2018年5月31日

350.org 記者声明:トランプ米大統領の「パリ協定」離脱表明から1年経過「急速に進む世界の脱炭素化」

2018年5月31日

トランプ米大統領の「パリ協定」離脱表明から1年経過

「急速に進む世界の脱炭素化」

 

トランプ米大統領が気候変動に関する「パリ協定」を脱退する方針を表明してから1年経過しました。この表明は、米国全土において自治体、企業、市民団体からの気候変動対策に対するコミットメントと行動を促進しました。トランプ政権の意向に反して、「パリ協定」の批准国は脱炭素化に向けた対策を継続させることを宣言しています。

トランプ米大統領の「パリ協定」離脱表明から1年、国際環境NGO 350.orgのメイ・ブーヴィ事務局長は以下の声明を発表しました。

「1年前、トランプ大統領の表明を受け、私たちはその決断に対する市民の不満を有意義な行動へとつなげると宣言し、確実に成果を成し遂げています。年金基金や銀行に対して、化石燃料関連企業や化石燃料プロジェクトへ投融資を行っている銀行からの投資撤退(ダイベストメント)を求める新たなグループが毎日のように現れています。世界中で、気候変動の悪化に対する化石燃料関連企業の責任を追及する訴訟をが起こされています。化石燃料業界は窮地に立たされつつあります。

トランプ大統領が化石燃料関連企業のロビー活動を支持すると決断したときから、私たちは地方政府や企業などに対して、これが気候変動対策を強化し、解決策を実行に移す極めて重要な機会だということを訴えてきました。化石燃料からの投資撤退、100%再生可能エネルギーへの移行、火力発電所などの化石燃料プロジェクトの建設の停止が相次いで起きています。私たちは各分野におけるリーダーに、言葉だけではなく具体的な行動が必要であることを続けて伝えていきます。」

 

世界の脱炭素化に向けた動き:

  • 米国における再生可能エネルギー分野の雇用創出は、米国経済の他の分野に比べて突出しています。現在、世界の再生可能エネルギー分野においてすでに1,000万人の雇用があります。(注1)
  • ニューヨークやロンドンのような世界の大都市、大学、年金基金や政府系ファンドは、化石燃料からの投資撤退(ダイベストメント)をどんどん推し進めています。ニューヨーク市は5大石油会社に対して気候変動による被害の訴訟を起こしていて、パリ市も同様な訴訟を検討をしています。
  • アフリカでは8つの首都や大都市が、2050年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素排出ゼロ)を達成すると表明しています。
  • カナダのキンダー・モルガン石油パイプラインから、オーストラリアの巨大なアダニ炭鉱、米国のキーストーンXL石油パイプラインなどの新しい化石燃料プロジェクトに関与している銀行や保険会社はこれらへの投融資を停止したり、見直しを検討しています。日本では第一生命保険が、海外石炭火力発電事業へのプロジェクトファイナンスに新規融資しない方針を発表しています。

 

今こそ気候変動アクションを!(Rise for Climate):  

カリフォルニア州知事ジェリーブラウンが、9月12−14日にかけてサンフランシスコ市で開催する、世界気候行動サミット(Global Climate Action Summit)は地方自治体および地方政府ならびにビジネス界の気候変動対応における努力を示すことを目指しています。同時に脱炭素社会への移行における投資家の役割に焦点をあてる国連責任投資原則(PRI)の総会も開催されます。.

世界気候行動サミット及び国連責任投資原則の総会に先駆けて、350.orgは2018年9月8日(土)に、世界中でのアクションやイベントを企画することで、真の気候変動対策を呼びかる「今こそ気候変動アクションを!(Rise for Climate)」を開催いたします。様々なステークホルダーが100%再生可能エネルギー社会への早急な移行を求めます。

日本では現在、350.org Japanの日本支部 350.org Japanが、3大金融グループ(三菱UFJ、みずほFG、三井住友FG)に対して、パリ協定に整合した事業戦略や明確な指標・目標を公表し、国内外の石炭火力発電事業や石炭火力発電に関与する企業への新規融資・引受から撤退することを求める「石炭火力発電事業及び石炭採掘事業への新規融資に関する要請」に基づいた国際署名(注2)を展開しています。要請に関する明確な姿勢を9月の世界気候行動サミット前に公表することを求めているため、金融グループを対象としたイベントを「今こそ気候変動アクションを!(Rise for Climate)」に合わせて開催する予定です。

 

注釈

1) IRENA. Renewable Energy and Jobs – Annual Review 2017

2)石炭火力発電事業及び石炭採掘事業への新規融資に関する要請」では国際環境NGO 350.orgの日本支部(350.org Japan)は賛同団体とともに、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)および三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)に対して2018年9月12−14日に行われる世界気候行動サミット(Global Climate Action Summit)及び国連責任投資原則(PRI)年次総会前までに以下を求めている。1.気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言にもとづき、温室効果ガスを大量に排出する分野への投融資状況を公開すること、2.世界の平均気温の上昇を摂氏2度未満に抑えるシナリオに整合した事業戦略や明確な指標や目標を公表すること、3.パリ協定の目標達成のため、石炭火力発電事業及び一般炭の採掘事業に関与する企業への新規融資を中止すること。


お問合せ先:
350.org Japan 担当:古野 Email: [email protected]棚尾真理絵: 090-2183-2113, [email protected]