2019年5月15日

【プレスリリース】『Signs From Nature ~気候変動と日本~』上映イベントを初開催

プレスリリース

 

2019年5月13日

国際環境NGO350.org Japan

 

『Signs From Nature ~気候変動と日本~』上映イベントを初開催

東京、大阪会場で150人が参加、気候変動問題への関心の高さ示す

国際環境NGO350.org Japanは5月10日と11日、気候変動問題への認知度を高め、政府および企業による早急な対応を実現するため、近年の異常気象の被害を受けた被災者を含む日本の各地域で気候変動による影響を生活のなかで体験している方々の「生の声」をまとめたドキュメンタリーフィルムの上映会を東京会場と大阪会場の2か所で実施しました。2日間の上映会には、一般来場者およびメディア関係者など150人の来場者があり、若年層を中心に一般市民の間で気候変動問題への問題意識が高まっていることが示されました。

 

10日に上映されたドキュメンタリーフィルムでは、北海道から沖縄まで5か所の地域で6人の地元住民への直接インタビューを行い、彼らが体験した「日常にある気候変動の影響」や、普段の生活の中で感じている「自然からのサイン」を実体験として語ってもらいました。

 

また、フィルム上映会後には国立環境研究所気候変動適応センターの肱岡靖明副センター長が最新の科学的知見に基づき、気候変動問題の解説を行ったほか、パタゴニア日本の辻井隆行支社長が気候変動問題への企業としての取り組みを紹介しました。

 

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)1.5℃特別報告書主執筆者もである肱岡氏は、「気候変動影響は気温の上昇だけでなく、豪雨や干ばつの増加、食料生産、生態系への影響など様々です。気候変動を生活に直接結びつく問題として、自分の事として考えていただきたい」と述べました。

 

辻井氏は、「企業の姿勢を変えるためには消費者の声を届けることが重要です。企業に環境配慮を求める消費者の声がたくさん集まることで、企業は行動を変えざるを得なくなります」と述べ、消費者として声をあげることの意義を強調しました。

 

350.orgJapanキャンペーナーの渡辺瑛莉は、「今回のフィルム上映会の開催は、日本における気候変動問題へのアウェアネスを高めることを目的としたものです。また、ドキュメンタリーフィルムの自主上映会を日本各地で開催し、6月に福岡市で開催されるG20財務大臣会合、そして同月に大阪で開催されるG20首脳会合(G20サミット)までに、『ダイベストメント宣言』を集め、提出することで、財務大臣に対しパリ協定に基づいた金融行政の厳格化を求めていく機運を高めていきたいと考えています」と述べました。

 

 「ダイベストメント宣言」とは、日本の金融業界に気候変動に配慮した投融資を促すためのもので、350.orgJapanは、G20財務大臣会合(6月8〜9日)の開催までに財務大臣、金融庁長官、中央銀行総裁宛に提出する計画です。「預金先の銀行及び投資先の金融機関が、地球温暖化を促進するビジネスを支援し続ける場合、私・弊団体は2020年東京オリンピックまでに『地球にやさしい預け先』を選ぶ」と宣言するもので、これまでの賛同者は468人にのぼる。

ドキュメンタリーフィルムの制作を手掛けたイメージミル株式会社のアーヤ藍フィルムプロデューサーは、「自然に近い場所で暮らしていたり親しんでいる人たちが、自然の変化や気候変動の影響に気づけることを、取材を通じて痛感しました。より多くの方に映像を見てもらえるよう、全国で上映会を開催してくださる方が増えてほしい」と述べ、ドキュメンタリーフィルムの制作の意義を強調しました。

 

大阪イベントで登壇した国立環境研究所地球環境研究センターの江守正多副センター長は、「気候変動問題について、今日本では世界と比べて、圧倒的に危機感が足りていない。気候変動対策に関する世界の先進的な取り組みはすでにたくさんの情報があり、アンテナの立て方次第です」と、積極的な情報収集の必要性を指摘しました。

 

350.orgシニアキャンペーナーの古野真は、「日本の経済界は『安価・安定の電源』を優先し国内外でもっともCO2排出量の多い石炭火力発電所の新設・増設計画を支援し続けています。こうしたことは、ESG投資の観点からもビジネスリスクが高まっていることを物語っています。」と述べる一方、本年のG20議長国として、政府そして金融機関を中心とした民間企業が「脱炭素社会」の構築へ向けた取り組みを加速する必要性を強調しました。

 

三菱UFJフィナンシャルグループは4月、石炭火力発電への新規融資を原則中止する方針を検討しているなど、日本の金融機関もようやく「ダイベストメント」へ向けて動き始めました。しかし、パリ協定が採択された以後の2016~2018年でみれば、石炭火力発電企業上位30社への投融資額では、みずほフィナンシャルグループが1位、三菱UFJフィナンシャルグループが2位、三井住友フィナンシャルグループが4位となっており、世界の金融機関の中で広がっている「ダイベストメント」の動きとは逆行していることがわかります。

 

 パーマカルチャーを学びガーデニングティーチャーとして活動する松岡美緒さんは、「気候変動というと難しく感じるかもしれません。また、自分一人ではなにもできないと感じるかもしれません。しかし、地球を良くすることを考えている会社や企業をからモノを買ったり、地球に優しい金融サービスを提供している銀行を選んで使うことで、自分が消費するエネルギーや預けるお金がより良い方向に使われるようになります」と述べ、個人個人が「小さな一歩」を踏み出すことの重要性を指摘しました。

 大阪のイベントでは、北海道函館市の6代目昆布漁師で、本フィルム出演者の岡山潤也さんがビデオ出演し、「北海道の漁業は海水温の上昇に非常に影響を受けやすい。漁獲量は最近急減している。廃業した漁師仲間もいっぱいいる。子どもたちの世代にも漁師を続けてほしいが、このままでは将来というよりもすぐにでも漁師が続けられなくなるのではないかと非常に危惧している」と述べました。

今回のフィルム上映会の盛況ぶりを見ると、社会課題意識が高いと言われているミレニアル世代やZ世代の間では、気候変動問題に対する関心度が高まっており、金融業界に脱炭素化に向けた早急な対応を求めていることがわかります。

 

「Signs from Nature〜気候変動と日本」のドキュメンタリーショートフィルム自主上映会は、6月28日G20首脳サミットまで各地で開催予定。

 


お問合せ

350.org Japan広報担当 関([email protected])携帯:090-4752-7020

 


参考

350.org Japan 「Signs from Nature~気候変動と日本」ドキュメンタリーショートフィルム公式ホームページ:https://world.350.org/ja/signs-from-nature/

350.org Japan 「ダイベストメント宣言」(オンライン署名サイト):https://world.350.org/ja/lets-divest-pledge/