プレスリリース
2018年9月10日
350.org Japan報告書によって、日本の金融機関がパリ協定合意以降、国内の石炭火力開発への資金提供を増加させていたことが判明
2018年9月10日
国際環境NGO 350.orgの日本支部(350.org Japan)は報告書「民間金融機関の化石燃料及び原発関連企業への投融資状況2018」を本日発表しました(注1)。本報告書によって、2015年のパリ協定合意以降、日本の金融機関が国内の石炭火力発電所の新設計画に携わっている企業への資金提供を増加させていたことが明らかになりました。
調査結果によると、2013年1月から2018年7月まで、調査対象となった日本の金融グループ151社とその子会社(銀行、資産運用会社、保険会社を含む)は、特定の石炭開発・化石燃料保有・原発に携わっている日本企業26社に対して総額約800億ドル(約8.9兆円)の融資および引受を提供していました。 さらに、金融グループは特定の石炭開発・化石燃料保有・原発関連企業の債券と株式に総額約120億米ドル(約1.3兆円)投資していたことも分かりました。
調査対象となった石炭開発に携わる企業は、欧州の政策研究所、クライメイト・アナリティクス(Climate Analytics)が作成した 報告書「Science based Coal-Phase Out Timeline for Japan(パリ協定に基づく日本の石炭火力フェーズアウト)」の中で特定された、石炭火力の新増設計画への出資企業上位20社です(注2)。350.org Japanが発表したデータによって、日本の金融機関がパリ協定合意後、それらの企業20社への融資や引受を拡大していたことが判明しました。また、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャルグループが20社への融資・引受額の62%を提供していたことも明らかになっています。
現在、運用資産総額6.24兆米ドル(約688兆円)の985の機関投資家(注3)が経済的リスク、環境への配慮を理由に、石炭、石油、ガスなどの化石燃料関連企業からの投融資引き揚げ(ダイベストメント)を表明しています。今回の調査結果は、化石燃料ダイベストメントの潮流に日本の金融セクターが乗り後れている状況を示しています。
なお、特定の石炭開発・化石燃料保有・原発に携わっている日本企業26社に対して投融資が確認されなかった金融機関が38社ありました。350.org Japanが楽天インサイトに委託した世論調査によって、調査対象2000人の過半数以上が「自分の預け先の銀行に環境や社会に配慮した責任のある銀行業務や投融資を行ってほしいと」考えていることが分かっています。
国際環境NGO 350.org 日本支部(350.org Japan)代表 古野真
「今年から、保険会社をはじめ日本の金融機関が石炭火力発電所への新規融資を制限する動きが見られるようになりましたが、今回の調査結果はそれに反するものとなりました。欧米の金融機関は、石炭が座礁資産となる可能性を危惧し、新しい石炭火力発電所プロジェクトへの融資を制限するだけでなく、すべての石炭関連企業からの投資撤退を迅速に進めています。石炭の経済的リスクを考慮せず、石炭セクターへのエクスポージャーを増やし続けている国内の金融機関の姿勢は日本経済を大きなリスクにさらしています。
今夏、日本列島を襲った猛暑と激しい降雨によって、市民は深刻化する温暖化の影響を身をもって経験しています。国連環境計画(UNEP)によると、新規の石炭火力発電所建設は、気温上昇を1.5-2℃に抑えるというパリ協定の目標と整合性を持たないことが明らかになっています。その中、日本の金融機関が国内の石炭火力発電所への資金提供を増やしていることは不合理です。350.org Japanは環境や社会に配慮した投融資を行う銀行を選びたいという消費者に適切な情報を提供するために、特定の石炭開発・化石燃料保有・原発関連企業への投融資が確認されなかった金融機関38社に対して、自社が「化石燃料や原発への投融資実績がない」と公表してもらえるように働きかけます。」
注:
1)報告書「民間金融機関の化石燃料及び原発関連企業への投融資状況2018」:http://world.350.org/ja/energy_finance_report2018/
2)https://www.renewable-ei.org/activities/reports/20180529.html
3)https://gofossilfree.org/divestment/commitments/
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本件に関するお問合せ:
古野真 350.org Japan代表 TEL:070-2793-3648
MAIL:[email protected]