渡辺千咲 , スティーブン・スタプチンスキー、ブルームバーグ
2016年11月10日
ドナルド・トランプ氏の驚くべき大統領選勝利と、石炭生産を拡大するという早期の公約は、5年以上前の福島原発事故を原因とし、原子力エネルギーに代わるものを模索する日本への圧力を緩めることになるだろう。
東京に拠点を置くエネルギーコンサルティング、Mathyosの創業者トム・オサリバン氏はメールで、「全米で石炭や石油ガス業界に対するトランプ氏の公約が火曜日の大統領選での勝利に大きく貢献した。そのため、日本や他の主要な発展途上国による温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みの鈍化につながる可能性がある」と指摘した。
トランプ氏は気候変動を、中国が生み出したデマだと述べ地球温暖化についてのパリ協定からの撤退を誓ったと共に、最も汚れた化石燃料である石炭の生産を増やすことを誓った。
仮にトランプ政権がパリ協定を否定した場合、日本政府は排出を削減し、石炭拡大計画を終了するという確約に対する「圧力が緩和した」と受け止める可能性があると、グリーンピース・ジャパンのエネルギー活動家、ケンドラ・ウルリッチ氏がメールで伝えた。
日本の石炭依存は、特に福島原発事故以来、地球温暖化と戦うための取り組みが十分ではないとして海外から批判が高まっている。 外国における石炭事業に対する日本の資金供給も非難の対象となっている。
京都に拠点を置く環境団体の気候ネットワークが集めたデータによると、日本は石炭火力発電所を新規に48基建てる計画をしている。その合計発電容量は23ギガワットだ。
「日本は転換期にあります」と、350.orgの日本ダイベストキャンペーナーの古野真氏がメールで伝えた。 「日本国民は、海外から輸入される汚染された化石燃料エネルギーに依存し続けるのか、世界の他の国々と連携した再生可能エネルギー社会への移行をリードするのかどうかを決断しなければなりません」
「石炭を後押しするトランプ氏の姿勢は、世界の石炭業界と石炭価格を楽観的にさせるものです」と、中国石炭輸送販売協会のデビット・ファン氏が北京から電話で応えた。 「これまでの発言どおり、さらなる石炭の使用を推奨するようであれば、オーストラリアやインドネシアの石炭鉱山会社が最もその恩恵を受けるでしょう」
日本と中国は、いくつかの環境団体が昨年発表した研究によると、2014年末までの8年間で石炭電力を調達するために350億ドル以上を貸与した。
2015年6月に発表された、自然資源防衛協議会、オイル・チェンジ・インターナショナル(OCI)、世界自然保護基金による共同研究によると、日本は200億ドル以上、中国は150億ドル提供した。
石炭融資
当時それらの環境団体は、「この政府の石炭融資(大部分は輸出支援という形式である一方で、開発支援および一般融資でもある)は、石炭の使用を永続させ、気候変動を悪化させています」と述べた。 「それを即座に停止する必要があります」
国内では、日本の大手電力会社は、失われた原子力を補うために、さらに石炭火力発電所を建設する予定だ。 また、政府は固定価格買取制度などのインセンティブで再生可能エネルギーを支援しているが、新しいクリーンエネルギーの容量は不十分だ。
約1年前に発表されたレポートで、日本は、排出量と気候保全対策を58か国で比較する指標で最悪の国にランクされた。これは、米国やインドのような他の主要排出国よりもはるかに低い。
ジャーマン・ウォッチ(Germanwatch)と気候行動ネットワーク・ヨーロッパ(Climate Action Network Europe)によると、日本はオーストラリアのすぐ上で、58位だった。 そのレポートによると、トップ3が空位だったため、デンマークがトップだった一方でランクは4位となっている。
環境団体は、日本が2013年度の水準から2030年までに温室効果ガス排出量を26%削減すると誓ったのは不十分であるとして非難した。
一方で、日本政府がパリ協定を批准し、現在その確約を守る責任を有するのは1つの肯定的な兆しだと、350.orgの古野氏が述べた。