ざした団体、女性の権利に取り組む団体をはじめとした、26の組織で構成されています。その活動内容は、南アフリカの国営電力会社エスコムを対象としたキャンペーン「環境にやさしい新たなエスコム(Green New Eskom)」と、「ジャスト・リカバリー(公正な再建)」を求め闘うことです。7月、気候正義同盟は「普通には戻らない(No Going Back to Normal)」と題したレポートを公表したうえ、ジャスト・リカバリーをテーマにオンラインのアートイベントを実施、さらに「私たちと気候だけ(Just Us and the Climate)」と題した新しいポッドキャストの配信も始めました。 太平洋では、気候活動家グループ「パシフィック・クライメート・ウォリアーズ(太平洋気候戦士)」が、3ヶ月にわたる気候リーダーシップ・トレーニング「太平洋パワ・アップ・フェローシップ(Pacific Pawa Up Fellowship: PPUF)」を初開催しました。太平洋地域の若者たちを対象とした、このトレーニングは、コロナ禍でもオンラインスペースで気候正義を追求し、大きなインパクトをもたらせるよう、必要なスキルを身につけることを目的としています。トレーニングには、太平洋地域の12ヵ国、オーストラリアの3都市、ニュージーランドの2都市、また米国在住の太平洋島嶼国出身者を合わせ50名の若者たちが参加しました。太平洋パワ・アップ・フェローシップ参加者たちは、気候運動を展開するための戦略やストーリーテリング、コミュニケーション、国連気候変動会議参加に向けたトレーニングなどの重要なテーマのもと、9つのセッションに参加。フェローシップ終了時、若者たちのオーガナイジング手法は、いっそうレベルアップしていました。

中南米で、350 Latin Americaが新たなキャンペーン「アマゾンは抵抗する(Amazon Resists)」を立ち上げると、先住民族のリーダーや活動家も参加。さらに気候の枠組みを超え社会正義を求める運動も巻き込みながら、キャンペーンは周辺各国に広がり、皆で力を合わせアマゾン熱帯雨林での石油およびガス開発の中止を求めました。アマゾンでは2020年、壊滅的被害をもたらした森林火災が発生、また熱帯雨林の保護に取り組む人々に対する暴力事件は、増加の一途をたどっています。追い討ちをかけるように、ブラジル政府はアマゾンの16区画を新たに競売にかける意向です。だからこそ、化石燃料時代に終止符を打つべく、国や分野を超え広くオーガナイズしていくことが重要なのです。キャンペーンチームが政府の競売予定地を地図で確認すると、そのうちの13区画は先住民の所有地で、先住民8部族の1万8千人に直接的もしくは間接的な影響をもたらす恐れがあることを突き止めました。そこで状況が許す限り現地に集合しアクションを実施すると同時に、戦略的パートナーシップの構築、弁護士や研究者による技術支援、異なる政策決定者への働きかけを通じ、アマゾン熱帯雨林の資源開発の禁止を目指し取り組んでいます。

一方、アルゼンチンとメキシコ国会は、環境問題に関する中南米初の条約であり、環境・人権保護活動家を守る規定を盛り込んだ世界初の条約、エスカス(Escazú)合意に署名。350 Latin Americaは、この重要な成果を歓迎しました。エスカス条約には、先住民や脆弱な人々の権利の尊重のほか、国連の「ビジネスと人権の指導原則」に定められた基準の遵守も明記されており、非常に革新的な条約です。

Photo: Oil auction action | Rio de Janeiro

撮影:PBS

米国では、アフマド・アーベリーさん、ブレオナ・テイラーさん、ジョージ・フロイドさんをはじめとした、多数の黒人の人々が殺害された事件を受け、警察の暴力、白人至上主義や白人の特権、また有色人種、女性、LGBTQ+、困窮者にへの構造的抑圧に対する抗議運動が広がりました。北米チームの担当者は、ブラック・ライブズ・マターのほか、「ブラック・ビジョン・コレクティブ」や「ムーブメント・フォー・ブラック・ライブズ」などの運動と直ちに連携、白人至上主義の根絶を目指す抵抗運動を繰り広げるため力を合わせました。この動きは世界中の人々の共感を呼び、カナダや欧州、フィリピン、太平洋地域、ブラジルにも広がりました。 一方、「一生に一度」と言われる大統領選を控えた米国で、350は気候投票プロジェクトを立ち上げました。その際、環境投票プロジェクトと手を組み、環境問題への関心の薄い有権者、中でも黒人、先住民族、有色人種に焦点を当てた投票キャンペーンを展開。キャンペーンでは、およそ1,000人のボランティアを採用し、多数のコールセンターに配備しました。ボランティアは、およそ70万件の電話をかけ、そのうち7,500件以上の電話で、変化を促す重要な会話が交わされました。こうした電話での働きかけが奏功し、投票モニター(投票所で投票の補助をする人)を増員したほか、トレーニングや個人用防護具(PPE)をはじめとしたサポートを提供、普段声を上げることのできない人々の意見を選挙に反映させることに成功しました。この文章を執筆している時点で、キャンペーンチームは、ジョージア州上院議員の決選投票への参加を呼びかけています。またバイデン次期大統領には、就任初日にキーストーン・パイプラインの建設認可撤回を含む、10の大統領令に署名するよう求めています。

350 US パートナー団体

米国の350ネットワークには、大学キャンパス、都市や州を含む、全米各地の175団体が参加し、気候正義を求めるキャンペーンを展開しています。これら全てを合わせると、ネットワーク全体の数字は、下記の通りです: More than 3,500 core volunteers, 68 full-time staff, $4 million in operating budgets, 200,000 supporters on local groups’ mailing lists

トレーニング

350とそのパートナー団体は、気候活動に関心のあるボランティアを常時募集、インパクトある活動や組織づくり、オーガナイジングを実施できるよう、トレーニングを提供したうえ、新たな気候リーダーを既存の地域活動の関係者に紹介しています。この取り組みには、世界中から100万人以上が参加し、ネットワークを広げています。下記に、最近開催されたオンライントレーニングの一例をご紹介します:

オンラインでのグループ運営手法を紹介した、こちらの冊子は、パンデミック初期の時点で公表されました。

ソリダリティ・スクールは、米大統領選に向け開催された全4回にわたるオンラインの大規模ミーティングとトレーニングです。

デジタル・ストーリーテリング

350の重要な戦略のひとつは、気候災害や社会的不平等の影響をもっとも深刻に受けている人々のストーリーを、一人でも多くの人に伝えることです。350のコミュニケーションチームでは、若者や有色人種、南半球の途上国の人々、気候変動の影響を真っ先に受ける地域の人や化石燃料プロジェクトの建設地住民を対象に、自分たちのストーリーを語るトレーニングを開催しています。さらに既存の主流メディアにも働きかけ、底辺に追いやられてきた人々の声を取り上げてもらいます。これらの取り組みが実際にインパクトをもたらしているかどうか、追跡もしています。

2020年、350が新たに発信した2つのツールをご紹介します:

気候ストライキを語る、若者たちのストーリーテリング・ハブ

5月、350のコミュニケーションチームとプロダクトチームは、「若者たちのストーリーテリング・ハブ(Youth Storytelling Hub)」を設置、世界中の若者たちが複数の言語で、それぞれの視点からストーリーを語り合えるようにしました。

気候ムーブメントのためのデジタル・ストーリーテリング・ツール

気候危機の最前線地域に暮らし、もっとも深刻な影響を受けながら、ほとんど語られない人々。そんな人々が語る独自のストーリーは、気候をめぐるグローバルな筋書きを変えるうえで非常にパワフルです。欧米のメディアでは、こうした最前線地域の人々が被害者として描かれます。しかし実際は、これら地域の人々の多くが驚くほどの主体性を持ち、創造性に満ちたやり方で行動を起こしています。10月、350はデジタル・ストーリーテリング・キットをオープンソースとして公開、オンラインでストーリーを語る手法を紹介した資料に、誰もが自由にアクセスできるようにしました。なお、こちらのツールは、英語、インドネシア語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、トルコ語、ロシア語、日本語版を準備しています。

組織内部を改善

2020年の1年間、350は組織基盤の強化に取り組みました。その一環として、当団体のスタッフや、理事会のポリシーおよび手続き多数を見直したうえ、新メンバーによる理事会の強化、新しい組織図とチーム構成の導入、技術およびプラットフォームの改善、リスクおよびセキュリティ分析の強化、組織横断的なパフォーマンス・測定・評価・学習(PMEL)のフレームワーク開発などを行いました。気候正義と気候活動の未来を左右するこれからの10年、目の前の闘いに勝利するには、可能な限り焦点を絞り、機敏に動き、効果をもたらす精鋭チームが不可欠です。

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Photo: 350.org

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Photo: ©Forest Woodward
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