プレスリリース
350.org Japan
2019年2月19日
三井住友FG国連「責任銀行原則」に賛同表明する一方、
国内外の石炭火力発電事業を支援継続か?
三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)は、2月18日(月)に国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱する「責任銀行原則(PRB:Principles for Responsible Banking)」への賛同を表明した1。日本の金融機関では三井住友信託銀行に次ぐ表明となる。三大銀行の中では、前向きな姿勢と捉えることができる一方、脱炭素化への世界的な潮流と逆行している石炭火力発電事業への融資が再び問われる。
PRBは持続可能な社会の実現に向けて、温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定や国連の持続可能な開発目標(SDGs)等の国際的なゴールと整合した事業活動を銀行に促すことを目標とした「未来の銀行システムのフレームワーク」。本年9月の国連気候サミットの場で同原則が発足する予定。
PRB署名機関に求められる行動は銀行業務をパリ協定が定めた「産業革命前に比べて地球の気温上昇を2度未満に抑え、さらに1.5未満を目指す努力をする」という目標達成に向け、世界経済の脱炭素化を実現させる投融資方針を確定することだ。
PRBの6つの原則 (1適合性:Alignment, 2影響:Impact, 3顧客:Clients and Customers, 4利害関係者:Stakeholders, 5ガバナンスと目標設定 : Governance and Target Setting, 6透明性と説明責任 : Transparency and Accountability) は民間銀行のビジネス戦略を測る国際的ベンチマークとなるだろう。
原則①適合性「SDGsやパリ協定などに銀行のビジネス戦略を適合させる」そして原則②影響「銀行の活動を通じて社会にネガティブな影響を減少させ、ポジティブな影響を継続的に増やしていく」に賛同しているのにも限らず、三井住友フィナンシャルグループの実務的な行動を検査すると、同行が掲げる「サステナビリティー経営」との大きな矛盾が浮き彫りになりつつある。
象徴的な事例となるのは現在三井住友銀行が財務アドバイザーとして関わるベトナムに建設予定のバンフォン1石炭火力発電事業(発電所2基の660メガワット)。
バンフォン1への融資はパリ協定に反する。新たな石炭火力発電所の建設は、パリ協定との整合性が確保できないことが国連機関や国際エネルギー機関(IEA)等から指摘されており、2018年10月に発表された国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の特別報告書『1.5°Cの地球温暖化』でも、従来考えていたよりも早急な脱炭素化が急務であると指摘されている。
さらに、三井住友銀行が昨年6月に発表したクレジットポリシー2において、「地球環境に著しく悪影響を与える懸念のある与信」の事業別分野として、「石炭火力発電所に対する融資方針をより厳格化し、新規融資は国や地域を問わず超々臨界(CO2 排出量が 750g-CO2/kWh 未満)及びそれ以上の高効率の案件に融資を限定」するとした方針に遵守しない。ベトナムに建設予定のバンフォン1石炭火力発電所は、より効率の悪い超臨界圧の石炭火力発電技術の事業で、その温室効果ガスの排出量は750g~850g/kWhと推定される。
三井住友銀行の方針に「適用日以前に支援意思表明をしたもの、もしくは日本国政府・国際開発機関などの支援が確認できる場合」は同ポリシーの例外として記載しているが、「責任銀行原則」に賛同表明した金融機関として、バンフォン1への融資を決定すればこのような判断は国際社会に厳しく評価されるだろう。
根本的な問題は日本の公的金融機関である国際協力銀行(JBIC)および日本貿易保険(NEXI)による同事業への支援。国が加盟するOECDの「石炭火力発電のための輸出信用」で支援対象外とされている大規模な超臨界技術を使用しているため、同ルールを尊重していないことも問われる。住友商事が出資する同事業に対し、現在、JBICが融資を、NEXIが付保を検討中であり、三井住友銀行以外に、三菱UFJ銀行、みずほ銀行が融資する可能性も報道されている。
SDGsやパリ協定に対するSMBCグループの経営トップの強いコミットメントを果たすには、バンフォン1の様な石炭火力発電事業から撤退するのが適切な選択であると考える。
注釈
1) https://www.smfg.co.jp/news/j110191_01.html
2) https://www.smbc.co.jp/news/pdf/j20180618_01.pdf
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