プレスリリース
2024年11月20日
国際環境NGO 350.org Japan
浅尾環境大臣、COP29閣僚級会合で演説
〜他国に行動強化を要求するも自国については既存の取り組みのアピールにとどまる〜
【20日、バクー】今秋に就任した浅尾慶一郎環境大臣は、COP29における閣僚級会合にて日本政府を代表して演説を行いました。
浅尾大臣は演説において、長期的な気候資金目標の合意に関連し、日本による公的資金及び民間資金による気候資金への既存の貢献をアピールしました。しかし、COP29で焦点となっている2025年以降の気候資金についていくらの目標額を設定すべきか、そのために日本がどのように気候資金への貢献を新たに積み増すのかについては具体的な言及を避けました。
温室効果ガス排出削減については、2050年ネットゼロに向けて取り組みを続けるとともに「野心的で1.5℃目標に整合する」新たな目標を来年2月までに提出すると述べましたが、これも従来の立場を改めて説明したにとどまります。科学者の国際プロジェクト”Climate Action Tracker”は、パリ協定1.5℃目標のためには「日本は2035年までに2013年比で81%削減が必要」と分析していますが、そのためには新たな方針転換が不可欠です。長らくCOPにおいて批判されてきたCO2の排出源である石炭火力発電やその他の化石燃料、そして事故リスクが大きく、高コストでトラブルや不祥事によって再稼働すらままならない不安定な原子力発電から脱却し、公正な再生可能エネルギーへの転換を進める意思も示されませんでした。
COP29に参加中の国際環境NGO 350.org Japanのジャパン・キャンペーナーの伊与田昌慶は次のようにコメントしました。
「浅尾大臣の演説は、COP29で重視されている気候資金と排出削減という2大テーマにおいて、日本としての『これから』の貢献よりも、『これまで』の取り組みのアピールにとどまりました。日本がどうするかよりも新興国に新たな行動を求めるメッセージが強調されたように見えることは、国際社会に責任転嫁の印象を与えた恐れがあることを懸念します。他国に対してステップアップを求めるだけでなく、日本としてさらなる貢献を新たに強化する方針をこそ表明すべきです。
今般オーストラリアが気候変動による損失と被害基金に対して、十分な額ではないにせよ、新たな資金拠出を表明したように、新たな貢献の表明はCOPでの合意実現の気運を高めるために重要です。歴史的な排出責任と能力のある先進国である日本こそが率先して行動を強化することが必要です。
排出削減については、COP28で合意された化石燃料からの脱却や再エネ3倍、省エネ2倍を日本としてどのように実現するのかについて具体的な方針の表明がなされなかったことは残念です。大臣が表明した『1.5℃目標』の達成のためには、石炭火力発電のフェーズアウトや再エネの大幅増が必要です。頻発する気候災害に苦しむ国内外の市民や産業を守るため、浅尾環境大臣のリーダーシップに期待します」
COPにおいて、そしてCOP終了後、日本においてはエネルギー基本計画や国別貢献(NDC)の検討ととりまとめ議論が大詰めを迎えます。折しも、NHKなどの報道によれば、政府は新たなエネルギー基本計画において2040年に初めて電源構成における再エネ割合を最大にするとの見通しを示したとされています。しかし、電源構成における再エネの割合が最大になるのが2040年では遅すぎます。
国際環境NGO 350.org Japanのジュニア・フィールド・オーガナイザーの飯塚里沙は次のようにコメントしました。
「日本の市民はCOP29に向かう浅尾慶一郎環境大臣に向けて『再エネでホンキの気候対策をお願いします』、『81%削減の気候目標を掲げてください』と声をあげました。現在、佳境を迎えている『エネルギー基本計画』及び『国別貢献(NDC)』の検討においては、化石燃料から脱却し、再エネ3倍と省エネ2倍とのCOP合意を反映した野心的なものでなければなりません。すでに周回遅れである日本の気候エネルギー政策をさらに10年以上遅らせるようなエネルギー基本計画は受け容れられません。再エネの導入が遅れるということは、温室効果ガス削減が遅れるだけではありません。大気汚染の改善や、化石燃料の採掘と運搬による自然破壊の防止、民主的なエネルギーのアクセス、日本における将来性ある再エネ雇用の成長、国内エネルギー自給率の向上も遅れるのです。浅尾環境大臣にはCOP29で、そして帰国後に国内で、再エネに積極的とされる石破首相とともにリーダーシップを発揮していただきたいと思います」
写真:COP29にあわせた市民アクションの様子(11月15日、東京・新宿駅前)
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以上
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伊与田昌慶(いよだまさよし)
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