2019年9月25日

【プレスリリース】3メガバンク・グループの国連「責任銀行原則」への署名と課題

プレスリリース

2019年9月25日

報道関係各位
国際環境NGO350.org Japan

国際環境NGO350.org Japan声明:

3メガバンク・グループの国連「責任銀行原則」への署名と課題

 

9月22日国連本部において、責任銀行原則(Principles for Responsible Banking:PRB)の調印式が開催されました。PRBは国連のSDGs(持続可能な開発目標)やパリ協定に整合した投融資行動を金融機関に求めるものであり、日本の3メガバンク・グループと三井住友信託銀行を含む140の金融機関が同原則へ署名しております。

 

国際環境NGO350.org JapanはPRBの発足を受け、以下の声明を発表しました。

「日本を代表する3メガバンク・グループが世界経済に強い影響力を持つ金融機関として、これに先立ち原則に署名したことは評価します。一方で、絵に描いた餅とならぬよう、原則と実態の乖離を避け、早急な実行計画の策定と履行が急がれます。

責任銀行原則は以下の6条項から構成されます。(詳細は※1)

参照:https://www.unepfi.org/banking/bankingprinciples/

(原則の和訳は、環境金融研究機構から引用。※2)

  1. Alignment(適合):われわれは、SDGsやパリ協定、それらに対応する各国・地域のフレームワークなどで表現されているような、個人のニーズと社会のゴールに整合するとともに貢献するために、われわれのビジネス戦略を適合させる。
  2.  Impact & Target Setting(影響と目標設定):われわれはネガティブな影響を減少させ、ポジティブな影響を継続的に増やしていく。そしてわれわれの活動や商品・サービスを通じて、人々や環境に及ぼすリスクを制御していく。そのために、われわれがもっとも重要な影響を発揮できる目標を設定し公表する。
  3.  Clients & Customers(顧客): われわれは顧客とともに、現在および将来の世代のために共有する繁栄を創り出す経済活動を行い、持続可能な実践を奨励することに責任をもって活動する。
  4.  Stakeholders(利害関係者): われわれは社会のゴールを達成するために、それにふさわしいステークホルダーと積極的かつ責任をもって協議し、参画し、パートナー活動を展開する。
  5.  Governance & Culture(ガバナンスと文化):われわれは、効果的なガバナンスと責任ある銀行業務の文化を通して、これらの原則に対する貢献を実行する。
  6.  Transparency & Accountability(透明性と説明責任):われわれはこれらの原則を、個別あるいは共同で実行する内容を定期的に点検するとともに、われわれの活動のポジティブな影響とネガティブな影響、および社会のゴールへの貢献について透明であり、説明責任を果たせるようにする。

 

この原則に署名した金融機関は上記の条項を遵守することが求められていますが、3メガバンク・グループの最新の統合計画書に照らすと(詳細は※3)、以下の課題があると考えられます。

  1. 統合計画書ではパリ協定の2.0℃あるいは、昨年のIPCC報告書で警鐘が鳴らされ現在主流となっている1.5℃目標と整合する目標や戦略に対する記述がない。また、CO2排出量が最も多い分野である国内外の石炭火力発電所新設に関し、MUFGはメガバンクの中で唯一、新規の石炭火力発電事業への融資を取りやめると掲げている一方で、幅広い例外規定を設ける限り新設計画に継続的に関与する可能性が高いと考えられる。プロジェクトファイナンス以外に、石炭火力発電の新規建設に関与する企業への金融サービスの提供の抑制が求められる。
  2. 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿ったリスク分析や緩和策に関しては、一部グループに物理的リスクについて限定的な言及があるが、化石燃料関連投融資の負の影響や低炭素社会への移行リスクについて具体的に触れられていない。3メガバンク・グループは、投融資ポートフォリオにおける炭素関連資産を減らすための科学的根拠に基づいた目標を設定することが求められる。
  3. 各グループはグリーン投資に関しては開示が進んでいる一方、将来の繁栄の阻害要因と言うべき化石燃料関連投融資の削減には限定的にしか触れられていない。
  4. 融資先事業に伴う現地の環境破壊や人権侵害の観点から様々な抗議活動などがあり、全ての利害関係者と充分な協議が実行されているとは考えられない。
  5. SDGsを意識した経営戦略の記述はあるが、地球温暖化対策において、実行が伴っているとは言えない。
  6. 現状では負の影響に関する充分に透明性がある開示はされていない。

 

今までも、「赤道原則」「責任投資原則」「TCFD提言」など3メガバンク・グループは、いくつかの重要な取り決めに署名をしています。それにも関わらず、以上のような状況であることを考慮すると、本原則への署名も形式に止まる懸念を持たざるを得ません。

今回の署名を機に「責任ある銀行」の精神に基づく戦略の構築と実行を通じ、将来世代に対し持続的な地球環境を残すべく貢献することを強く望みます。」

なお、PRBの発足を受け、22日に国内外市民団体による共同声明が発表されました(※4)。また、9月23日に米ニューヨーク市のBNPパリバ本店で国連責任銀行原則の公式発表イベントが開催され、(※5)イベント開始直前の午前9時(現地時間)から3メガバンク・グループを含めPRB加盟銀行に対して、「グリーンウォッシュは受け入れられない」と呼びかける(※6)市民団体によるアクションが行われました。

 


 

※1:メガバンクにSDGsとパリ協定迫る「責任銀行原則」(オルタナ記事)
※2:国連の「責任銀行原則(PRB)」正式発足。49カ国から130の銀行が署名。日本も3メガバンクなど4銀行。SDGsの達成と、気候変動対応の共同行動を目指す(RIEF
※3:メガバンク・グループ3社等に対する具体的な気候変動対策への要請とその回答を発表
※4:国内外市民団体による共同声明はこちら
英文:https://www.ran.org/wp-content/uploads/2019/09/Joint_Statement_Principles_for_Responsible_Banking.pdf
和文:http://japan.ran.org/wp-content/uploads/2019/09/Joint_Statement_Principles_for_Responsible_Banking_JPN.pdf 
※5:https://www.unepfi.org/events/banking-events/prb-public-launch/
※6:Rainforest Action NetworkのTwitter 

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本件に関するお問い合わせ先:

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