プレスリリース
2019年12月18日
国際環境NGO 350.org Japan
英大手スタンダード・チャータード銀行、石炭火力発電への投融資方針をさらに厳格化
3メガバンク・三菱商事が関わるベトナム案件も対象に
英大手スタンダード・チャータード銀行(Standard Chartered PLC)が昨日(2019年12月17日)気候変動関連財務情報ディスクロージャー(TCFD)レポート(英文)を公開し、投融資ポートフォリオをパリ協定の目標達成(世界平均気温の上昇を2度未満に十分抑えること)に整合させるための取り組みを明らかにした。
スタンダード・チャータードは石炭火力発電セクターへの投融資方針に対して、クライエントが2030年までに石炭火力発電事業からの事業収益割合を1割以下に抑えない限り、投融資を取りやめると発表した。クリーンなテクノロジーへの移行に必要とされるエネルギー部門の抜本的な変革を踏まえて、段階的なアプローチとして具体的なマイルストーンを設け、同方針の実施は2021年1月からとする。
石炭火力発電セクターに対する新たな抑制方針はスタンダード・チャータードグループが提供するすべての金融商品が対象となり、同グループが2018年9月に発表した石炭火力発電所への直接的な支援の中止に加える形となる。さらに、今回の方針改定の以前に融資を検討していた石炭火力発電所の個別案件3件から引き上げることを公表する。
350.org Japan代表の横山隆美は以下のコメントを発表した。
12月17日にスタンダード・チャータード銀行が以前から融資を検討していた3件の石炭火力発電プロジェクトから融資を引き上げると公表した中には、日本企業・金融グループが深く関わるベトナムのブンアン2石炭火力発電所(Vung Ang2)、そしてビンタン3(Vinh Tanh 3)が含まれていると見られます。ブンアン2石炭火力発電所には三菱商事が出資し、3メガバンクグループ(三菱UFJ、みずほ、三井住友)と三井住友トラストが融資を検討していることが明らかになっており、ビンタン3には同様に三菱商事が出資しています。
先月ブンアン2からシンガポールのOCBC銀行が融資を引き上げたことに続き、スタンダード・チャータードの発表で同事業からの石炭ダイベストメントは2行目となります。
パリ協定の目標達成に整合させるため、大手銀行による石炭ダイベストメント方針が相次いで厳格化されるなかで、石炭火力発電所の新設に関わっている3メガバンクグループの投融資の不適切さが浮き彫りになるでしょう。とりわけCOP25で明らかになったように、石炭火力発電事業者への融資額において世界トップ3を占めている現状を踏まえ、また、パリ協定にビジネスを整合させることを約束した国連責任銀行原則(PRB)など、銀行自らの公約を遵守し、さらに国際的批判を回避しブランド価値を維持するためにも思い切った投融資方針の変更が望まれます。
注:超々臨界圧など日本企業が売りにしている最新鋭の石炭火力発電所であっても、LNG火力発電所の約2倍のCO2を排出することから(参考:P.2 電源別CO2排出原単位の表)、世界では石炭火力発電所の段階的廃止は、温暖化対策において最重要課題と位置付けられている。また、炭素回収・利用・貯留(CCUS)については実証化されていない技術であり、2030年までに世界全体で毎年7.6%の排出削減が必要な中、これをあてにし石炭火力を続けることは、長期間に渡って新興国のエネルギー生産を炭素依存型にロックインする危険性がある。
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