声明
2023年5月21日
国際環境NGO 350.org Japan
G7広島サミット:岸田首相、気候危機への緊急性に対応できず。日本の気候・エネルギー政策は転換を迫られる
化石燃料及び原子力への依存と気候危機が世界の平和を脅かす中、G7首脳は気候危機の緊急性に対応することに失敗しました。
5月20日に発表されたG7広島サミットの首脳コミュニケでは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による最新報告を踏まえて「2019年比で世界の温室効果ガス排出量を2030年までに43%削減、2035年までに60%削減」することの緊急性を認識し、排出削減目標の強化に触れました。また、G7札幌大臣会合に続き、化石燃料のフェーズアウト、風力と太陽光の数値目標、石炭火力発電の新設の停止に触れました。先進国がインドネシア等における石炭火力発電所の廃止を支援する「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETPs)」の進展を歓迎する文言も盛り込まれました。
これらは化石燃料と原子力に依存した気候・エネルギー方針を採っている日本政府に路線変更を迫るものであり、日本の政治や産業界における議論の水準の先を行くものです。とりわけ、GENESIS松島のような石炭火力発電の新設計画が今も残っている日本にとって、化石燃料のフェーズアウトや石炭火力発電の新設停止に取り組むとの内容は、長年に渡って「石炭中毒」と批判され続けている日本に対する明確なメッセージです。
しかし、それでも気候危機の緊急性に照らせば、極めて不十分です。石炭火力発電の2030年までのフェーズアウトについては日本が最後まで抵抗し、盛り込まれませんでした。2035年までの「完全な又は大部分の」脱炭素化についても、「大部分の」を除いて「完全な」脱炭素化とすることが他の首脳から求められていたものが、化石燃料への依存を引き延ばしたい日本によって妨げられました。化石ガスへの公的支援を許したことは、サミット直前のアフリカ訪問時にモザンビークの化石ガス計画への支援を約束した岸田首相の姿を想起させます。日本が推す水素・アンモニア混焼の電力部門への利用、原子力発電、炭素回収利用貯留(CCUS)といったグリーンウォッシュ対策が、条件付きながら言及されてしまいました。さらに、首脳コミュニケとは別に発表された「G7クリーンエネルギー経済行動計画」は、その目標や方策に具体性を欠いています。
パリ協定の世界平均気温上昇抑制目標である1.5℃を2027年にも超過するおそれがあると警告されている今、そして化石燃料への依存がロシアのウクライナ侵攻のような紛争を長引かせている今、化石燃料への依存を維持・拡大させる余地はありません。日本政府は、来年に予定されているエネルギー基本計画の見直しにおいて、化石燃料や原子力への依存方針を見直し、省エネルギーと再生可能エネルギー100%への公正な移行へと舵をきる必要があります。
国際環境NGO 350.org事務局長のメイ・ブーヴィは、次のようにコメントしています。
「再生可能エネルギーへの転換を加速させ、エネルギー安全保障、人々のエネルギーへのアクセスを改善し、気候目標の達成に近づくための機会でした。それにもかかわらず、G7諸国は化石燃料への依存を続け、対立を長引かせることを選びました。世界中の市民社会による一貫した要請にもかかわらず、G7首脳たちは、気候危機の最前線にいる人々を失望させました。最終的なG7コミュニケには必要なメッセージが盛り込まれておらず、化石燃料の時代を終わらせるための具体的な計画を欠いています。生活費やエネルギー料金の高騰、気候危機に立ち向かうための決然とした行動をとるのではなく、表面的な言葉遊びに終わったのです。」
国際環境NGO 350.org Japanチームリーダー代理の伊与田昌慶は、次のようにコメントしています。
「岸田首相をはじめとするG7首脳は、気候危機を引き起こしてきた歴史的責任に向き合わず、ウクライナやその他の地域の平和を脅かしています。G7首脳コミュニケによって、日本がいまだに汚い化石燃料や危険な原子力に依存し、アンモニアや水素混焼などの『グリーンウォッシュの商人』としての役割を担っていることが明らかになりました。この象徴的な都市である広島で、平和で脱炭素の未来への道を切り拓くのは、世界で最も豊かな国々の特権的なリーダーたちではなく、市民なのです。」
問い合わせ先:
国際環境NGO 350.org Japan チームリーダー代行
伊与田昌慶(いよだまさよし)
Email: [email protected]
国際環境NGO 350.org Japan 広報担当(Communication Consultant)
髙橋英江(たかはしはなえ)
Email: [email protected]