2024年4月30日

G7気候・エネルギー環境大臣会合における「2030年代前半の石炭火力発電フェーズアウト」報道に関するコメント

コメント

2024年4月30日
国際環境NGO 350.org Japan

 

G7気候・エネルギー環境大臣会合における「2030年代前半の石炭火力発電フェーズアウト」報道に関するコメント

 

29日、複数のメディアは、G7気候・エネルギー・環境大臣会合において、G7が2030年代前半に国内の石炭火力発電をフェーズアウト(段階的廃止)することで合意し、これが成果文書に盛り込まれる見通しと報じました。

化石燃料を利用した火力発電のうち、最も大量のCO2を排出量する石炭火力発電は、気候危機の最大の原因です。科学者によれば、パリ協定の目標を達成するためには、先進国は、2030年までに自国内の、「排出削減対策の講じられていない石炭火力発電(*)」をフェーズアウト(段階的廃止)することが必要です。このため、日本を除くすべてのG7諸国は、石炭火力のフェーズアウトを約束する「脱石炭国際連盟(Powering Past Coal Alliance:PPCA)」にすでに参加しています。

国際環境NGO 350.orgのジャパン・キャンペーナーである伊与田昌慶は次のようにコメントしています
「最終成果文書がどうなるのか予断できませんが、日本が石炭火力発電のフェーズアウトについて特定の期限に合意をしたとすれば、これは前進であると言えます。しかし、2035年という期限はパリ協定のもとで先進国が果たすべき責任に見合っていません。日本を含む先進国は、遅くとも2030年までに石炭火力発電のフェーズアウトを実現する必要があるからです。

日本政府はこれまで、先進国の中で孤立を深めようとも、そして他の途上国が石炭火力発電を続ける口実を提供することになろうとも、頑なに石炭火力発電を利用し続ける方針を維持してきました。もしも今回の合意が成立すれば、石炭中毒から速やかに脱するよう、日本政府に改めて迫るものとなります。他方、日本政府が、CO2削減効果がほとんどないアンモニア混焼技術を口実にして石炭火力発電を延命したり、あるいは脱石炭を言い訳に危険な原子力や化石ガスの利用を正当化したりする懸念もあります。しかし、気候危機が深刻化する中、そのようなグリーンウォッシュは許されません。

脱石炭火力発電を2024年までに達成する方針を掲げている英国など、日本以外のG7諸国にとって、2035年という期限は、日本への妥協と言えます。気候科学の知見に沿って、日本以外のG7は、「遅くとも2030年までの石炭火力発電のフェーズアウト」を強く求めるべきです。

今年2024年は、日本のエネルギー基本計画の見直しが予定されています。新たなエネルギー基本計画は、石炭を含む化石燃料のフェーズアウトを進め、省エネと再エネによる公正な経済社会への転換を可能にするものでなければなりません」

*排出削減対策の講じられていない(Unabated)石炭火力発電とは、一般に、炭素回収貯留(CCS:Carbon Capture and Storage)のない石炭火力発電所のことを指します。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば、発電部門においては、90%以上のCO2排出を除去できる対策がない場合、これを「排出削減対策が講じられていない(Unabated)」と呼びます。なお、CCSは、火力発電所等において排出されたCO2を回収し、貯留する手法ですが、技術的、費用的に課題が多く、実用化は進んでいません。

 


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伊与田昌慶(いよだまさよし)

国際環境NGO 350.orgジャパン・キャンペーナー
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