2022年4月6日

【声明】IPCC第3作業部会第6次評価報告書、発表:エネルギー、産業、金融、すべての部門で脱炭素の緊急行動を

声明

2022年4月6日

国際環境NGO 350.org Japan

 

IPCC第3作業部会第6次評価報告書、発表:
エネルギー、産業、金融、すべての部門で脱炭素の緊急行動を

 

5日、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、第3作業部会(気候変動の緩和)の第6次評価報告書を発表しました。世界中の科学者が、温室効果ガスの排出削減を進め、気候変動を抑えるための緩和策に関する最新の科学的知見をまとめたものです。

この報告書は、気候危機の主な原因は化石燃料にあること、現在の対策レベルでは気候危機を防ぐことはできないことを明確にしました。また、資金の流れがパリ協定の目標に整合的でないとも指摘しています。もしも既存の化石燃料インフラの利用を続け、現在計画中のものを強行すれば、1.5℃目標の実現は不可能になります。燃焼時のCO2排出量が最も多い石炭のみならず、石油やガスについても脱却が必要です。同報告は、「全ての部門で、急速かつ大幅に、そしてほとんどの場合、即時的に、 温室効果ガス排出量を削減する必要がある」と述べています。各国政府が掲げる2030年までの温室効果ガス排出削減目標は1.5℃目標の達成には不十分であり、2030年以降の世代により重い対策の責任が押し付けられつつあることをも明らかにしました。

この報告の発表に合わせ、グテーレス国連事務総長は、「確実に私たちを住むことができない世界へと導く空疎な誓約」、「気候活動家は危険だ過激だと言われることもあるが、本当に危険で過激なのは、化石燃料の生産を拡大している国々だ」などと強い言葉で化石燃料への依存を非難しました。化石燃料への依存は、不安定なエネルギー価格で貧しい人々を苦しめ、自然を破壊し、気候変動による社会的不公正・不公平を拡大させます。それに加え、エネルギーをめぐる安全保障を脅かし、ロシアのプーチン大統領の戦争の資金源にもなっています。

日本政府は、グラスゴー気候合意でも求められている2030年目標の引き上げにただちに着手するとともに、化石燃料事業への公的支援をやめるべきです。エネルギー部門の脱炭素化に加え、建築物や交通といった部門の省エネルギー政策の強化もこれ以上の先送りは許されません。社会・環境・人権上の懸念やコストが大きい原発や、未だ実用化のめどのたたない不確かな革新的技術ではなく、すでにある省エネルギー技術と自然エネルギー導入の徹底を最優先に、脱炭素化が進められるべきです。ビジネスや金融機関、自治体、その他の民間主体も、政府を待たずに化石燃料と決別し、気候危機と戦争への加担を止める必要があります。

横山隆美(350 Japan代表)は次のようにコメントしています。

「科学者たちは政府の政策や資金の流れが今もなお化石燃料に依存し、気候危機の破局的未来に向かっていることを明らかにしました。このままでは破滅的な気候災害が日常のものとなるでしょうし、すでにそうなりつつあります。これ以上の悪化を防ぐためには、より健康的でフェアで安全な自然エネルギー100%への公正な移行を急ぐ必要があります。新型コロナウィルスのパンデミックに対してすべてのセクターが科学的知見をベースに協力して解決にあたったように、エネルギー、産業、金融といったすべての部門で、脱炭素の緊急行動が必要です。」

メイ・ブーヴェ(350 Global・事務局長)は次のようにコメントしています。

「このIPCC報告は気候問題の原因が化石燃料にあることを強調しています。ウクライナ戦争が始まってから、多くの人々は暖房やガソリンを購入するのに困難を感じるようになっていますが、化石燃料企業とその重役たちは乱高下するエネルギー価格から利益を得続けています。今こそ、クリーンエネルギーへの転換を急ぐべきときです。」

 


本件に関する問い合わせ先:

国際環境NGO 350.org Japan、伊与田昌慶、[email protected]