2016年5月3日

化石燃料への依存から脱却(ブレイクフリー)を目指すアクションを世界各地で開始 (5/3/2016)

 

BreakFree

プレスリリース —  緊急記者発表

2016年5月3日

化石燃料への依存から脱却(ブレイクフリー)を目指すアクションを世界各地で開始

環境運動史上最大の市民アクション

世界に「ダイベストメント運動」を広めたことで知られる国際環境NGO 350.org は、5月4日より12日間、最も危険で不必要な化石燃料に関連するプロジェクトを対象としたアクション「Break Free(ブレイクフリー)」を世界各地で展開します。

2015年は観測史上最も暑い一年でした。気候変動の影響は、すでに世界各地に及んでいます。 海面上昇から激化する暴風雨に至るまで、気候変動防止に向けた対策は、かつてないほど急務です。 一方、化石燃料産業は、前代未聞の危機に直面しています。燃料価格の下落に伴う化石燃料産業からの大規模なダイベストメント(投資撤退)運動が世界中で広まっています。新たな気候変動協定がパリで締結されるなど、「脱化石燃料」「脱炭素」という変化を求める動向が、かつてないほどの盛り上がりを見せています。自然エネルギーへの公正な移行に、これほど適したタイミングはありません。

今こそ、国際組織や地域コミュニティ、市民一人ひとりに至るまで、気候変動を防止するために、一致団結すべき時です。化石燃料への依存から社会を断ち切るために必要な政策や投融資方針を取り入れることを、エネルギー供給事業者や自治体政府、各国政府に全員で力を合わせ働きかけていく必要があります。

今起きている気候変動を食い止め、世界の平均気温上昇を「パリ協定」で定められた1.5℃未満に抑えるためには、現在新たに計画されている化石燃料に関連するプロジェクトを直ちに中止し、近年の普及によって安価になった再生可能エネルギーに置き換えていかなければなりません。1.5℃未満を現実のものとするには、石炭・石油・天然ガスをそのまま地中にとどめ、再生可能エネルギー100%への移行を加速すること以外に道はありません。 この道を実現するために、Break Free 開催期間中、世界中の人々が立ち上がります。

日本では47基もの石炭火力発電所の新設が容認されるなど、脱炭素化の流れとは逆行する方向に進んでいます。これに加え、日本は世界一多くの資金を石炭開発へ投資、融資しています。この事態を解決するためには、持続不可能な火力発電所や化石燃料産業から資金を引きあげ、自然エネルギー開発へと転換することが不可欠です。Break Free と同じく5月に三重県の伊勢志摩で開催されるG7サミットの議長国として、日本はまず国内の石炭火力発電所増設の決断を撤回し、座礁資産リスクを伴う海外の石炭開発への投融資を見直すべきです。Break Freeに続き、350.org Japanは、協力団体とともに日本の石炭を含む化石燃料への投融資の現状への異議を唱えるために5月19日(木)に国際協力銀行(JBIC)前で麻生太郎財務大臣に扮して寸劇を行うアクションを実行します。

世界中のBreak Freeの開催期間は5月3日〜15日であり、開催地は次の通りです:

  • オーストラリア5月8日 ニューカッスルにある世界最大の石炭積み出し港に、600人以上の市民が結集。 彼らは声をひとつに、次期選挙では候補者の気候対策を重視すること、また次期首相に誰が選ばれようと、石炭産業への抵抗を続ける意志を示します。
  • ブラジル3つの地域でアクションが展開されます。 5月5日〜15日にかけて地域イベントが開催されるマリンガ市では、期間中の5月6日、フラッキング禁止を訴える大規模集会が行われます。 5月7日、トレド市で開催される反フラッキング大規模デモには、数千人が参加します。 また5月14日には、ペアラー州ペセムにある石炭発電所の閉鎖を求めるデモと大規模不服従運動が実施されます。
  • カナダ5月13日と14日、バンクーバーでは数百人の市民が海岸と海上の双方でアクションを展開、タールサンドを海上に輸送する米キンダー・モルガン社のトランスマウンテン・パイプライン建設計画に反対するため、ウエストリッジ海上ターミナルを包囲します。
  • エクアドル:5月14日、環境保護団体 ヤスニドスの呼びかけで同国各地の市民が結集、ヤスニ国立公園での油田開発事業の中止と環境保護を訴えます。
  • ドイツ5月13日〜15日にかけての週末、数千人の運動家がラウジッツにある欧州最大の露天掘り褐炭鉱山のひとつを訪れます。スウェーデンの電力大手バッテンフォールが売りに出したこの鉱山での開発事業を阻止するため、運動家は現地の不服従運動に加わります。 このアクションでは、同鉱山の購入を検討している企業に対し、石炭開発には抵抗運動がつきものであることを明確にすると同時に、化石燃料企業に断固反対するこのムーブメントの方針を突きつけます。
  • インドネシア5月11日、 首都ジャカルタの大統領府前で、数千人による大規模アクションを開催。 石炭プロジェクト反対運動を率いてきた同国各地の人々も、多数このアクションに参加します。 「脱石炭」と「再生可能エネルギーの積極利用」を促すことで、発電容量3万5千メガワットを目指す大がかりなエネルギー計画を見直すよう、ジョコ・ウィドド大統領に求めます。 その数日後には、1カ所またはそれ以上の石炭インフラ設備建設予定地で、さらなるアクションを起こします。
  • ニュージーランド:5月4日〜15日のにかけて、同国全土の市民数百名がアクションに参加、化石燃料産業に最も多額の投融資を行う組織のひとつANZ(オーストラリア・ニュージーランド)銀行の操業停止を目指します。 ニュージーランド南島の端から北島の端に至るまで、ANZ銀行の業務を停止させるため、封鎖などの手段に訴えると同時に、意識改革を促すキャンペーンを展開します。
  • ナイジェリアニジェール・デルタ地帯では、化石燃料を象徴する3つの地域でアクションを展開。原油枯渇により収入が断ち切られ、汚染のみが残されたらどうなるか、この地域の行く末について考えます。 まず、数十年にわたる原油流出で汚染されてきた、この地帯の一角オゴニランド地方で、原油除去作業の速やな実施を求めます。また、住民には、石油企業の権力に立ち向かい、そもそも採掘すべきではない原油を、地中にとどめておくことは可能であると伝えます。 もうひとつのアクションは、米エクソン社による度重なる原油流出事故で、漁業や人々の暮らしに深刻な影響がもたらされてきた大西洋沿岸部の地域で行われます。
  • フィリピン 5月4日、フィリピン各地で脱石炭に取り組む運動家がバタンガス市に結集、参加者1万人を目標に気候マーチを開催します。同市の一角ピナムカン・イババ地区では、複合企業JGサミット・ホールディングスが、20ヘクタールの敷地に発電容量600メガワットの石炭火力発電所の建設を計画しています。 集まった人々は、このバタンガス市の石炭発電所に加え、フィリピン各地で進められている他27の発電所建設計画の撤回を求めます。
  • 南アフリカ 石炭と気候変動が地域にもたらす影響に焦点を当て、数百名規模のアクション2つを開催。 第1弾は5月12日、世界で最も汚染が深刻な地域のひとつウィットバンクに集まり、気候変動の影響を訴えます。 第2弾は5月14日、ヨハネスブルグのサクソンウォルドに暮らす富豪グプタ家に焦点を当て、アクションを展開します。
  • トルコ 5月15日、石炭灰処分場が立地するアリアガ地域のリーダーを中心に大規模アクションを展開、周辺地域で予定されている4つの化石燃料発電所建設計画の中止を訴えます。 このアクションを通じ、同国内で展開している他の石炭火力発電所建設反対運動をひとつにまとめ、石炭使用の急速な拡大を目指すトルコ政府の方針に断固反対します。
  • 英国 5月3日、ウェールズ南部のマーサー・ティドビル近郊にある英国最大の露天掘り石炭鉱山「フォス・イ・フラ」に、草の根組織「リクレイム・ザ・パワー」の呼びかけで、数百人が結集します。 このアクションの2日後の5月5日には、ウェールズ議会選挙が行われます。 ウェールズ議会は昨年4月、露天掘り石炭鉱山での採掘事業を一時禁止にしましたが、この決定に法的拘束力を持たせなければなりません。
  • 米国 5月12日〜15日にかけて、米国全土の運動家は、化石燃料開発における6つの主要事業に焦点を当てアクションを起こします。 6つの事業の1つは、米国中西部で計画されているタールサンド輸送用パイプライン新規建設。建設計画の撤回を目指し、シカゴ近郊でアクションを展開します。2つめは、米国西部のフラッキング事業。中断させるため、デンバー郊外でイベントを開催します。 3つめのは、フラッキングで採掘された石油や天然ガスをニューヨーク州アルバニーの港に輸送する通称「爆弾列車」。 4つめは、シアトル北部で深刻な汚染を引き起こしてきた、英蘭シェル社と米テソロ社による石油精製事業。5つめは、北極と南極、およびフロリダ州ガルフ海岸沖での海洋掘削事業。掘削作業の中断を求め、首都ワシントンC.でアクションを起こします。最後は、ロサンゼルスで行われている危険な石油・天然ガス採掘事業です。

引用シート:

「トルコ・フィリピンでの石炭発電所建設からドイツ・オーストラリアでの石炭鉱山開発、そしてブラジルでのフラッキングやナイジェリアでの油田掘削に至るまで、世界で最も危険な化石燃料関連事業を阻止すること。これらを目指すキャンペーンや大規模アクションへの支援を通じ、「Break Free」は、化石燃料産業が持つ権力やそれがまき散らしてきた汚染を排除、持続可能な未来へと世界を前進させたいと願っています。」 メイ・ボーブ、350.org事務局長 

「化石燃料産業の方針に対して、かつてこれほど一致団結したグローバル大規模アクションのうねりが起きたことはありませんでした。公平かつ公正、そして持続可能な世界を、今私たちは 思い描くことができます。 観測史上最も暑い年になろうとする今年、最も深刻な汚染をまき散らす産業に対して、私たちはますます政治圧力を高めていくつもりです。」ビル・マッキベン、350.org共同創設者

「気候変動の最前線にある地域は、政府が何かしてくれるのを待ってはいません。 率先して行動を起こす彼らの声に、世界は耳を傾けなければなりません。 数年間にわたり、何百万もの人々がクライメートジャスティス(気候の公平性)を求め闘ってきたからこそ、パリ協定は成立したのです。 各国政府が気候変動対策を約束した今、気候科学に従い、確実にその約束を果たすよう、私たちは働きかけていかなければなりません。 気候変動に打ち勝つ唯一の方法。それは、石炭・石油・天然ガスを地中にとどめ、再生可能エネルギー100%社会への公正かつ公平な移行を促すことです。」ジェニファー・モーガン、グリーンピース・インターナショナル事務局長

「フィリピン各地で、新規石炭火力発電所および鉱山開発に関連するすべての計画、許可、建設を白紙に戻し、既存の発電所や鉱山を段階的に廃止するよう政府に訴える声は、ますます高まっています。 化石燃料、そして有害なエネルギー源からの解放を目指し、私たちは大きな一歩を踏み出さなければなりません。 再生可能エネルギーへの完全移行は、可能であると同時に、急務でもあります。」リディ・ナクピル、債務と開発に関するアジア民衆運動(APMDD)コーディネーター兼クライメートジャスティスを求めるグローバル・キャンペーン副コーディネーター

「化石燃料から解き放たれるということ。それは、生命、そして地球を存続させるため一歩です。 各国のリーダーたちが署名したパリ協定は、地球温暖化の元凶が化石燃料の燃焼であるという事実を無視したものです。 これらのアクションでは、化石燃料依存の現状を明確にしなければならないと、世界中の人々が訴えます。 さらにナイジェリアでは、ニジェール・デルタ地帯で操業する石油会社が引き起こした深刻汚染の除去作業を求め、声をあげます。ニモ・バッシー、 ナイジェリアのヘルス・オブ・マザー・アース財団運動家

「今、人類は岐路に立っています。このまま化石燃料の採掘を続けるという破滅的な道を選ぶのか、それとも持続可能な生き方を選ぶのか。 私たちに必要なのは、タールサンド輸送パイプラインの増設ではなく、野心的な再生可能エネルギー計画です。 パイプラインは、建設によって影響がもたらされる周辺地域の住民や先住民の人々からも支持されていません。 このまま化石燃料のインフラ設備建設を継続するのであれば、すでに世界各地に影響をもたらしている気候危機を食い止めるため、カナダも責任を果たすと誓った約束を破ることになってしまいます。メリーナ・レブキャン-マッシモ、カナダ先住民族ルビコンクリー、グリンピース・カナダ気候とエネルギーキャンペーナー兼350.org理事

「大きな感動を与えてくれる気候ムーブメントの先は明るいと感じる一方、これは時間との闘いでもあります。 気候変動は、猛烈な勢いで壊滅的な影響をもたらしています。 すでに強固なこのムーブメントを、私たちはいっそう大きく育てていかなければなりませんナオミ・クライン、受賞ジャーナリスト兼作家

「私たちの町や村、そして気候変動の最前線に立つ地域に暮らす大衆の力によって、世界的な気候協定にこぎ着けました。しかし、ここで立ち止まってはなりません。急ピッチでさらなるアクションを起こしていかなければなりません。 化石燃料から私たちの社会を解き放ち、再生可能エネルギー100%で支える公正な未来への移行を加速させるため、市民社会は今再び立ち上がります。」ワエル・マイダン、クライメート・アクション・ネットワーク・ディレクター

「化石燃料発電所は、立地地域とその生態系にとって非常に有害であるというだけでなく、気候変動の主原因であるため、立地国ひいては世界にとって危険です。   この時代に生きる我々が選択した誤ったエネルギー政策によって、未来世代に負担を押し付けるというのは、モラルに反する行為です。  今こそ、化石燃料時代に終わりを告げるべき時です。」 ラモン・アルゲレス大司教、フィリピンのローマカトリック教会大司教.


連絡先:

ホダ・バカラ(Hoda Baraka)、350.org グローバル・コミュニケーション・マネジャー[email protected] +1-347-453-6600

棚尾 真理絵(Marie Tanao)、350.org ジャパン・コミュニケーション・コーディネーター [email protected] +81-90-2183-2113

編集者への注記

写真/動画 Break Free開催期間中、随時更新予定):

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