2019年6月7日

【プレスリリース】学生366人分ダイベストメント宣言提出

プレスリリース

 

2019年6月6日

国際環境NGO 350.org

 

G20財務大臣・中央銀行総裁会議に向けて

学生366人分ダイベストメント宣言提出(推定預金額22億4450万円)

パリ協定1.5度目標に整合した投融資方針と気候変動リスク開示を求める

 

 国際環境NGO350.org Japanは6月6日、東京・丸の内で「1.5℃目標と整合的な金融とESG投資〜気候変動リスク開示と責任ある投融資のあり方〜」と題した勉強会を開催した。同会では、8日〜9日に福岡で開催されるG20財務大臣・中央銀行総裁会議(以下G20財務大臣会合)を前に、日本の金融機関が気候変動問題の解決に向けて果たす役割について議論を行った。

 

 2015年G20財務大臣会合のコミュニケの要請を元に金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」が2017年に金融セクターに対して気候変動リスクへの対応策強化を提言した。しかし、国内外の多くの金融機関や企業が賛同している一方で、日本の大手金融機関は地球温暖化を加速させる石炭火力発電事業に世界で多額の融資を行っていることが浮彫になっている[1]。このように、金融の脱炭素化の世界の潮流と逆行している[2]

 

 近年邦銀の石炭関連投融資に対する批判が高まる中、日本のメガバンクは昨年から今年にかけて相次いで石炭火力発電に対する融資方針を改訂し、MUFGは原則新規の石炭火力発電へ融資を行わないとした。しかし、例外規定も設けられており、高効率の石炭火力発電に限定するとしたSMBC、みずほとともにパリ協定の1.5℃目標と整合していない[3]

 

 そこで、国際環境NGO350.org Japanは、麻生太郎財務大臣、黒田東彦日本銀行総裁、遠藤 俊英金融庁長官、および邦銀に対し、TCFD提言に沿った情報開示の実施、パリ協定の1.5℃目標に整合した投融資方針の策定、石炭火力発電・化石燃料開発への新規融資停止と自然エネルギー社会への移行を促す投融資の実施などを求める「ダイベストメント宣言」を若者を中心に広く一般に呼びかけ、本日提出した。これは、「もし預け先の金融機関が気候変動を加速するビジネスを支援し続ける場合、2020年東京オリンピックまでに地球に優しい預け先を選ぶ」と宣言するもので、短期間で強いコミットメントを要求する内容の署名にも関わらず、署名数は909人(うち、学生366人、10〜20代50%)、推定預金総額22億4450万円に上っている。

 また、本日の勉強会ではパリ協定目標に整合する金融のあり方について専門家による現状評価を行った。サステナビリティ日本フォーラム代表理事の後藤敏彦氏は「多くの日本の企業がTCFD提言に賛同したことは前向きに評価している」と強調した一方、金融機関にもSDGsおよびパリ協定と整合的な与信活動を促進する必要性を強調した。「世界ではパラダイムシフトが起きている。欧米では、すでに脱炭素社会の実現へ向け競争を始めているが、日本はようやく動き始めたところだ」(後藤理事)

 

 350.org シニアキャンペーナー東アジアファイナンスの古野真は「金融の脱炭素化が1.5℃目標の実現の中核だ」と話した。また、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同表明している金融機関に、パリ協定と整合的な公共善に向けてビジネスモデルを転換することが期待されている。邦銀を代表する3大金融グループの気候変動対応は近年前進している一方で、最も排出量の多いかつ座礁資産化のリスクが高まる石炭火力発電事業への融資を継続する限り、取り組みが問われるだろう」と強調した。企業が今後気候変動に積極的に取り組む意義について「企業のブランド価値を高めるだけでなく、将来の人材獲得という側面でも大きな効果が見込まれる」と強調した。

 

 上智大学特任教授の引間雅史氏は、脱炭素社会の構築に向けて大学がESG投資に取り組む意義について「教育という側面からも重要だ。特に日本の学生は気候変動リスクなど社会課題に関する意識は高いが、これをどのように投資に生かすという金融リテラシーを高めていかなければならない」と語った。そのうえで引間氏は、「運用を外部に委託する場合に重要になるのは、しっかりと『ESG投資』など運用方針を伝え、委託先とコミュニケーションを密にすることで、運用状況を把握することだ。」と述べた。

 

 350.org 日本キャンペーン担当の渡辺瑛莉は、「気候変動問題を考える上で『クライメート・ジャスティス』、世代の公平性という問題も重要だ。気候変動影響を最も受けるであろう若い人たちの声を聞くことが重要であり、『ダイベストメント宣言』で学生が全体の40%を、10代、20代が全体の50%を占めたことを重く受け止める必要がある。財務大臣、日本銀行総裁、金融庁長官には、金融機関に対して、パリ協定に整合した金融の一刻も早い実現を促してもらいたい。」とした。

 

 企業・団体が化石燃料を支援しない「地球に優しい銀行」を選ぶ意義について、株式会社チーム・オースリー代表取締役の前田剛氏は、「銀行には、手数料などの目先のメリットだけでなく、どんな形で、社会的・環境的・SDGs的に貢献し運用しているかをアピールしてほしい。逆に現状ではこんなところに投融資しているというマイナス面も公表してほしい。さらにエコな銀行には、化石燃料や兵器などに投融資していないということだけでなく、ソーシャルな企業や団体にもっと目を向けてもらい、目先や短期的な成長だけでなく、持続可能な社会づくりを目指している企業をサポートしていただきたい。」と加えた。

 

 気候変動問題に関心の高い若者を代表して、聖心女子大学4年生の岡田英里さんは、ダイベストメントに参加した理由を「気候危機によって私たちの未来は根こそぎ奪われるかもしれず、今すぐに行動を起こさなければと思って署名した。今後大学でもダイベストメントを広げていき、サステイナブルキャンパスにしたい」と語った。また、金融機関・政府、また大人たちに対して「いつまで知らぬが仏でいられますか?」と問い、「石炭や化石燃料への投融資をやめ、気候変動問題に真剣に向き合って良く考えてほしい」と訴えた。

 

 350.org JapanはG20財務大臣に対して、1.5℃目標達成のために早期に行動を起こすよう、日傘で1.5℃を表現する「1.5℃」人文字アクションを都内で行った。

 


[1]例えば、2015年のパリ協定採択後の3年間で三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は、合計1,860億ドルを世界の化石燃料部門に資金提供した。出展:RAN他「化石燃料ファイナンス成績表2019」日本語要約版発表
https://world.350.org/ja/press-release/banking-on-climate-change/

[2]2019年2月時点で、世界トップ40に入る銀行の40%と20の世界的な保険会社を含む100以上の金融機関が石炭からのダイベストメントを発表。(出展:IEEFA http://ieefa.org/wp-content/uploads/2019/02/IEEFA-Report_100-and-counting_Coal-Exit_Feb-2019.pdf

また、カナダ、英、仏、伊など30カ国の政府、22の地方政府などから成る「脱石炭同盟」はパリ協定の目標達成のために既存の石炭火力発電の段階的廃止をOECD諸国は2030年までに、全世界で2050年までに実施する必要があるとしている。(https://poweringpastcoal.org/about/Powering_Past_Coal_Alliance_Declaration

[3] https://world.350.org/ja/press-release/mufg-jp/ (350 Japanプレスリリース2019年5月16日), https://world.350.org/ja/press-release/mizuho-joint/ (NGO共同声明2019年5月22日)


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