2019年4月8日

【プレスリリース】3メガバンク、パリ協定後も化石燃料に約1,860億ドルを資金提供

プレスリリース

 

2019年4月8日

環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
350.org Japan
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

 

3メガバンク、パリ協定後も化石燃料に約1,860億ドルを資金提供

〜新方針は気象災害を回避するには不十分〜

RAN他「化石燃料ファイナンス成績表2019」日本語要約版発表

環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、350.org Japan、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは、「気候変動とSDGs」がテーマの社会的責任投資に関する世界最大級の国際会議『RIアジア・ジャパン2019』の東京での開催を前に、気候変動の影響が悪化しているにも関わらず、日本の銀行は世界中の石炭火力発電その他化石燃料に資金提供しており、「国際社会の厳しい監視に直面している」と喚起を促しました。

RAN他が本日8日に発表した新報告書「化石燃料ファイナンス成績表2019」日本語要約版(注1)によると、メガバンクの三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は、2015年のパリ協定採択後の3年間で合計1,860億ドルを世界の化石燃料部門に資金提供したことが明らかになりました。その事実を受けてNGO3団体は、3メガバンクは重大な評判リスクに加え、化石燃料インフラが座礁資産となるリスク、そして適切に開示されていないために最終的には投資家に悪影響を及ぼす可能性のある気候変動関連の金融リスクにさらされていると警告しました。

 

【化石燃料ファイナンス成績表2019】
概要・調査結果

本報告書は、世界の主要銀行による化石燃料への資金提供をまとめたもので、今年で10回目の発表となります。今回は化石燃料部門の分析対象を広げ、世界の銀行(カナダ、中国、ヨーロッパ、日本、米国)による化石燃料セクター1,800社への資金提供を初めて分析しました。結果は厳しく、パリ協定締結後の2016年から2018年の3年間で、日本の3メガバンクを含む33行が石炭、石油、ガス分野で1.9兆米ドルの融資・引受を行ない、さらに過去2年間は融資・引受額が増加していたことがわかりました。1.9兆ドルの内、合計6,000億ドルが日本の電源開発(J-POWER)など化石燃料を積極的に拡大している企業100社に資金提供されました。 以下は、メガバンクに関する主な調査結果です。

 

  • MUFGみずほは、化石燃料セクターへの融資・引受額、及び化石燃料を拡大している上位100社への融資・引受額で、世界で上位10行に入る。
  • MUFGは、化石燃料産業全体への日本最大の資金提供者で、メガバンクの中で気候変動を加速しているワースト銀行である。パリ協定締結以降800億ドルの資金を化石燃料に提供してきた。
  • MUFGみずほは、石炭火力発電関連企業の上位30社に資金提供している世界の上位10行に入り、パリ協定締結以降、それぞれ35億ドルと30億ドルを提供してきた。
  • SMBCは、北極圏の石油・ガス開発事業への世界3位の融資・引受元で、脆弱な北極圏の生態系と、先住民の暮らしと文化を脅かしている。
  • SMBCは、LNG輸出入ターミナルへの世界3位の融資・引受元で、アフリカのモザンビークの大規模輸出ターミナルに資金を提供している。同プロジェクトは、強制的に数千もの人々を移住させ、ユネスコ生物圏保存地域の生態系を脅かしている。

 

【日本のメガバンクの方針格付について】

本報告書はまた、日本の銀行が昨年に発表した与信方針を格付けし、その結果、「パリ協定の目標に合致しているメガバンクはない」ことがわかりました。

  • 「化石燃料拡大」への融資制限:SMBCの格付は、一部の石炭事業に融資等を禁止していることから「D−」となった。一方、MUFGみずほは明確な融資制限がないことから「F」(不可)となった。
  • 「石炭火力」への融資制限:石炭火力発電に関する新融資方針を3行が採用した結果、格付は昨年からわずかに高くなったが、石炭への継続的な資金提供を可能にする抜け穴があった。SMBCのみが石炭火力発電プロジェクトへの融資を部分的に禁止しているため、格付は「C−」となった。しかしMUFGみずほは、融資に関するデューデリジェンス(相当の注意による適性評価)方針の公開のみに止まったため「D +」となった。

 

格付を受けて、レインフォレスト・アクション・ネットワーク「 責任ある金融」シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケンは「日本の銀行の新しい融資方針は、気候変動の緊急事態に対処するにはまったくもって不十分です。このような状況は、投資家にとって注意を払わなければならない『危険信号』となるはずです」と指摘しました。

 

日本の銀行が、国内外で石炭火力発電所やその他の化石燃料事業の開発に資金提供を続ける一方で、世界中で、化石燃料事業からのダイベストメントに向けてのスピードは速くなり、重要性も高くなっています。 グリーンピース・ノルディックの持続可能な金融キャンペーン・ディレクターのマーティン・ノーマンは、「100以上の世界的な金融機関が、燃料炭からの撤退または資金調達の制限を行っています。 その中には、世界トップ40の銀行の4割(16行)と、世界的な主要保険会社20社を含みます。また、進歩的な金融機関がダイベストメント決定のために設定する基準はますます厳しくなっています。現在、日本の銀行は世界の中で遅れを取っています」と語りました。

 

昨年、3メガバンクは気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明しました。しかし、同提言に遵守する形での投融資ポートフォリオにおける炭素関連資産の開示、及びパリ協定が定めた二酸化炭素削減目標に沿った事業戦略は明確化されていません(注2)。国際環境NGO350.orgの日本支部代表 古野真は「パリ協定が定める1.5〜2℃未満目標達成に整合した与信方針を策定することは、科学的知見に基づき、最もCO2排出量の多い石炭火力発電やその他化石燃料開発への新規投融資を停止し、自然エネルギー社会への公平・公正な移行を促す銀行業務を実施することである」と指摘しました。

 

世界気象機関(WMO)は先月、人為的な気候変動が加速し、2018年に起きた異常気象が世界中で6200万人を襲い、200万人が移住を余儀なくされたと発表しました(注3)。昨年発表された、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「1.5度特別報告書」(注4) は、化石燃料の急速な段階的廃止の必要性を明確に説明し、クリーンエネルギーへの世界の投資需要は2035年までに年間2.4兆ドルになると推定しています。気候変動対処への緊急性から判断すると、日本の銀行の株主である主要投資家は、世界の気温上昇を1.5度に抑えるべく明確なスケジュールにそって、あらゆる化石燃料拡大プロジェクトおよび化石燃料の開発と関連インフラを拡大する企業への融資を全て禁止し、化石燃料の開発と関連インフラへの投資の段階的廃止を約束しなければなりません(注5)。

 

〜「化石燃料ファイナンス成績表2019」調査方法について〜

 

・対象銀行:米国、カナダ、日本、中国、欧州の33の民間銀行

・対象部門:世界の化石燃料事業全体、化石燃料事業の拡大、タールサンド、北極圏の石油・ガス、超深海の石油・ガス、シェールオイル・ガス、液化天然ガス(LNG輸出入ターミナル)、石炭採掘、石炭火力発電

・対象化石燃料企業:世界の化石燃料関連企業(約1,800社)。2016年から2018年まで3年間の民間主要銀行による融資・引受額を算定。化石燃料事業の拡大(上位100社)、各部門の上位30〜40社は1,800社に含まれる。

・融資・引受額は、対象となる化石燃料関連企業の当該部門の事業活動に基づいて割引して算出


注1)RAN、バンクトラック、シエラクラブ、オイル・チェンジ・インターナショナル、先住民族環境ネットワーク、オナー・ジ・アース、「化石燃料ファイナンス成績表2019」日本語要約版
http://japan.ran.org/wp-content/uploads/2019/04/BOCC_2019_SUMMARYvJP_web.pdf

報告書全文(英語):ran.org/bankingonclimatechange2019

※350.org Japanとグリーンピース・ジャパンは、本報告書を支持する163団体に含まれます。

注2)350.org Japan「メガバンク3社の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応について」 https://drive.google.com/file/d/1PBq4ePlMfDUdkH3WpamMu57t8FSE74Ix/view?usp=sharing 
注3)世界気象機関(WMO)” State of the Global Climate 2018 report”, 2019年3月28日 https://public.wmo.int/en/media/press-release/state-of-climate-2018-shows-accelerating-climate-change-impacts
注4)IPCC特別報告書『1.5℃の地球温暖化』の政策決定者向け要約、2018年10月
https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/sites/2/2018/07/SR15_SPM_version_stand_alone_LR.pdf
注5)グリーピース・インターナショナルと研究者の国際ネットワーク、コール・スワームによる、『地球温暖化を1.5℃未満に抑えるために石炭を段階的に廃止する道すじ』は、2050年までに世界中でどのように石炭火力発電所を廃止するかのシナリオを示す。

https://storage.googleapis.com/planet4-japan-stateless/2019/04/6c933f3f-gpj_coalphaseoutpathway.pdf


お問合せ

関本幸 レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN) 03-6721-0441, [email protected]

城野千里 グリーンピース・ジャパン 080-6558-4446, [email protected]

 


団体紹介

レインフォレスト・アクション・ネットーク(RAN)は、米国のサンフランシスコに本部を持つ環境NGOです。1985年の設立以来、環境に配慮した消費行動を通じて、森林保護、先住民族や地域住民の権利擁護、環境保護活動をさまざまな角度から行っています。2005年10月より、日本代表部を設置しています:http://japan.ran.org

グリーンピースは、環境保護と平和を願う市民の立場で活動する国際環境NGOです。問題意識を共有し、社会を共に変えるため、政府や企業から資金援助を受けずに独立したキャンペーン活動を展開してます。http://www.greenpeace.org/japan/ja/

350.org Japanは米国ニューヨークに拠点おく国際環境NGO 350.orgの日本支部として2015年4月に設立されました。350.org Japanは気候変動防止に向けた化石燃料への投資撤退「ダイベストメント」を広めるために、「レッツ、ダイベスト!」キャンペーンを展開しています。このキャンペーンを通じて、「パリ協定」で定められている気温上昇を1.5-2℃未満に抑える目標に整合した投融資方針を策定することを邦銀に市民とともに呼びかけています。350.orgは180を超える国と地域で活動を展開しています。
350.org/ja