パンデミックにおける組織づくりやオーガナイジングでは、350チームとそのパートナーの皆の創造力、団結力、そして時には「何とかなる」と信じて思い切ることが求められました。長年にわたり、署名運動や議員への意見書提出、電話での働きかけといった活動を通じ、350は気候アクションを推進してきましたが、完全にリモートでの組織づくりとオーガナイジングには、新たなツールやトレーニングが必要とされました。リモートベースで「ジャスト・リカバリー(公正な再建)」や「グローバル・ファイナンス」をはじめとしたキャンペーンを展開し、新たなパートナーシップを築いたうえ、連携を強化していくためです。
2020年、オンラインのオーガナイジング、トレーニング、パートナーシップ構築を組み合わせることにより、市民の力を強化し、よりパワフルな気候リーダーの育成を促した、エキサイティングな成功事例を、ここに誇りを持ってご紹介します。中南米で、350 Latin Americaが新たなキャンペーン「アマゾンは抵抗する(Amazon Resists)」を立ち上げると、先住民族のリーダーや活動家も参加。さらに気候の枠組みを超え社会正義を求める運動も巻き込みながら、キャンペーンは周辺各国に広がり、皆で力を合わせアマゾン熱帯雨林での石油およびガス開発の中止を求めました。アマゾンでは2020年、壊滅的被害をもたらした森林火災が発生、また熱帯雨林の保護に取り組む人々に対する暴力事件は、増加の一途をたどっています。追い討ちをかけるように、ブラジル政府はアマゾンの16区画を新たに競売にかける意向です。だからこそ、化石燃料時代に終止符を打つべく、国や分野を超え広くオーガナイズしていくことが重要なのです。キャンペーンチームが政府の競売予定地を地図で確認すると、そのうちの13区画は先住民の所有地で、先住民8部族の1万8千人に直接的もしくは間接的な影響をもたらす恐れがあることを突き止めました。そこで状況が許す限り現地に集合しアクションを実施すると同時に、戦略的パートナーシップの構築、弁護士や研究者による技術支援、異なる政策決定者への働きかけを通じ、アマゾン熱帯雨林の資源開発の禁止を目指し取り組んでいます。
一方、アルゼンチンとメキシコ国会は、環境問題に関する中南米初の条約であり、環境・人権保護活動家を守る規定を盛り込んだ世界初の条約、エスカス(Escazú)合意に署名。350 Latin Americaは、この重要な成果を歓迎しました。エスカス条約には、先住民や脆弱な人々の権利の尊重のほか、国連の「ビジネスと人権の指導原則」に定められた基準の遵守も明記されており、非常に革新的な条約です。
350とそのパートナー団体は、気候活動に関心のあるボランティアを常時募集、インパクトある活動や組織づくり、オーガナイジングを実施できるよう、トレーニングを提供したうえ、新たな気候リーダーを既存の地域活動の関係者に紹介しています。この取り組みには、世界中から100万人以上が参加し、ネットワークを広げています。下記に、最近開催されたオンライントレーニングの一例をご紹介します:
350の重要な戦略のひとつは、気候災害や社会的不平等の影響をもっとも深刻に受けている人々のストーリーを、一人でも多くの人に伝えることです。350のコミュニケーションチームでは、若者や有色人種、南半球の途上国の人々、気候変動の影響を真っ先に受ける地域の人や化石燃料プロジェクトの建設地住民を対象に、自分たちのストーリーを語るトレーニングを開催しています。さらに既存の主流メディアにも働きかけ、底辺に追いやられてきた人々の声を取り上げてもらいます。これらの取り組みが実際にインパクトをもたらしているかどうか、追跡もしています。
2020年、350が新たに発信した2つのツールをご紹介します:
5月、350のコミュニケーションチームとプロダクトチームは、「若者たちのストーリーテリング・ハブ(Youth Storytelling Hub)」を設置、世界中の若者たちが複数の言語で、それぞれの視点からストーリーを語り合えるようにしました。
気候危機の最前線地域に暮らし、もっとも深刻な影響を受けながら、ほとんど語られない人々。そんな人々が語る独自のストーリーは、気候をめぐるグローバルな筋書きを変えるうえで非常にパワフルです。欧米のメディアでは、こうした最前線地域の人々が被害者として描かれます。しかし実際は、これら地域の人々の多くが驚くほどの主体性を持ち、創造性に満ちたやり方で行動を起こしています。10月、350はデジタル・ストーリーテリング・キットをオープンソースとして公開、オンラインでストーリーを語る手法を紹介した資料に、誰もが自由にアクセスできるようにしました。なお、こちらのツールは、英語、インドネシア語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、トルコ語、ロシア語、日本語版を準備しています。
2020年の1年間、350は組織基盤の強化に取り組みました。その一環として、当団体のスタッフや、理事会のポリシーおよび手続き多数を見直したうえ、新メンバーによる理事会の強化、新しい組織図とチーム構成の導入、技術およびプラットフォームの改善、リスクおよびセキュリティ分析の強化、組織横断的なパフォーマンス・測定・評価・学習(PMEL)のフレームワーク開発などを行いました。気候正義と気候活動の未来を左右するこれからの10年、目の前の闘いに勝利するには、可能な限り焦点を絞り、機敏に動き、効果をもたらす精鋭チームが不可欠です。