2018年11月27日

【プレスリリース】国連責任銀行原則:パリ協定、目標達成に向けた金融の脱炭素化の波に邦銀の遅れ目立つ

プレスリリース

2018年11月27日

国連責任銀行原則:パリ協定、目標達成に向けた金融の脱炭素化の波に邦銀の遅れ目立つ

11月26日に国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP-FI)が銀行業務を持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定の定める社会的ゴール整合を目的とした「責任銀行原則(PRB)」のドラフト版を発表。現在パリで11月26日から28日の間に行われている第4回の気候ファイナンスデー(Climate Finance Day) とUNEP-FIの円卓会議の中で発表されました。

「未来の持続可能な銀行システムのフレームワーク」の原則を構築することを目標に、創設機関に米17兆ドルの総資産を運用する28の世界的銀行とUNEP-FIが関わっています。その28行に世界大手のBNPパリバ(仏)、ICBC(中)、サンタンデール(スペイン)、バークレイズ(英)の他、サステナビリティのリーダーであるING(オランダ)やノルデア銀行(フィンランド)とともに新興国を代表するイエスバンク(インド)やアクセス・バンク(ナイジェリア)も含まれます。

アジアの銀行を代表する邦銀は、国連責任銀行原則の創設銀行として参加していないことは非常に残念です。

投資家の行動を変えた国連責任原則(PRI)の銀行版として、PRBは銀行業務の社会や環境への貢献を確保する未来の姿を描く画期的な指標になりつつあります。その中、パリ協定が定めた「産業革命前に比べて地球の気温上昇を2度未満に抑え、さらに1.5未満を目指す努力をする」という目標達成に向け、銀行には世界経済の脱炭素化を実現させる資金源を提供することが期待されています。

PRBの6つの原則(1整合性, 2インパクト, 3クライアントとカスタマー, 4ステークホルダー, 5ガバナンスと目標設定, 6透明性と説明責任) は民間銀行の投融資方針やビジネス戦略がパリ協定の目標達成の整合性を測るベンチマークとなるでしょう。

パリ協定に整合させようと奔走する世界の銀行に対し、邦銀を代表する3大金融グループの出遅れが目立っています。

【3大金融グループのビジネス戦略はパリ協定と整合するのか?】

「PRB原則1:整合性」は以下のように定義されています。「私たちは、持続可能な開発目標(SDGs)、パリ協定、その他関連ある国・地域レベルのフレームワークにある個人のニーズや社会ゴールに一致し、その達成に貢献するビジネス戦略を設定します。特に、私たちのビジネスがもっとも大きなインパクトを与える分野に注力します」

3大金融グループ(三菱UFJファイナンシャル・グループMUFG、三井住友ファイナンシャルグループはSMFG, みずほファイナンシャルグループ)はそれぞれ与信方針に環境負荷の高い石炭火力発電部門へのファイナンスを今後慎重に判断すると言及していますが、現在のポリシーはパリ協定に整合しないことは明らかです。

国連環境計画(UNEP)は、パリ協定の1.5~2°C 目標達成のためには、仮に高効率のものであって も、新たな石炭火力発電所の建設は許されず、既存の石炭火力発電所も廃止していく必要があると勧告しています[1]。3大金融グループの方針では、高効率の石炭火力発電所への投融資を「慎重に判断」しながら継続させることが可能で、パリ協定の1.5~2°C 目標達成について触れられていません。

一方で、三井住友信託銀行とりそなホールディングスは気候変動に配慮する方針の一環で新規の石炭火力発電プロジェクトには原則取り組まないと発表し、3大グループより前進した取り組みを打ち出し、邦銀をリードしています。

3大金融グループの化石燃料関連企業への投融資実績より、石炭火力発電を始めとする大量の二酸化炭素排出量を生み出すセクターへ膨大な資金提供を国内外で行っていることが浮き彫りとなっています。

国際環境NGO 350.orgの日本支部(350.org Japan)が9月に発表した報告書「民間金融機関の化石燃料及び原発関連企業への投融資状況2018」によって、2015年のパリ協定合意以降、3大金融グループが国内の石炭火力発電所の新設計画に携わっている企業への資金提供を増加させている事実が判明。2013年1月から2018年7月まで、3大金融グループは、特定の 石炭開発に携わる日本企業19社に対して総額約250億ドル(約2.8兆円)の融資および引受を提供していました。 さらに、金融グループは特定の石炭開発関連企業の債券と株式に総額約29億米ドル(約3290億円)の投資も確認されました。

さらに、日本の3大金融グループは石炭火力発電所の新増設計画に最も携わる世界TOP120社への投融資実績でも世界的に上位であることも明らかになっています。2014年1月から2017年の9月まで、特定120社の石炭関連企業への融資総額で、みずほは世界1位(約115億ドル)、MUFGは世界2位(約102億ドル)、SMFGは5位(約35億ドル)という事実が判明[2]。今年の国連気候変動会合(COP24)で発表される予定の「銀行 vs. パリ協定」の調査レポートのアップデート版では、再び邦銀はパリ協定に逆行する形で、石炭火力発電の促進を支える存在として取り上げられる可能性が高いです。

上記の投融資実績を踏まえ、3大金融グループの事業戦略は「パリ協定の目標達成に反する」と評価されてしまうのが当然で、世界の流れを受け止め、石炭火力発電事業への新規投融資を停止すべきです。PRBが銀行に対して求める国際社会が定めたゴールに整合する銀行業務を行うよう、邦銀を代表する三大金融グループにも「脱炭素化」に向けた舵取りが期待されます。

[1] UNEP 2017, ‘The Emissions Gap Report 2017 – Bridging the gap – Phasing out coal’, p47.
[2] Banks v The Paris Agreement, 2017 : https://www.banktrack.org/coaldevelopers/#rankings

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