プレスリリース
2023年6月2日
国際環境NGO 350.org Japan
三菱UFJフィナンシャル・グループ、「東アフリカ原油パイプライン(EACOP)への支援なし」と表明:
市民の気候ムーブメントの成果
本日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、気候危機と人権侵害の懸念が深まっている「東アフリカ原油パイプライン(EACOP)(※1)」について、「本件へのファイナンスに関与していない」と初めて表明しました(※2)。これは、世界の市民社会が重ねて行ってきた要請に対して回答されたもので、350 Japanはこの表明を歓迎します。
日本の3メガバンクの1つであるMUFGは、EACOPを進めるトタル社に対して巨額の資金を提供してきたとされています。市民による要請に対して、これまで「個別の案件についてはコメントを差し控える」という説明が行われてきており、EACOPへの関与については不明でした。
350 Japanは、国内外の様々な市民団体・若者グループと連携して、昨年5月25日の「アフリカの日」にEACOP事業に反対する声明を発表し、銀行本店前でアクションを行うなど、繰り返し声をあげてきました。MUFGは今回の表明について、「EACOP案件に対する関心が異例の高さとなっていることに鑑み、例外的な対応として」説明したとしており、市民ムーブメントの成果だと言えます。本日の表明によって、みずほ銀行や三井住友フィナンシャルグループに続き、日本の3メガバンクのすべてがEACOPへの支援を否定したことになります。
パリ協定の1.5℃目標を達成するためには、EACOPに限らず、あらゆる化石燃料事業への資金の流れをやめ、省エネルギー及び再生可能エネルギーへの支援へと切り替える必要があります。350 Japanは、すべての金融機関に対して、パリ協定1.5℃目標に整合的な気候変動方針と実施のさらなる強化を改めて要請します。
国際環境NGO 350.org Japanチームリーダー代行の伊与田昌慶は次の通りコメントしています。
「三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)による今回の表明は、アフリカと日本、そして世界中の市民にとって良いニュースです。アフリカの人々と自然を脅かし、年間最大で約3,400万トンものCO2排出をもたらしうる東アフリカ原油パイプライン(EACOP)について、日本の3メガバンクのすべてが距離を置いていることが明らかになったからです。
アフリカにおいては、EACOPのみならず、様々な化石燃料事業が計画されています。今年5月、G7サミットに先立って、岸田文雄首相が支援すると表明したモザンビークの化石ガス事業もその例です。他方、アフリカの市民は、化石燃料ではなく再生可能エネルギーを支援してほしいと訴えてきました。日本の官民は、化石燃料という過去のエネルギーではなく、再生可能エネルギーという未来のエネルギーをこそ支援すべきです。」
StopEACOPキャンペーン・コーディネーターで、南アフリカ在住のザキ・マムドゥは次の通りコメントしています。
「MUFGは、長年にわたりトタル社を支援してきました。MUFGがEACOPへの不参加を確認したことは、重要な進展です。このプロジェクトの問題性、有害性、そしてそれを支援する人たちのリスクをさらに明確にするものです。私たちはこの発表を歓迎しますが、スタンダード銀行などが依然としてこのプロジェクトに対する積極的な支援を続けていることを懸念しています。MUFGの発表により、スタンダード銀行が、現在の立場を見直し、EACOPへの支援を取りやめる必要性を認識するよう求めます。」
350.org アフリカ・キャンペーナーで、ケニア在住のチャリティ・ミグウィは次のように述べています。
「MUFGがEACOPへの融資を見送ったことは、このプロジェクトがウガンダの社会、経済、環境に壊滅的な影響を与えることを認めたということを意味します。 この決定は、金融業界および世界全体に対して、短期的な利益よりも人々と地球を優先することの重要性を強調する、強いメッセージであると言えます。このニュースは、地域コミュニティの幸福や生態系の保護を尊重し、すべての人々にとっての持続可能な未来に貢献するような開発を促進することこそ、真の前進なのだということを思い出させてくれます。」
※1 東アフリカ原油パイプライン(EACOP)の概要
石油メジャーであるトタルエナジーズ社は、ウガンダからタンザニアまでを1,443kmで結ぶ世界最大の加熱式原油パイプライン「東アフリカ原油パイプライン(EACOP)」の建設をめざしています。同プロジェクトは、数百万人の水資源と生活を脅かし、世界で最も重要な自然保護区を破壊し、年間最大で3,400万トンものCO2排出をもたらす恐れがあります。抗議する住民や市民団体への人権侵害も多数報告されており、訴訟も複数提起されています。ウガンダおよびタンザニアにおける人権侵害に関連し、EACOPはEU議会からも非難されています。パイプライン建設と関連するティレンガ油田の開発により、両国において強制移住の対象となる恐れのある住民は、11万8千人に上ると予測されています。
このため、アフリカの地域コミュニティや、350 Japanを含む世界の市民社会は、「EACOPを支援しない」と表明するよう主要な金融機関や機関投資家に働きかけてきました。
※2:三菱UFJフィナンシャル・グループからの回答全文
MUFGの基本的なポジションとして、案件に関与していない、もしくは案件への融資検討を取りやめた場合であっても、個別案件へのコメントは差し控えています。しかしながら、EACOP案件に対する関心が異例の高さとなっていることに鑑み、例外的な対応として、本件へのファイナンスに関与していないことをお知らせします。
当社の一般的な考え方は、リンク先の環境・社会ポリシーフレームワークをご参照ください。
(https://www.mufg.jp/csr/policy/index.html)
なお、本件についても、他の個別案件についても、これ以上のコメントは差し控えますのでご了承ください。
問い合わせ先:
国際環境NGO 350.org Japan チームリーダー代行
伊与田昌慶(いよだまさよし)
Email: [email protected]
国際環境NGO 350.org Japan 広報担当(Communication Consultant)
髙橋英江(たかはしはなえ)
Email: [email protected]