総合レポート 2017

350.org事務局長より:

皆さま

世界中の皆様からのご支援とご協力のおかげで、2017年も350.orgは気候変動の解決に向け、本当に多くの成果を生むことができました。世界各地から届いたこれら成功のストーリーを皆様にもお伝えしたく、ここにまとめましたので、ぜひご一読ください。

設立当初より、350.orgが一貫して掲げてきた目標。それは「気候をめぐる議論に打ち勝ち、速やかな政策転換を促すことのできるムーブメントを築くこと」です。 その目標のもと、わたしたちは一致団結し、気候ムーブメントという一つの潮流を作り出しました。それが今、巨大な波へと生まれ変わるのを肌で感じています。特に2017年は、この大きく立ち上がろうとする波に乗り、さまざまな計画を実行に移したり、新たな仲間をつくり協力関係を結ぶことで、ネットワークを広げてきました。また主要国では、戦略的能力を高めることにも力を尽くしました。

さらに、多種多様なグループと信頼関係を構築、相手に直接訴えかけるアクションやキャンペーンを展開し、その要求が聞き届けられるまで手を緩めたりはしませんでした。ドイツでは2017年、市民団体「Ende Gelände(これでおしまいという意味)」による活動を支援、同国最大規模の炭鉱の操業を、数千人がかりで1日停止に追い込みました。 また他団体と連携し、欧州の投資大手を対象としたキャンペーンにも取り組みました。そして2017年、数十億ユーロ規模のフランスの公的金融機関「預金供託公庫(Caisse des Dépôts Group)」を化石燃料投資から撤退(ダイベスト)させることに成功したのです。

さらに大規模キャンペーン開催時には、考えや戦略的アプローチの異なる人々が力を合わせ取り組めるよう、多数のパートナー団体にも参加を呼びかけています。 例えば2017年には、画期的な気候政策を求める市民行進「ピープルズ・クライメート・マーチ」や、キーストーンXLパイプライン建設反対運動「Promise to Protect(必ず守るという意味)」 、ブラジルの反フラッキング運動、東アジアの石炭生産削減に向けた新たな地域運動などが行われました。

そして2017年も引き続き、地域で活動する優秀な人材の発掘にも力を入れました。彼らは、気候ムーブメントを展開する様々な組織から、厚い信頼を寄せられているため、内部関係者を動かすほどの影響力も発揮しています。 彼らの存在のおかげで、350.orgは部外者であるとか、内部関係者であるとかいう偏見を持たれることがありません。だからこそ、速やかにかつ力強く取り組みを前進させることができるのです。

350.org独自のアプローチは、ジャーナル「 Organization and Environment(組織と環境)」に、次のように取り上げられています。 「画期的なアイデアに突き動かされた彼ら(350.org)のおかげで、リベラルなアイデア(炭素税、キャップ・アンド・トレード、自然エネルギーへの助成金など)は、 今や議論の的となっている。 少なくとも一部では、保守的思考がまかり通ることはなくなった。 ダイベストメントという画期的な発想のおかげで、米国では再び、気候変動問題の解決を目指す代替案が息を吹き返したのだ(それ以前は、気候変動対策を“やる”か“やらない”かの二者択一的な議論だった)」。

「再生可能エネルギー100%の実現」と「化石燃料を地中から掘り起こさない」という方針を掲げ、取り組んできましたが、今や関係者の多くが、「再エネ100%」を一緒に求めるようになったのです。 今後はさらに、経済専門家の注目が集まりはじめている、「化石燃料プロジェクトの打ち切り」と「石油・石炭・天然ガスへの資金提供打ち切り」にもより多くの賛同が得られるよう、取り組んでいきます。 これらの要請は、2016年12月のマクロン金融サミットに提出されましたが、今度はこれを世界各都市・各自治体にも提出した上で、2018年9月に開催のグローバル気候行動サミットにも提出します。

こうした活動すべてに対してご支援いただいた皆様に、心からの感謝の気持ちで一杯です。引き続き手を取り合い、気候ムーブメントの未来を共に築いていけることを楽しみにしています。そして、ここのムーブメントをいっそう大きく育て、化石燃料ゼロを目指す闘いの次なる波を起こしていきましょう。

感謝の気持ちと決意の思いを胸に

signature of May Boeve
May Boeve, 事務局長

アクション+キャンペーン

米国における政策転換のチャンスをつかむ

ピープルズ・クライメート・マーチ

350.orgは100以上のパートナー団体と連携し、2017年の「ピープルズ・クライメート・マーチ」開催しました。この大規模マーチを通じ、公正な気候対策と雇用、また時代錯誤なトランプ政権の政策に対し抗議するよう、米国各地で支援を求めました。

何ヶ月にもわたる組織づくりやパートナー団体との連携が奏功し、2017年4月29日、首都ワシントンDCではおよそ20万人もの人々がマーチに参加。あらゆる分野の垣根を超え、トランプ政権を抵抗する新たなムーブメントをつくり出し、「万人のための自然エネルギー経済」というビジョンを前進させる意思表示をしたのです。 それだけにとどまらず、米国各地でも370の姉妹マーチが開催され、累計数十万人もの市民が参加する一大ムーブメントとなりました。 「ピープルズ・クライメート・マーチ」には、最前線で闘うたくさんの団体も参加しました。350.orgは、ソーシャルメディアを通じて彼らの取り組みに注目を集めただけでなく、資金援助を行うなど、活動支援も行いました。

化石燃料産業を支援するトランプ政策に反撃

ドナルド・トランプ大統領による化石燃料産業への手厚い支援策に対する抵抗運動においても、350.orgはその最前線で取り組み続けています。 トランプ大統領就任から間もない2016年1月、エクソンモービル前CEOのレックス・ティラーソンが国務長官に指名されたことを受け、350.orgは大規模な抗議デモを行いました。 レックス・ティラーソンの公聴会が開かれていた米上院前には、200人以上が結集し抗議の声をあげたのです。 同じく1月、上院議員事務所において「Day Against Denial(気候変動否定論に立ち向かう日)」というアクションを実施し、トランプ大統領が閣僚に任命した化石燃料産業の手先たちに反対するよう、議員らに訴えかけました。 これらの閣僚候補者が上院で承認され、就任が決定した際には、気候変動を否定する彼らの姿勢や、化石燃料産業との緊密な関係を周知させる活動にも取り組みました。

その他にも、目先のことしか考えないトランプ政権に新たな動きがある度に、迅速に行動を起こしてきました。 トランプ大統領が米国をパリ協定から離脱させると宣言した際も、気候を守るため声を大にし、徹底的な抗議運動を展開しただけでなく、 パリ協定離脱宣言直後には、米国各地で数百ものデモを開催し、気候変動対策を地方政府からも求めるよう訴えかけました。 パートナー団体と共に取り組んだ請願キャンペーンには250万人以上が署名、気候変動対策を前進させるよう各国首脳に訴えかけました。署名はその後、2017年国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)にも提出されました。

気候変動への解決策を求めて

こうした解決策を掲げてきた350.orgは、積極的に新しいアイデアもキャンペーンに取り入れてきました。 米国では「再生可能エネルギー100%法案」実現に向け、取り組みました。 「2020年以降の化石燃料インフラの新設をゼロにする」ことを目標に含むこの法案は、米上院に提出されました。 これは、気候変動問題をめぐるもっとも画期的な法案であり、公正な気候変動対策を求める全ての組織が支援し、取り組んできた法案です。 わたしたち350.orgには、未来を破壊するトランプ政策に抵抗し、化石燃料ゼロの未来を達成する明確かつ意欲的な政策があります。 今後も引き続き、「自然エネルギー100%」と「化石燃料プロジェクトゼロ」の実現を、米国議員らに訴えかけていきます。

化石燃料開発の現場でも、問題解決を目指し取り組んでいます。 2016年6月、350.orgはパートナー団体と共に戦略を練り、「ソーラーXL(#SolarXL)キャンペーン. 」を立ち上げました。このキャンペーンは、「キーストーンXLパイプライン」の建設予定ルート上に、太陽光パネルを設置するという、再生可能エネルギーを利用した大規模な抵抗運動です。問題のルート上に自然エネルギーを設置することで、解決を目指すものです。 パートナー団体と共に、パイプラインの建設予定ルート沿いに太陽光パネルを3列配置し、これを保護する計画を立てました。 これは、単にパイプライン建設に対する反対運動というだけでなく、自然エネルギーという解決策でもって抵抗することで、ルート沿いの地域を支援し、気候を守るという壮大な闘いなのです。

気候問題への解決を求める地域の取り組み

350.orgは、米国各地で活動を展開する160の団体とネットワークを作り、活動の支援や新規キャンペーン構築の支援をしています。 これらの地域団体は「化石燃料を採掘させないこと」、そして「全ての人に自然エネルギー100%社会を届けること」を目指し、効果的な草の根運動を展開しています。 素晴らしい地域活動の事例を、いくつかご紹介します:

  • 350PDXはパートナー団体と共に、ポートランド市議会やマルトノマ群委員会において、満場一致で決議案を採択させるために重要な役割を果たしました。この決議案は、2035年までにポートランド市とマルトノマ郡の全電力を再生可能エネルギーで発電し、2050年までに全ての分野を再生可能エネルギーにすること。そして公正かつ地域に根ざした再エネ開発に、優先的に取り組むことをうたっています。
  • 350 Triangle, はノースカロライナ州を拠点に、同州内の2つの郡に対し再生可能エネルギー100%を掲げる決議案を採択するよう促し、さらにダーラム市とローリー市に対し、化石燃料ゼロ決議案を採択するよう働きかけています。
  • MN 350 は数年にわたりキャンペーンを展開、その活動が奏功し、 米大手銀行USバンクは、パイプライン大手エンブリッジへの投資引き上げを決定しました。さらにミネソタ州商務省は、エンブリッジ社による「ライン3パイプライン(“Line 3”というパイプライン新設系弱)」に反対の立場を表明したのです。
  • 350 New Mexico は、2040年までに再生可能エネルギーによる発電を8割増量させることを掲げる法案「SB132」の起草、ならびに提出にも協力しました。 ニューメキシコ州知事戦では、有力候補がこの法案に注目しており、選挙キャンペーンの看板政策に掲げる予定です。
  • ロサンゼルス周辺で活動を展開する、South Bay Los Angeles 350(ロサンゼルス南部沿岸地域)、, 350 Conejo(コネホ・バレー地域)、, Ventura Climate Action Hub 350(加州ベンチューラ郡), SoCal 350Long Beach 350(加州ロングビーチ) をはじめとした350グループは、ロサンゼルス郡のエネルギープログラム「Community Choice Energy」の拡大を支援。地方自治体が、発電事業者から直接電力を調達できるこの制度が拡大されたことで、各自治体は自然エネルギー100%目標の達成に向け、歩を進めることが可能になりました。

350地域グループへの参加もしくは立ち上げにご関心のある方は:

ぜひご参加を!

化石燃料開発に抵抗する

Tar Sands

エナジー・イースト&キンダー・モルガン

1日あたり110万バレルものオイルサンド(油砂)の輸送が可能となる、過去最大規模のパイプライン 「エナジー・イースト」 の建設計画は、数年がかりの抵抗運動が実を結び、公式に白紙撤回されることになりました。

この際、カナダの350チームは、多くの先住民や建設予定地のパートナー団体と共にとても重要な役割を担いました。 350チームは2016年5月、化石燃料産業への抵抗運動を続ける太平洋諸島の活動家団体「Pacific Climate Warriors(太平洋の気候戦士)」を、カナダのパイプライン建設予定地に招き、カナダの先住民と結束してこの問題に取り組む連携体制を、生み出しました。 カナダでの抗議運動の様子を収めた350の動画 は、全世界で50万回以上の再生回数を記録しました。 エナジー・イーストの計画をストップさせ、今後は、カナダのブリティッシュコロンビア州に建設予定のキンダー・モルガン・パイプラインに対する反対運動を展開していく予定です。 このパイプライン計画に関しては、すでに数千件もの反対意見を提出しただけでなく、2016年11月には、カヤックティビスト(海上からカヤックで抗議運動を繰り広げる活動家)100名以上が、バンクーバーにあるパイプライン用の輸出ターミナルを閉鎖させました。パイプライン建設には反対運動が不回避であることを、キンダー・モルガン社に突きつけたのです。

キーストーンXL

一度は白紙撤回された「キーストーンXLパイプライン」建設計画を、トランプ大統領は再び議題に戻したのです。それに伴い、350.orgも建設計画中止に向けて再び闘っています。

2017年8月、ネブラスカ州におけるパイプライン建設の可否をめぐる公聴会に先駆け、350.orgは最終決定権をもつ同州の公共事業委員会に対し圧力をかけました。 ネブラスカ州の州都リンカーンでは、200人規模の反対集会の開催を支援した上で、反対コメント50万件以上をパートナー団体と共に提出しましたが、 2017年11月20日、僅差で賛成票が3分の2を上回り、公共事業委員会は建設を承認しました。ただし、建設を担うトランスカナダ社の希望とは異なるルートでの承認だったため、ぎりぎりのところで キーストーンXL計画の進行を妨げる、戦略的チャンスにめぐまれました。 先住民のパートナー団体主導による建設反対キャンペーン「Promise to Protect」には2万人以上が参加し、今後必要であれば、建設予定ルート上での抗議集会やそれに向けた戦略会議に参加すると約束しました。 いつの日か、最前線で繰り広げられるこの抵抗運動が実を結び、パイプライン建設は必ず阻止されるはずです。

勝ち目がないと言われても、米国各地ではごく普通の市民が立ち上がり、大規模な化石燃料プロジェクトに立ち向かっているのです。 ますます広がる化石燃料反対運動が、今米国のどこで起きているか、こちらの地図からもご覧いただけます。.

フラッキング(水圧破砕法)&天然ガス

350 Brazilは、「フラッキングに反対する中南米連合(COESUS、Latin American Coalition Against Fracking)」と共に、350以上の自治体でフラッキング禁止を実現しただけでなく、75都市で今も禁止を目指し活動中です。 フラッキング禁止を決定した自治体数は2016年と比較し5割も増加し、2015年のわずか51自治体から飛躍的に上昇しました!

2017年だけでも、わたしたちは反フラッキング会議を900回以上も開催、さらに化石燃料産業への抵抗戦略トレーニングを、ブラジルの100以上の団体に提供しました。 これらに加え、ブラジルの別の州でもフラッキング禁止を実現し、さらには土地競売会場でフラッキングに対する抗議アクションを開催することで、ますますフラッキング禁止の機運を高めました。 さらにブラジルでは350のネットワークを駆使し、気候変動や化石燃料生産に多大な影響をもたらす農業分野の改革も進めています。

フラッキング禁止を勝ち取ったのは 、ブラジルだけではありません。 ウルグアイでも2016年12月、350 Latin America、ならびに「フラッキングに反対する中南米連合」が、共同でフラッキングに反対するマーチを開催しました。 その2日後、ペトレル・エナジー(Petrel Energy)社は、ウルグアイの街、パロマスで計画していたフラッキング関連の作業中止を表明しました。 そしてそのわずか1週間後には、今度はウルグアイ上院が4年間のフラッキング停止を全会一致で可決したのです! これは、「化石燃料を地中から採掘させない」中南米の取り組みにおいてとても重要な一歩でした。

欧州では、フランス政府がフランスおよびフランス領での化石燃料、ならびに天然ガス採掘の凍結 を目指す法案を可決させました。 非常に画期的な先例を打ち出したとはいえ、まだまだ野心的というには程遠い政策です。なぜならこの政策では、石油および天然ガス採掘を引き続き25年間も継続することが可能だからです。 今後も350チームは、この法律がさらに強化され、石油と天然ガス以外の化石燃料にも適用されるよう取り組んでいきます。

Coal

世界中の多くの地域において、今なおもっとも使用されている化石燃料は、石炭です。汚染度の高いこの化石燃料が、これ以上地上に掘り起こされることのないよう、350.orgは尽力してきました。 350のアフリカチームは、新しい画期的なキャンペーン 「deCOALonise Africa(アフリカの脱石炭&脱植民地化)」を立ち上げました。

現在アフリカ大陸各地を搾取する化石燃料産業の振る舞いが、植民地という過去を思い起こさせることから、decolonise(植民地からの独立)にcoal(石炭)を掛け合わせた造語をキャンペーンに名付けたのです。 350.orgはパートナー団体と共にキャンペーンを開始し、既存の石炭開発反対運動を支援した上で、新たな反対運動の立ち上げもサポートしました。 この取り組みがスタートした2016年11月以来、アフリカの4カ国では8つのキャンペーンが展開中です。

石炭産業との闘いの中では、悪戦苦闘の末、手にした勝利もあります。 トルコでは、石炭火力発電所3基を運転停止に追い込みました。 イズデミール(Izdemir)石炭火力発電所の環境影響評価を無効としたトルコの裁判所判断により、発電容量350メガワットのこの発電所は、長期間にわたり閉鎖されることになったのです。 また同じくトルコのアリアガ地区でも、2つの石炭プロジェクトに対する地元の強力な反対運動を支援た結果、両プロジェクトとも計画先送りもしくは中止となりました! トルコが石炭依存に終止符を打ったわけではありませんが、これらの動きは脱石炭に向けた重要な一歩です。

アジア各地においても、石炭産業への反対運動を展開しています。さらなるエネルギー源が必要とされるアジア各国において、石炭を地中から採掘させないことは、とりわけ重要なテーマです。 台湾第2の都市、台中では、石炭をはじめとした化石燃料由来の大気汚染に抗議し、およそ5,000人もの人々が街頭で対策を求めました。 インドネシアでは、チレボン県、ならびにインドラマユ県の巨大石炭火力発電所を筆頭に、多数の建設計画への住民の反対運動を支援しています。 350.org事務局長のメイ・ブーヴィは現地で活動する350チームを訪れ、石炭による汚染の影響を目の当たりにしました。

東南アジアでも、石炭に対する反対運動への支援強化に取り組みました。 2017年1月、世界中の人々と一致団結し、バングラデシュにある世界最大のマングローブ群生地帯、シュンドルボン周辺に建設予定のランパル石炭火力発電所への反対運動を支援しました。 主催者によると、5年間にわたるこの反対運動には、およそ4,000人の人々が連携を表明したそうです。 発電所が建設されると、巨大な輸送船がマングローブ林のすぐそばを航行するため、微妙なバランスで成り立つ生態系や絶滅が危惧される生物種に脅威をもたらす恐れがあります。 そのため350.orgは、ユネスコの世界遺産に登録されたこのマングローブ林が直面する脅威について a video 動画を作成し、配信しています。

350と緊密な協力関係にある独立組織350.org Australiaは、インドの複合企業アダニ・グループによるオーストラリア史上最大規模の炭鉱開発計画に対し、反対運動を展開してきました。 350.org Australiaチームがオーストラリア各地を訪れるなど、戦略的にこの炭鉱開発反対キャンペーンを展開したことで、のべ4,000人が参加しただけでなく、その様子をライブ配信で4,000人が視聴し、大きな注目を集めました。 これらの取り組みを通じ、チームは炭鉱開発計画への承認や資金提供を白紙撤回させることに成功したのです。 例えば、世界的な銀行大手28行がアダニ・グループへの資金提供を白紙撤回、炭鉱開発を手がける予定だった主要建設事業者も手を引き、さらには地元政府をも炭鉱への10億ドルの融資を取りやめたのです。 アダニ・グループの炭鉱開発を阻止できたということは、今後60年間にわたり毎年60メガトン採掘される予定だった石炭が、そのまま地中に残されるということを意味します。つまり、この開発中止はオーストラリアだけでなく全世界にとって重要な出来事となったのです!

化石燃料産業の影響力を低下させる

投資撤退(ダイベストメント)

2017年、「ダイベストメント(化石燃料関連企業への投資を引き上げること)」は、世界の主流へと押し上げられた歴史的な1年となりました。 ごく一部の大学の学生たちの間で始まったこのムーブメントは、いつの間にか世界を席巻する現象へと、大きく変化を遂げたのです。

2017年5月5日から13日にかけ、350.orgが展開したキャンペーン「グローバル・ダイベストメント運動」 には、世界45カ国270以上の地域において活動家らがダイベストメントを呼びかけただけでなく、本当に多くの市民が参加しました。 これらのアクションは、ダイベストメント運動だけでなく、化石燃料の開発現場で起きている反対運動への注目度を高めました。結果、世界的に広がる大きなムーブメントへと拡大しつつあるのです。 2017年には、40以上の宗教団体や南アフリカのケープタウン、そしてアイルランドも含む128の国や自治体政府、組織がダイベストメント宣言を行いました。 これにより、運営資産のうち6兆米ドルが化石燃料関連企業から引き上げられることになったのです!

5年以上にわたって独自のキャンペーンで人々を動かしてきた気候ムーブメントに押され、ニューヨーク市やニューヨーク州の年金基金は、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料企業からダイベストすることを表明しました。 ニューヨーク市はされにもう一歩踏み込み、大手化石燃料企業を相手に訴訟を起こす という手段にまで出たのです。 これは本当に大きな成果です。 ニューヨーク市およびニューヨーク州の年金基金を合わせると、引き上げ予定の投資額は3,900億米ドルに相応し、世界最大規模のダイベストメントが行われることになります。 この決断が表明されたのは、5,000人規模の市民マーチ「#Sandy5」開催からわずか数カ月後のことでした。壊滅的な被害をもたらした超大型ハリケーン「サンディ」から5年目を迎えるにあたり開催されたこのマーチでは、ニューヨーク市と州の年金基金に対し、ダイベストメントを求めていました。 この勝利は、ニューヨークにおける草の根運動、そしてパートナー団体との長年にわたるキャンペーン運動に確かな影響力があることの証です。

さまざまな国や地域の状況を踏まえ、わたしたち350.orgは常に創意工夫あふれるダイベストメント戦略を展開してきました。 日本では、「My Bank My Future」キャンペーンを通じ、銀行や金融機関にダイベストメントを促しています。 2017年9月、日本の銀行大手7行に、ダイベストメントを求める草の根運動について知ってもらおうと、これらの銀行に口座をもつ個人1,000人以上の署名を、各銀行に提出しました。 このキャンペーンを通じ銀行に要請したのは、化石燃料および原発関連の投融資について情報開示すること、パリ協定で合意された気温上昇を1.5℃から2℃未満に抑える目標への支援を表明すること、そして化石燃料と原発関連への投資を引き上げることです。 キャンペーンへの注目を集めるため、日本チームが作成したクリエイティブな動画をご覧いただけます。 to garner support for the campaign.

化石燃料への投融資をゼロに

この5年間、世界中に広がるダイベストメント運動は、主に機関投資家に向けて、気候変動によるリスクや化石燃料をめぐる問題の周知に力を入れてきました。 気候ムーブメントが追い風となり、化石燃料への投融資ゼロを世界中に広げようと取り組んでおり、化石燃料ダイベストメントは、今や相当数の世界主要機関の最重要項目の一つになっています。

この気候ムーブメントを動かすのは、「化石燃料投融資をゼロにする」という戦略です。計画段階では、パイプラインへの貸付凍結を求め銀行に圧力をかけたり、化石燃料インフラへの引き受けを行わないよう、保険会社に要請したり。また、地方自治体に化石燃料企業に投融資する金融機関の利用を停止するよう、訴えかけたりしています。 また、複数の特定プロジェクトへの投融資中止も求め活動しています。例えば、欧州の 「アドリア海横断パイプライン(Trans Adriatic Pipeline)</a、南アフリカの「タバメシ(Thabametsi)石炭火力発電所」、バングラデシュの「ランパル(Rampal)石炭火力発電所」などの計画です。 一方、投資界を対象

に、化石燃料投融資をめぐる問題の周知にも取り組んでいます。2017年12月12日、欧州で開催された財務大臣会合に合わせ、 350.orgはパリのパンテオンで数百人規模のデモを開催、化石燃料産業には「もう一銭も出さない」よう皆で求めました。 マクロン仏大統領主催による気候のための首脳級会合「ワン・プラネット・サミット」のため、各国首脳が一堂に会するパリで行われたこのデモには、500人以上が参加、 気候変動対策への出資に向けた本格的な取り組みを約束するだけでなく、化石燃料産業への支援を打ち切るよう求めました。 同日、欧州投資銀行は、アドリア海横断パイプラインへの15億ユーロにも上る巨額融資を再度先送りすると表明したのです。 350.orgは、引き続き化石燃料プロジェクトへの投融資を行う機関に対し、揺るぎない姿勢で立ち向かっていきます。

エクソンもシェルも知っていた(#ExxonKnew & #ShellKnew)

350.orgは、影響力をもつ化石燃料産業に立ち向かう強力なキャンペーン も継続しています。 化石燃料が気候に与える影響を知りながら、その事実を長年にわたり隠し続けてきた、ExxonMobil社(エクソンモービル社)。証拠文書でも裏付けられたこの不祥事を、なんとか握りつぶそうとした同社ですが、気候変動問題をめぐる情報開示を求める機運はますます高まる一方です。

マサチューセッツ州の裁判所はエクソンに対し、同州司法長官の捜査に従い、過去40年以上にわたる内部資料の提出を求めました。 また、ニューヨーク州の司法長官もエクソンに対する追求を強化、さらに全米各都市が石油大手エクソンに対する訴訟準備を進めています。

さて私たち350.orgは、エクソンによるこの隠蔽事件を追求するにあたり、もちろん創意工夫も忘れてはいません! 南極では2017年7月、気温上昇が原因で米国のデラウェア州ほどもある棚氷が海に向かって崩壊しました。 これを受け署名キャンペーンを開始 し、棚氷の崩壊により形成された氷山を「Exxon Knew 1(エクソンは知っていた第一号)」と命名するよう南極地名委員会に求めました。気候変動の事実を隠蔽し、世間を欺いてきたエクソンの責任を明らかにするためです。 「Exxon Knew 1(エクソンは知っていた第一号)」の命名を求める署名キャンペーンには1万人が参加、これによって数十年にわたるエクソンの隠蔽に世間の注目を集めることができました。

新たな調査 により、Shell(シェル)もまた、何年も前から気候変動について知っていた(#Shellknew)にも関わらず、その事実を隠蔽してきたことが明らかになりました。2017年2月、オランダの都市フローニンゲン北部におけるシェールガス採掘に対し5,000人の人々が街頭から反対の声をあげ、同国史上最大規模の抗議運動となりました。 かつては、めったに起きなかった地震がフローニンゲンで頻発するようになったのは、シェールガス採掘と関連があるのではないかと指摘されています。 若者をはじめとしたあらゆる年齢の人々が街の中心を練り歩き、この地域におけるシェールガス開発を打ち切るよう求めました。さらに、ガス採掘が誘発した地震による家屋の損傷について、賠償するようにシェルとエクソンに要請。またオランダ政府には、ガス産業との関係を断ち切った上で、化石燃料から手を引き、再生可能エネルギー100%への移行を急ピッチで進めるよう促しました。 化石燃料産業による隠蔽を暴露し、その社会的信頼を失墜させるこれらの取り組みは成果を生み、再生可能エネルギー100%という皆のための未来を実現できるよう動き始めたのです。

actions

声をあげよう:気候変動に立ち向かう太平洋の戦士たちがアクションを求める

毎年行われる気候変動に関する国際交渉の場は、市民運動と連携して各国首脳に画期的な気候対策を促すだけでなく、最前線で闘う地域の取り組みを強化するチャンスのため、350.orgにとっても重要なイベントと位置付けています。 2016年11月、ドイツのボンで開催されたCO23の議長国を務めたのはフィジーでした。350.orgは、太平洋諸島のスタッフや気候変動に立ち向かう太平洋の戦士たちと緊密に連携し、太平洋諸島の現状をめぐるパワフルなストーリーを紡ぎ出したことにより、気候変動に野心的な対策を求めるうねりが生まれていきました。 わたしたちは、キャンペーン「Have Your Sei(声をあげよう)」を立ち上げ、「気候変動に立ち向かう太平洋の戦士宣言」への署名を呼びかけました。 この宣言を通じ、戦士たちは気候変動が太平洋地域に影響をもたらしていること、それに対し何も対策を講じなければ、その脅威がいっそう深刻化することを強く訴えています。 今、地球上で生きている世代だけでなく将来世代のためにも、より良い公正な世界を築くよう、各国首脳に訴えかけました。 太平洋において重要な影響力をもつラグビー選手やトンガ王室からの支援もありました。さらに、気候戦士15名をCOP23に招待し、交渉期間中に25のイベントを開催。また、画期的な気候対策を求める請願書に集まった2万3,000筆の署名を、各国代表団に提出しました。 ソーシャルメディアで1,780万回も閲覧されたこの「Have Your Sei」キャンペーンは、ドイツのイブニングニュースでも取り上げられたことで、世界中の多くの人々に届けられることになりました。

米国市民による代表団: COP23における草の根運動

気候変動対策へのリーダーシップが完全に欠如したトランプ政権に代わり、350.orgが米国市民による代表団を 派遣し、気候変動に立ち向かう米国各地の活動や、そこに暮らす人々の声を国際会議の場で伝えました。 代表団のメンバーには、化石燃料プロジェクトの現場で反対活動を行う地域住民や先住民、非白人、若者、政策立案者などが含まれます。彼らは皆、パリ協定を離脱し、気候対策にますます後ろ向きな米政府に代わり、市や州をはじめとした自治体に気候変動対策を推し進めているのです。代表団は、米国のすべての都市と州に対し、「再生可能エネルギー100%」という公平かつ公正な社会実現を求めた上で、野心的な気候変動対策を講じるよう政治家に行動を呼びかけました。 代表団には、11の草の根組織から40名の活動家が参加しました。 代表団一行は一致団結し、米国を拠点とするさまざまなコミュニティにとって本当に必要なことは何かを訴えた上で、トランプ政権の公式派遣団が、化石燃料産業と緊密な関係にあることを指摘し見事に反撃!会議開幕から閉幕に至るまで、気候変動対策への機運を高め続けたのです。 会議中には、米国各地の様々な取り組みを紹介するイベントを2回開催し、「気候変動問題解決を重視した政策実現が、なぜ急務であるか?」を、世界のリーダーたちに訴えました。開催したイベント内容は、下記の通りです:

  • 米国の議員、ならびに市の代表者10名と気候変動問題をめぐる責任について徹底した議論を交わした上で、「We Are Still In(わたしたちはパリ協定から離脱しない)」キャンペーンに集まった100万筆もの署名を、気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に提出し、 米国各地の気候変動への取り組みを、力強く伝えました。
  • 米国市民による 代表団のメンバーたちは、トランプ政権が唯一主催したイベントに参加していた数百人に対し、イベントへの参加ボイコットをして退場するようアクションを起こしました。退場の際、化石燃料を支援する同政権の政策に抗議し、「We The People(われら合衆国国民は:アメリカ合衆国憲法の前文)」を歌いました。 さらに代表団は各国代表団や報道機関を前に、トランプ政権に対し化石燃料を地中から採掘しないよう要請しました。 イベント退場の様子を収めた動画は、その後ソーシャルメディアで拡散されたことで、代表団の想いは世界中の人々にいっそう力強く伝わることになりました。

市民代表団の取り組みは、ニューヨーク・タイムズ紙などの主要紙をはじめ、114の報道機関に取り上げられました。 これらに加え、代表団のソーシャルメディアの閲覧回数は4,600万回にも上り、 気候変動対策を求める声を世界中に届けることができました。 市民代表団には、下記の組織が参加しました: SustainUS、Sunrise Movement、Indigenous Environmental Network(先住民による環境ネットワーク)、Global Grassroots Justice Alliance(公正を求めるグローバル草の根同盟)、ならびにIt Takes Roots、U.S Human Rights Network(米人権ネットワーク)、Climate Generation、Our Children’s Trust、NextGen America、 350.orgからなる、Climate Justice Alliance(気候正義を求める同盟).

組織づくり+リーダーシップ育成

Photo: 350 East Asia

さらに力強い気候ムーブメントを

350の地域グループとパートナー団体

すべてを変えるには、みんなの力が必要です。 市議会や州議会への要請をはじめとした地域の対策を求める活動は、350の地域グループが担っています。 米国の350.orgには、38州で160以上の地域グループが加盟しており、また15万人以上がボランティアに登録しています。

地域グループ全てで、社会的にもインパクトのある成果を出していますが、さらに各グループが取り組むキャンペーンについて、ニュースレターや毎月行われる電話会議、研修会などを通じ相互で学び合う仕組みを作っています。 350.orgは、様々なスキルやコーチングの研修、キャンペーンに関連する情報やツールなどを提供し、地域グループと連携し取り組んでいます。 例えば、パートナー団体の「350NYC」および 350NYC and 「350 Brooklyn」 は、ニューヨークにダイベストメントを促すキャンペーン「DivestNY」を成功させる上で、大変重要な役割を担いました。

また、あまりにもひどいトランプ政権の政策をきっかけに、この1年間で新たに多くの協力関係が生まれました。 今後も引き続き、人種問題に取り組む「Color of Change」や環境保護団体「シエラクラブ」、政策決定などに携わる「Moveon」、「全米黒人地位向上協会(NAACP)」、「妊娠中絶権擁護全国連盟(NARAL)」をはじめとした、さまざまな分野で画期的な取り組みを進める活動団体と連携していきます。 共通の目標を目指す画期的なムーブメントを築く上で、これらの団体との長期的な協力関係は欠かせません。

気候ムーブメントを世界中に広めることの重要性を踏まえ、350.orgは新しいプログラムを携え、最前線の地域や気候変動問題への解決策を促すキャンペーン、その他資金が潤沢でない世界中の団体などへの支援を行っています。 2017年、環境保護に取り組む慈善団体「グローバル・グリーングランツ・ファンド」との協力のもと、世界各地で気候変動に立ち向かう23の草の根団体に23万4,000米ドルの資金提供を行いました。 これらの団体は、化石燃料プロジェクトを阻止する重要な草の根運動を展開しており、それぞれの地方自治体に「再生可能エネルギー100%の実現」を働きかけています。

トレーニング

350のグローバル・トレーニング・プログラムを通じ、各地域で活動するスタッフの組織力を高めることで、気候ムーブメントの可能性を広げ、さらに多くの活動家がより大規模で画期的なキャンペーンに取り組めるよう支援しています。 350のトレーニングを紹介するサイト では、各地域のキャンペーンチームがそれぞれの成功や失敗、また活動から学んだノウハウなどを共有できるサービスを、提供しています。

2017年、同サイトのダウンロード件数は10万回を上回り、また世界各地で150件以上のトレーニングを実施しました。 これらのトレーニングを通じ地域のリーダーシップ育成に貢献、また短期間で地域の伝統を多く学び、影響力ある運動を生み出しました。例えば、「Pacific Warrior(太平洋の戦士たち)トレーニング・プログラム」では、太平洋諸島各地の多数の先住民活動家に呼びかけ、気候変動による被害がもたされているそれぞれの地域で力を合わせ、オーストラリアの石炭産業に対する大規模抗議運動に参加するよう促しました。

引き続き、特定の地域ではトレーニングも実施していきます。 例えば、東アジア・ダイベストメント・ネットワーク(DEAN)を通じ、石炭プロジェクトに反対する草の根団体の組織力を高め、より影響力ある効果的なキャンペーンを展開できるよう、デジタルキャンペーンやストーリーテリングなどのトレーニングを提供しました。 南アジアでは、こうしたトレーニングを主催するトレーナーたちが「連携グループ」を発足しており、350.orgはその設立支援もしています。このグループはボランティアが運営しており、石炭開発に立ち向かう都市と地方の人々とをつなぎ、相互の協力関係を深めることを目指しています。 欧州では、ダイベストメントや化石燃料ゼロを目指すキャンペーンのトレーニングプログラムを拡大し、キャンペーン戦略や組織力スキル向上を支援しています。

また、オンライン上で新しい対話型トレーニングを導入し始めており、現在は試験的に導入してそのインパクト評価を行なっているところです。 中南米では、主にアルゼンチンおよびブラジルでのネットワークづくりについて、追加的な支援の必要性を確認しました。 そこで、ポルトガル語と英語で11の対話型オンライントレーニングを提供し、パートナー団体やボランティアが気候変動に立ち向かう際に必要な、あらゆる分野の取り組みを強化できるよう支援しました。 これらのトレーニングは非常に大きな成功を収め、わずか1年弱で2,700回以上も使用されています。 引き続き、気候変動対策を促すムーブメントのより一層の強化を目指し、無料の対話型トレーニングを開発・提供していきます。

Cities for Life(命を守るまち)

東欧やコーカサスの多くの地域では、まだ気候変動の深刻さが理解されていません。特に、ロシア国営の石油大手ガスプロムの政治的影響力が大きいことに気が付いた350のチームは、新たな戦略でキャンペーンを展開していかなければならないと考えました。 そこで「Cities for Life(命を守るまち)」キャンペーンを立ち上げ、東欧各国の状況に合わせた活動を展開することで、気候変動への意識を高め、主要各都市で活動家らが気候変動への解決策を講じるよう、支援しました。

また350チームは、気候変動問題に関する戦略を策定するため、地方自治体と共に地域の活動家グループを設立しました。 さらに5カ国15都市で、行動を起こす日「アクション・デー」の開催計画を支援、アクション開催期間中は、ゴミの分別や太陽光パネルの設置、緑地整備、植樹をはじめとした気候変動関連の取り組みを公共の場で実施、街の改善を人々に促しました。 2017年10月には、若者たちを中心としたパワーシフト関連のイベントも計画し、ウクライナで行われたキャンペーン・トレーニングには、8カ国120名が参加しました。 現在チームは、気候リーダーシップ・プログラムを立ち上げ、トレーニングに参加したリーダーたちのスキルをさらに高め、気候にやさしい解決策を後押ししています。 350.orgは、言論の自由が制限されている地域でもムーブメントを生み出し、さらなる変化を起こすべく活動家のスキルアップを行なっています。

活動家のプロフィール

Walid Ahmed Ali

Walid Ahmed Ali

350.orgは、現地のパートナーやボランティアの協力なしに、気候変動と闘う重要な活動を行うことはできません。それは、ケニアをはじめとしたアフリカ各国でも同じです。 問題解決に向けた活動を少しでも前進させ、その影響力を最大限にするためにパートナーと緊密に連携をとり、彼らの取り組みをサポートしています。 ほんの一例ですが、ケニアの活動家をここでご紹介します。

ケニアのラム島の活動家、ワリード・アフメド・アリ(Walid Ahmed Ali)は、deCOALonise.africa 石炭プロジェクトに対する反対運動「deCOALonise.africa(アフリカの脱植民地&脱化石燃料)」のもっとも力強い味方です。 ワリードが活動する草の根運動団体「セーブ・ラム」は、ラム島の環境、社会、文化全体に影響を及ぼす意思決定に、地域の人々の声が反映されるよう取り組んでいます。 また、地域の若者たちのリーダーシップを養い、社会正義やジェンダー平等の社会実現を目指す団体「ラム・ユース・アライアンス」の創設者でもあります。 この地域でCO2排出量を増加させる恐れのあった、ラム石炭火力発電所建設計画を撤回させる上で、ワリードと「セーブ・ラム」は、なくてはならない存在でした。

ラムで生まれ育ったワリードは、ラム島を守り抜くことに情熱を捧げ、全身全霊で取り組みました。 なぜそんなに一生懸命なのかと聞かれると、こう答えます。「僕たちはすでに気候変動の影響を、真正面から受けている。それに一番大切なのは、石炭による汚染のせいで、この島の豊かな生態系が破壊され、何千もの生き物たちの死滅を阻止することなんだ。」

350の活動にとって、ワリードは大切な草の根パートナーです。 彼は350のキャンペーン「deCOAlonise.africa」の動画 にも出演し、ラム石炭火力発電所に反対する地域の人々に語りかけています。 石炭プロジェクトへの抵抗運動を強化するため、350.orgがラム島の人々に話を聞いたり、様々な地域の指導者へインタビューを実施する際のサポートをしてくれたのも、ワリードでした。 そんなワリードは、350 Africaの広報担当兼「deCOAlonise」ムーブメントの地域リーダーでもあります。 また2016年10月、ケニアの首都ナイロビで「deCOALonise」の写真展が開催された際、活動家の一人として紹介されました。 この写真展には、政府高官やアーティストをはじめとした大勢の人々が集まり、石炭反対の機運を高めました。 その豊富な政策提言スキルや草の根運動の経験から、ワリードは環境保護や社会正義のために取り組む活動家たちの間でも、高く評価されています。

350.org sub-Sahara(サハラ以南)のフィールドオーガナイザーであるプリンス・パパ(Prince Papa)によると、「脱石炭キャンペーンに関連する緊急要請があれば、必ずワリードがやってくれる。 見返りなど求めず、彼はただひたすら、地域の人々に奮起を促している。 彼にとって、ラムの人々や地域以上に愛せるものなんてあるのだろうかって思うんだ。」

2018年1月、ワリードは3日間かけて行われる350 Kenyaチームの研修会に参加する予定です。この研修会では、ケニアにおける石炭開発に対する反対運動の足並みを揃え、さらに影響力を高めることを目指します。 アフリカの「deCOALanise」計画を実行に移す際にも、ワリードの存在は重要でした。

気候運動のまとめ役を担う彼には、大きな影響力があります。 350.orgが頼りにするのは、地域における活動指針を示してくれる、ワリードをはじめとした大勢の個人や草の根活動家のリーダシップです。 350.orgは、これら地域のリーダーたちのそばで取り組み、研修を行い、運動を促していけることに、心からの感謝の気持ちで一杯です。 ワリード・アフメド・アリ、ならびに世界中のボランティア活動家の方々、パートナーの方々、サポーターの方々、本当にありがとうございます!

収支報告

Photo: Zenzel Photographie

2017年収支報告

2017年収益

7528814,9234143,78294
2017 2016
45% 助成金および財団 $7,528,814 $7,314,102
55% 個人の寄付 $9,234,143 $6,383,426
0% その他の収入 $78,294 $111,825
合計 $16,841,251 $13,809,353

2017年支出

10462347,1955557,490882
2017 2016
81% プログラム事業 $10,462,347 $9,129,553
15% 管理全般 $1,955,557 $1,180,945
4% 資金調達 $490,882 $345,315
合計 $12,908,786 $10,655,813

資産と負債と純資産

2017 2016
資産 $12,387,561 $8,034,303
負債 $1,137,924 $717,131
純資産 $11,249,637 $7,317,172

純資産内訳

2017 2016
無拘束純資産 $10,240,799 $5,944,370
一時拘束純資産 $1,008,838 $1,372,802
純資産 $11,249,637 $7,317,172

サポート基盤:

2017年会計年度における350.orgの活動は、個人の皆さまからの寄付に加えて、下記の財団にご支援を頂きました。

  • Aaron Rashti Family Foundation
  • The Abelow Family Foundation
  • Ad Hoc Foundation
  • Adirondack Foundation - Sonneborn Adirondack Fund
  • Alper Family Foundation
  • The Andrew J. and Anita G. Frankel Family Foundation
  • Angel Fund of the Whatcom Community Foundation
  • Angerman Foundation
  • Ann and Gordon Getty Foundation
  • Arete Foundation
  • Arkay Foundation
  • Arntz Family Foundation
  • Ashurst Foundation
  • Asis Foundation
  • Beardsley Family Foundation
  • BDH Foundation
  • BLT Charitable Trust
  • Borrego Foundation
  • The Boston Foundation
  • Brent Family Foundation
  • Caroline Blanton Thayer Charitable Trust
  • Casey Family Foundation
  • Ceres Charitable Foundation
  • Charles Spear Charitable Foundation
  • Christina Heroy Foundation
  • Clif Bar Family Foundation
  • Climate Ride
  • ClimateWorks
  • Community Foundation of Eastern Connecticut
  • Community Foundation of Greater Chattanooga
  • Community Foundation of Greater Memphis
  • The Community Foundation For The National Capital Region
  • Compton Foundation
  • The Corragio Fund
  • CREDO
  • Crowell Family Foundation
  • Danem Foundation
  • The Daruma Foundation at Seattle Foundation
  • Dave and Sheila Gold Foundation
  • Davis/Dauray Family Fund
  • Defense Against Thought Control Foundation
  • Denison Family Foundation
  • Donald and Susan Wilson Fund, Princeton Area Community Foundation
  • The Douglass Foundation
  • Driscoll Foundation
  • The Dudley Foundation
  • E & S Hirsch Foundation
  • Ebb Point Foundation
  • EcoEd Foundation
  • The Elizabeth Fund
  • Elizabeth R. Patterson Fund of the Marin Community Foundation
  • Elliot Badgley Foundation
  • Ellis Foundation
  • Elving-Carr Family Fund at the Boston Foundation
  • Emmons-Bradlee Family Foundation
  • ENEE Philanthropic Fund
  • Erdman Family Foundation
  • Ernest Lowenstein Foundation
  • Ettinger Foundation
  • European Climate Foundation
  • Fair Share Fund, Community Foundation of Santa Cruz County
  • Ferroggiaro Family Fund of the Tides Foundation
  • Flora Family Foundation
  • Fountain Fund of the Vermont Community Foundation
  • Franciscan Sisters of Mary
  • Frankel Family Foundation
  • Franklin H. Moore & Nancy S. Moore Foundation
  • Franklin Philanthropic Foundation
  • Fred Farkouh Fund
  • FThree Foundation
  • Gary Rosenau Foundation
  • Gienapp Family Foundation
  • Glenridge Charitable Foundation
  • Gould Family Foundation
  • Grace Jones Richardson Trust
  • Grantham Foundation
  • Gratch Family Fund, Evanston Community Foundation
  • Gualala Fund at the Boston Foundation
  • Haberman Foundation
  • Hamill Family Foundation
  • Harold K. Raisler Foundation
  • Hirschi Donor Advised Fund of the Wichita Falls Area Community Foundation
  • Hirshan Family Foundation
  • Jarvey McCord Foundation
  • The JEMP-D Foundation
  • The Jelks Family Foundation
  • Jim and Patty Rouse Charitable Foundation
  • John and Marianne Gerhart Fund of the Tides Foundation
  • Jon and Katherine Dart Family Foundation
  • Joy Foundation
  • Juan M. Cordova Foundation
  • Kane Family Foundation
  • Kendeda Fund
  • KMW Family Fund for the Common Good at Seattle Foundation
  • KR Foundation
  • Kwong Rubin Fund of the Rochester Area Community Foundation
  • Lee Family Fund of the Central New York Community Foundation
  • LEF Foundation
  • Lenfestey Family Foundation
  • LeRoss Family Foundation
  • The Libra Foundation
  • Lipton Family Foundation
  • Little Big Fund of the Rockefeller Family Fund
  • Living Springs Foundation
  • LJTJ Fund
  • Louis and Anne Abrons Foundation
  • Lutz Fund
  • Madwoman Project Fund of the Charlottesville Area Community Foundation
  • Maine Community Foundation
  • Maisel Foundation
  • Mattlin Foundation
  • Maurice S. Surlow Memorial Fund of the Milwaukee Jewish Federation
  • McCutcheon Foundation
  • The Mennonite Foundation
  • Metta Fund, Community Foundation of Western Massachusetts
  • Michl Fund of The Community Foundation of Boulder County
  • The Michels Family Foundation
  • Milner Family Foundation
  • Monasse Foundation
  • Morris Family Foundation
  • Nathan Cummings Foundation
  • Neidel Family Fund of the Community Foundation for Monterey County
  • New Belgium Family Foundation
  • New Venture Fund
  • New Visions Foundation
  • New World Library
  • The New York Community Trust
  • Oak Foundation
  • Oregon Community Foundation
  • Other Peoples Pixels Fund
  • Overbrook Foundation
  • The Paul & Edith Babson Foundation
  • Park Foundation
  • Participant Productions Foundation
  • The Patriot Foundation
  • Pedersen Family Foundation
  • Pill Maharam Family Fund
  • PLUS1
  • Pond Family Foundation
  • Prospect Foundation
  • R&S Strauss Family Foundation
  • Ray and Tye Noorda Foundation
  • Reis Family Foundation
  • Reis Family Fund, The Community Foundation for Greater New Haven
  • Renaissance Charitable Foundation
  • Richard and Rachel Fund of the New Mexico Community Foundation
  • The River Foundation
  • Robert K Scripps Family Foundation
  • Rockefeller Brothers Fund
  • Room and Board Foundation
  • Rose Foundation for Communities and the Environment
  • Rubin Family Foundation
  • S.B. Foundation
  • The San Francisco Foundation
  • Schaffner Family Foundation
  • Schatz Family Foundation
  • Scherman Foundation
  • Schlingerman-Christensen Family Foundation
  • Schwabian Fund of the Long Island Community Foundation
  • Seattle Foundation
  • Second Anonymous Fund, Santa Fe Community Foundation
  • Seth MacFarlane Foundation
  • Seymour and Sylvia Rothchild Family 2004 Charitable Foundation
  • The Shifting Foundation
  • Shirley and David Allen Foundation
  • The Shirley and William Fleischer Family Foundation
  • Shlenker Block Fund, Houston Jewish Community Foundation
  • Sierra Club Foundation
  • South Mountain Company Foundation
  • Stevenson-Cannon Family Fund of The Community Foundation of Boulder County
  • The Streisand Foundation
  • Stop Global Warming Fund, Tides Foundation
  • Sturtevant Family Foundation
  • Sunny Knoll Fund of the Community Foundation for Greater Atlanta
  • Susan and Ford Schumann Foundation
  • Tarbell Family Foundation
  • Temple Family Private Foundation
  • Thanksgiving Fund
  • The Tilia Fund
  • Thomas and Nancy Florsheim Family Foundation
  • Tides Foundation
  • TomKat Foundation
  • Tortuga Foundation
  • Treeline Foundation
  • Triangle Community Foundation
  • Trubrador Foundation
  • Tudor Family Foundation
  • Twig Foundation
  • Wallace Global Fund
  • Weissman Family Foundation
  • WestWind Foundation
  • White Cedar Fund of Tides Foundation
  • William C. Bullitt Foundation
  • William Huch Fund of the Community Foundation of Sarasota County
  • Wright-Ingraham Institutue
  • Wy’east Foundation
  • Zaitlin-Nienberg Family Fund

過去の収支報告

米国連邦法に基づき、350.orgは当組織の財政に関し、年次独立監査の実施が義務付けられています。