1. 温暖化という事実
現時点で地球の平均気温は、産業革命前と比べほぼ 1℃ 上昇し、ここからさらに0.5℃の上昇は免れないとされています。
現時点で地球の平均気温は、産業革命前と比べほぼ 1℃ 上昇し、ここからさらに0.5℃の上昇は免れないとされています。
「たった1℃くらい…」その1℃が、すでに多くの人々の命を奪っています。
「1℃くらいの気温上昇なら」と思われるかもしれません。でも実は、大勢の人々にとって生死を分かつ大問題なのです。 ここ10年、観測史上もっとも暑い年間平均気温を何度も叩き出しています。
しかも気温上昇は、「ただ暑くなる」というだけの話ではありません。 気候の仕組みは複雑です。そのため、地球の平均気温がほんのわずか上昇するだけで、さまざまな危険な副作用を伴う、一大変化につながるのです。
気候変動を引き起こしているのは、他でもない私たち人間。その主な理由は、化石燃料の消費です。気温上昇と温室効果ガスの排出は、ほぼ確実に相関しています。
地球温暖化と強く関係する温室効果ガスの一つが、二酸化炭素(CO2)です。大気中のCO2 濃度は、人類が地球上に誕生して以降、275ppm* 前後を保っていました。しかし産業革命をきっかけに、人類は石炭や石油などの化石燃料を大量に消費し始め、それに伴ってCO2濃度は急上昇しました。
現在、大気中のCO2 濃度は「安全な濃度の上限値」と言われる350ppmを大きく上回る400ppmを突破しており、地球温暖化は「危険水準」へと突入しています。安全な地球環境を維持するためには、今すぐ大気中のCO2 濃度を下げる必要があります。
地球の平均気温は驚異的な速度で上昇しています。氷河期から産業革命前までの5000年間で、気温の上昇は平均で4~7℃ 程度でした。しかし、産業革命以降の短期間で、地球の平均気温は既に1℃も上昇していて、このまま人類が化石燃料を大量消費する社会を継続させると、2100年までに最大で3.2℃~5.4℃上昇すると言われています。
過去42万年のCO2 濃度変化。産業革命以降の急上昇が特徴。(資料:NASA)
97%という圧倒的多数の科学者たちは、「気候変動の原因は人間の排出する温室効果ガスにある」と指摘しています。気候変動の基礎科学に、議論の余地はありません。
2014年、ニューヨークで開催された「ピープルズ・クライメート・マーチ」に集まった科学者たち。
CarbonBriefによれば1.5°C未満に抑えるためには、2100年までの総排出量を約120Gtに制限する必要性があります。現在、毎年平均40Gtが排出されています。地中に埋まっている化石燃料埋蔵量は2,734から5,385Gtであると言われており、これは許容量の18倍から36 倍となります。
もし排出量が今後変わらない場合には、4年も経たないうちに気温上昇を1.5Cに抑えるための温室効果ガスの総排出量の上限に達してしまいます。今、私たちが劇的に排出量を減速させ始めれば、さらに数年の余裕を持つことができ、化石燃料の段階的廃止ができる可能性があります。ただし、これは新たな化石燃料採掘プロジェクトを一切行わない場合の話です。
1.5°Cの目標を達成するためには、かつて世界が経験したことがない規模の取り組みが必要なのです。
*Gt:ギガトン=10億トン
気候変動影響を示した世界地図。climatesignals.org(クライメート·シグナルズ)提供
たった1℃の気温上昇が、すでに地球全体に壊滅的な影響をもたらしています。
温暖化による自然災害の悪化はすでに起こっており、近年では熱波や洪水、干ばつ等の異常気象が世界各地で頻発しています。また、これらの自然災害による人類の生活や健康、食糧生産、水資源等や生物への悪影響も増え続けています。このまま進むと、地球温暖化は世界経済にも深刻な悪影響を及ぼすリスクがあります。
気候変動が、より多くの熱波や干ばつ・山火事を引き起こし、長引かせ、深刻化させている事実を、気候科学は私たちに突きつけています
地球の大気と海洋は、過去6500万年間のどの時代よりも、 10倍の速さで温暖化が進んでいます。 特にこの20年間は顕著で、観測史上最高気温を記録した年トップ10はすべて、1998年以降に集中しています。.
2015年、インドのマディヤ・プラデーシュ州ボパールで発生した熱波で、日射病と重度の脱水症にかかった男性を治療する医師たち。この熱波による死者数は、2300人以上。 (写真:サンジーブ・グプタ/EPA)
ほんの少しの気温上昇が、致命的な結果をもたらすのです。 人類が化石燃料を使用し始めて以来、世界の平均気温は 1℃, 上昇し、それによって熱波の発生頻度が急増しています。
この余剰熱が深刻な熱波や干ばつを引き起こし、さらには森林火災を拡大させているのです。 2015年、インドは観測史上最悪の熱波に見舞われ、死者数は2,300人を上回りました。同国で熱波が発生するのは毎年のことですが、地球温暖化によりその気温は上昇の一途を辿り、さらに多くの犠牲者を出すようになったのです。
温暖化により 、干ばつは深刻化しています。 気温が上がると、土壌から大気に放出される水分が増えるため、干ばつが起こりやすい状況が作り出されます。2015年から2016年にかけ、アフリカの東部と南部では 干ばつと気温上昇 により、3,600万人以上もの人々が飢餓に直面しました。またエチオピアでは、近年 最悪の 干ばつに見舞われました。
気温が急上昇していることを示す、もう一つの兆候は、山火事や森林火災です。2016年、極端に乾燥した冬を迎えた北米全土では、季節外れの高温が重なり、壊滅的な森林火災が発生しました。中でも、カナダのフォートマクマレー(Fort McMurray)で発生した大規模火災は 、経済にも大打撃を与え、その損失額はカナダ史上最高の35億8,000万ドルにも上ります。
地上で記録的な高温が観測される一方、大気中に閉じ込められた余剰熱の大半は、海の奥深くに蓄積されることになります。 大気中に閉じ込められた余剰熱の大半は、海の奥深くに蓄積されることになります。
1955年以来、温室効果ガスの増加に伴い、大気中に 閉じ込められた熱の90% 以上は、海洋に吸収されています。
1980年代以前 世界的なサンゴ白化現象の兆候が報告されたことはありませんでした。 過去1万年あるいはそれ以上前に遡っても、この現象は見られなかったはずです。世界規模でサンゴの白化現象が発生するようになったのは、ここ35年足らずのことです。 以来、世界各地のほぼ全てのサンゴ礁で、広範囲にわたる白化現象が報告されるようになりました。 オーストラリアのグレートバリアリーフから、インド洋のアンダマン諸島に至るまで、かつて生命に満ちあふれ、色彩豊かだったサンゴ礁は白化が進み死滅し、やがて藻類に覆われ、濁った茶色へと変色していくのです。(キャンペーン 「サンゴ死滅の犯行現場から」を詳しく見る).)
グアム出身の海洋科学者ローリー・レイムンド は、次のように述べています:
「科学となれば、自分はかなり客観的かつ論理的な方だと思います。 でも、時には冷静でいられないこともあります。水に潜り始めて50年になりますが、今日初めて、私は水中マスクをつけたまま1時間泣き続けました。美しいタモン湾のサンゴの白化現象がどれだけ進み、死滅しつつあるのかを、目の当たりにしたからです。」
サンゴ礁は 海洋生物全体のおよそ25%を支えています。 サンゴの大量死は、5億人もの人々の暮らしに打撃を与え、さらに 年間3,750億ドル相応の物品サービスも、リスクにさらされることになります。 このまま温室効果ガス排出を抑制しなければ、この数十年間で、世界中のサンゴ礁の大半を死滅させることになるでしょう。
“水温が上がれば、その体積は膨張する”という、小学校で習うとてもシンプルな科学現象です。 これに加え、北極と南極の海氷や、世界各地の氷河が溶けて海に流れ出しているため、海水面は急速に上昇しているのです。
海水面がわずかに上昇するだけで、特大の大潮(キングタイド)や高潮発生時、波はさらに内陸部奥へと押し寄せるようになり、急激な変化や被害をもたらします。海面上昇により、ツバルやマーシャル諸島をはじめとした一部の島しょ国では、高潮発生時に波が防波堤を乗り越えるようになりました。 海水が地下水に混じると、大切な作物の成長を妨げる上、真水の供給にも支障が出ます。
海面上昇による影響を受け、フィジー政府は 64の村落の住民の集団移住を始めましたが 、今後さらに、830もの村が移住の対象となる恐れがあるとされています。アラスカ州にある先住民族の村「シシュマレフ(Shishmaref )」でも、海面上昇による海岸浸食が進んだため、 投票で村全体の移住を決定しています。
現在、海面上昇は年間3〜4ミリのペースで進行していますが、毎年の変動に加え、このペースは徐々に加速しています。 もはや、海面上昇を止めることはできません。でも今この段階で、化石燃料の採取を打ち切れば、今後何世紀にもわたって、海水面の上昇ペースを抑えることができるのです。
化石燃料を地中にとどめておけば、海面上昇を50cmに抑えられるのに対し、このまま化石燃料の採取を続け、気温上昇が2℃を上回った場合、海面は10メートルもしくはそれ以上、上昇する恐れがあるのです。 世界人口の37%が沿岸部に暮らしていることを鑑みれば、非常に高いリスクです。
暴風雨や極端な豪雨は、過去にも発生しています。でも温室効果ガスによる熱が大気や海洋に加わることで、 近年の暴風雨は勢力を拡大、また以前よりも多くの水分を含むようになってきているのです。
気温が1℃上昇するたびに、大気中に含まれる水蒸気の 量は7%増加します。この25年間で、大気中の水蒸気含有率は, 4%上昇していることが衛星で測定 され、急速な気温上昇を裏付けています。
人間活動が原因となって引き起こされた気候変動の影響で、暴風雨やサイクロン、ハリケーン、台風は、かつてよりも激しい豪雨を伴い、頻発する洪水や、勢力を増した暴風・高潮を招くようになったのです。
2016年6月、パリとその周辺地域で起きた洪水の発生確率は、気候変動によって 最低でも40%、最大で90% 高まっていたことが明らかになりました。世界的に有名なルーブル美術館も休業に追い込まれ、一部収蔵品を避難させなければならないほどの大洪水だったのです。
また、同時期の2016年6月から7月にかけて中国で発生した洪水では、833人以上の犠牲者を出し、40万件を超える家屋が倒壊、600万人以上もの人々が移住を余儀なくされました。 これだけ被害を拡大させたのも、人間活動が引き起こした気候変動の影響です。
2016年9月、カリブ海では異常な高水温(これも地球温暖化が原因)が重なり、 ハリケーン「マシュー」がその威力を急速に拡大 、熱帯サイクロンやハリケーンが急速に発達する、近年の観測傾向と一致する形となりました。ハリケーン「マシュー」は、わずか36時間で熱帯低気圧から、最強の「カテゴリー5」のハリケーンへと発達し、ハイチからキューバ、バハマ、米国南東部へと北上しながら、壊滅的な被害をもたらしたのです。
化石燃料使用を続けることの代償は、あまりにも高くつきます。暴風雨やハリケーン、台風、サイクロンは勢いを増し、経済損失も人的被害もますます拡大することになるのです。 これら甚大な被害から人々を守る最善の手段は、未採掘の化石燃料を地中にとどめておくこと。
海水温も気温も上昇しているため、北極と南極の海氷や世界各地の氷河も含む、地球上に存在する“大量の氷”が海に溶け出しています。
37年前に衛星による調査が始まって以来、北極の海氷は激減しており、平均で 10年ごとに全体の3.7%が消滅しています。 現在も激動の最中にある北極地域全体では、多数の生物種(もちろん、北極グマも)の貴重な生息地や、先住民の暮らしが脅かされています。
2016年、冬を迎えた北極海では、引き続き海氷の融解 が観測されました。冬の北極海で海氷融解が観測されるのは、近現代史上初めてのことです。世界の一部では、 通常より20℃も気温が上昇しました。 冬に深刻な猛吹雪が発生するのは、極域での急速な気温上昇との関連性が極めて高いことが分かっています。 また、命に関わるほどの夏の熱波や、深刻化する洪水との関連性も指摘されています。
海水温の上昇に伴い、北極海よりも緩やかではあるものの、南極の氷床にも変化が起きています。 このままの勢いで温室効果ガスが排出された場合、地球上でもっとも多くの淡水が貯蔵されている南極では、2100年までに1メートル以上 、2500年までに15メートル以上、海水面が上昇する恐れがあります。最近の調査では、1.5℃までの気温上昇であれば、南極が海面上昇に与える影響は、ほとんどないと考えられています。ところが2℃を超えた場合、海面は少なくとも2メートルも上昇するそうです。
もし、今この段階で化石燃料の採取を中止すれば、驚くほどの違いを生むことができます。そうすれば、南極の氷床はほぼそのままの状態に保つことが可能です。反対に今行動しなければ、もはや取り返しのつかない氷床の融解が始まり、世界中の至るところで数兆ドル規模の被害を与えることになるでしょう。
氷河は気温の変化に強く影響されるため、気候変動によって 海氷の減少が始まってしまうと、元に戻すこと以前に融解を止めることすらできなくなってしまうのです。 氷河は、世界中の多くの都市に、一年中水を届けてくれる水源でもあります。
例えば、ボリビアの首都ラパスでは、昔から乾季の水供給の4分の1を 氷河の融解水に頼ってきました。けれど2016年までに氷河が急速に消滅したことで、これらのダムは、ほとんど空っぽになってしまったのです。ストックホルム環境研究所による調査 が示すとおり、氷河の減少は、急速かつ不可逆的に起きています:
ヒマラヤやアンデス、北極、ニュージーランドの南アルプスをはじめとした世界各地で起きている氷河の減少は、昔から安定した水供給を氷河に頼ってきた人々や野生生物に、甚大な被害を与えています。 氷河は微妙な気温の変化にも影響されるため、たとえ今すぐ温室効果ガスの排出を止めたとしても、やはりその多くは消滅してしまうと言われています。
「かつて世界でもっとも標高の高いスキーリゾートとして知られた、ボリビアのチャカルタヤ山にある一部の氷河は、完全に消滅しました。 また1983年から2006年にかけて、エル・アルトやラパスに水を供給してきた、トゥニ・コンドリリ両氷河は、全体面積の39%を消失、つまり年間0.24平方キロのペースで氷河融解が進行していたことになります。」
温暖化が進むと、季節のズレや生息地の分布に変化が生じ、北極と南極に向かって、比較的暖かい気候をもつ熱帯や亜熱帯地域が広がることになります。
ジカウイルスを媒介する、メスの ヒトスジシマカ 。(写真:ジェイムス・ギャザニー/CDC)
それに伴って、蚊の生息地も拡大するため、 ジカ熱やデング熱 をはじめとした、蚊の媒介する病気も増加する傾向にあります。このまま温暖化が進めば、さらなる熱帯病の拡大は避けられません。
熱帯や亜熱帯の拡大に伴い、温帯やツンドラの生態系は縮小を余儀なくされ、生息地を失ったホッキョクグマなどの生き物たちは、絶滅へと追いやられようとしています。
動物たちの移動パターンにも、変化が起きています。 例えば、この10年間で渡り鳥の移動時期は、通常よりも数週間 早まっていることが確認されています。
変化は季節にも及び、ますます予報困難となっていることから、農家は、いつ作物の種をまき収穫すべきか、頭を悩ませています。 最近の調査によると、欧州では、40年前よりも10日間早く 夏の到来を告げる兆候が見られるそうです。
極端な低温について:
例年になく寒くなったり、大雪が降ったりするたびに、気候変動懐疑派からは「温暖化は起きていない」という主張が目立ちます。 でも、それは違います。
すでに季節や気候帯、生息地に変化をもたらしつつある気候変動によって、農家は困難な状況に陥り、生物は絶滅へと追いやられているのです。 貴重な生息地や人々の暮らしを守るための最善の策。それは、化石燃料を地中にとどめておくこと。
気温上昇を1.5℃未満に抑えるためには世界のCO2排出量を2030年までに45%削減、そして2050年までに排出量を「実質ゼロ」にする必要があるとされています。そのために私たちにできることがあります。
低炭素社会を実現するためには、現在の社会全体を見直す必要があります。その一つが「お金の流れ」です。私たちのお金は、銀行や年金基金、政府の補助金で運営される公的機関や保険会社などの機関投資家の手に渡り、そこから株式や債券だけでなく、他にも多くの事業に使われています。 問題は、どんな事業や株式に投資・融資(投融資)されているかです。
実は私たちのお金が、地球温暖化を悪化させる化石燃料関連企業や、放射能汚染のリスクを抱える原発関連企業などへ流れているのです。
「ダイベストメント」とは、「インベストメント(投資)」の逆で、資金を引き揚げるという意味です。個人の預金先や投資先に化石燃料や原発に投融資していない機関を選んだり、所属先の組織に対してダイベストメントを訴えたりすることで、持続可能な社会への移行を加速させることができます。
もし、私たちのお金を含む大規模な資産を運用をする銀行・保険会社・年金基金がダイベストメントし、引き揚げた資金を持続可能な社会の実現に取り組む企業に投融資すれば、私たちの手で環境と社会に配慮した金融制度を築くことが可能です。
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