プレスリリース
2020年4月15日
国際環境NGO 350.org Japan
みずほフィナンシャルグループ、脱石炭方針の厳格化を歓迎
気候危機解決のためにさらなる方針強化を期待
みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)が本日「サステナビリティへの取り組み強化について~脱炭素社会実現に向けたアクション強化~」を発表した(注1)ことを受け、国際環境NGO 350.org Japanは以下の声明を発表しました。
350.org Japan代表の横山隆美は、以下のようにコメントしました。
「みずほFGが『石炭火力発電所の新規建設を資金使途とする投融資等は行なわない』と表明したこと、また、石油・ガスセクターにも言及したことは邦銀で初めてであり、今般の気候変動問題への対応強化を歓迎します。これは環境団体だけでなく、日本の若者や世界中の投資家などの声の高まりを受け、気候変動問題の解決に向けてみずほFGが一歩踏み出したことの現れだと言えます。一方で、みずほFGの今回の方針改訂は気候危機を解決するためにはいまだに部分的な対応に留まっており、世界の平均気温を産業革命前と比べ1.5度以下に抑えるとしたパリ協定にも整合しません。
みずほFGは昨年9月、ビジネス戦略をパリ協定と持続可能な開発目標(SDGs)に整合させると謳った国連責任銀行原則(PRB)に署名しており、自らのコミットメントを果たせるかどうかが問われています。パリ協定に整合させるためには、石炭を含む新規の化石燃料関連インフラの建設は認められないとされています。この点で、みずほFGの新方針に例外規定が含まれていることが懸念されます(注2)。また、新方針の適用を6月からとしていますが、融資検討中だと言われているベトナムの石炭火力発電事業ブンアン2(総事業費22億米ドル)への融資からの撤退が求められます。スタンダード・チャータード銀行は昨年12月、新方針の発表後、同事業からの撤退を表明しており、みずほFGを含む邦銀4行の動向が国際社会から注視されています。(注3)」
350.org Japanキャンペーナーの渡辺瑛莉は、以下のように述べました。
「みずほFGの石炭火力発電所に関する新方針は前進ではありますが、石炭からの包括的なフェードアウトを掲げた欧米の民間銀行と比べて課題が多く残っています。欧米の銀行が、プロジェクトファイナンスだけでなく、石炭関連企業への融資、引受、債券および株式保有にも方針を適用しているのと対照的です。みずほFGは、2017年〜2019年9月までに世界258の石炭火力発電開発企業に310億米ドルの資金提供を行なっており、融資額としては世界第1位にランクインしています。(注4)
今回、新たに「石炭採掘」を脱炭素社会への移行リスクが高い「特定セクター」に加えたことは評価できる一方で、気候変動に伴う移行リスクへの対応等を取引先とのエンゲージメントを通じて確認するとしていますが、パリ協定に整合的な期限を設けた撤退を促すことが重要です。そのためには、採掘・火力発電・関連インフラを含む石炭からの撤退は、先進国では2030年まで、世界全体では2040年までに必要であり、このような方針を掲げる欧米の銀行が増えている中、みずほFGの「2050年までに⽯炭⽕⼒発電所向け与信残⾼をゼロにする」という目標は対象範囲・期限ともに強化していく必要があります。
この点で欧米の銀行のベストプラクティスは、フランス第2位のCrédit Agricole(クレディット・アグリコール)銀行のもので、石炭火力発電、石炭採掘・生産、関連インフラを含む新規の石炭火力関連事業を現在進めている、または拡大計画を持つ企業との取引を停止するとしています。(注5)」
横山隆美は、「今回の方針改定により、みずほFGが邦銀の中で一歩前へ出たことは確かです。しかし、パリ協定を遵守し、気候危機を解決するためには今後、石炭だけでなく、石油、ガスも含む化石燃料全体への規制の強化が必要であり、欧米の銀行がすでにこうした規制に踏み出している中、邦銀の遅れが目立っています。みずほが「石炭採掘」に加え「石油・ガス」も「特定セクター」に加えたことは評価できるものの、まだ弱い記載に留まっています。世界第9位の化石燃料産業への資金提供者であるみずほFGは(注6)、顧客、株主、そして、将来世代のためにも、今後さらに方針を強化し、化石燃料産業からの段階的な撤退を行うことを望みます」と述べました。
渡辺瑛莉は、「みずほFGがTCFD提言に基づいた情報開示を行い、国内に限定しているものの、特に移行リスクについてシナリオ分析を行ない、金額を開示したことを歓迎します。物理的リスクに関するさらなる情報開示や、対象範囲の拡大、1.5度シナリオの導入、間接的排出量の把握への取り組みなど、今後のさらなる評価の進展と開示を期待します。また、石炭火力発電所向け与信の2019年度末の残高を示し、削減の定量目標として期限を明記したことは評価できる一方で、現行の目標ではパリ協定に整合せず、期限の前倒しが求められます。」 と述べました。