2022年11月20日

【声明】COP27:損失と被害の基金で前進するも、脱化石燃料のシグナルを欠く

声明

2022年11月20日

国際環境NGO 350.org Japan

 

COP27:損失と被害の基金で前進するも、脱化石燃料のシグナルを欠く

日本の政府・金融機関・企業はパリ協定1.5℃のため脱化石方針の強化を

 

【エジプト、シャルム・エル・シェイク】20日未明、COP27シャルム・エル・シェイク会議は、決定文書を採択し、合意に至りました。

今会合で、損失と被害(Loss and Damage)対処のための資金が初めて議題に採択され、厳しい交渉を経て、損失と被害のための基金の設立が決まったことを歓迎します。損失と被害対処のための基金は、気候危機の影響に脆弱な途上国のため、世界中の市民社会が連帯し、COP26グラスゴー会議から強く訴えてきたものです。この合意は、気候災害に苦しむ脆弱な国々の人々の人権を守るための重要な突破口となります。

COP27合意では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新レポートをひいて、パリ協定1.5℃目標への決意を再確認し、温室効果ガス排出量の迅速かつ大幅な削減を呼びかけています。また、この決定的に重要な10年において、再生可能エネルギーの重要性を強調し、再生可能エネルギーへの大規模な投資が必要と述べています。また、公正な移行(ジャストトランジション)の作業計画の立ち上げも盛り込まれました。

しかし、多くの国々が最終盤まで粘り強く主張したにもかかわらず、すべての化石燃料(石炭、石油、ガス)のフェーズアウト(段階的廃止)を合意に位置づけることには失敗しました。昨年のグラスゴー気候合意をもとに、「石炭火力発電の段階的削減(フェーズダウン)」を維持するにとどまったのは残念です。未曾有の気候災害に苦しむ国の代表からの切実な訴えにもかかわらず、昨年のグラスゴー気候合意から野心的な前進を成し遂げることができませんでした。今会合には、化石燃料業界のロビイストが600人以上参加したとの報告もあり、その働きかけが合意を弱める結果を招いた懸念もあります。

化石燃料のフェーズアウトが遅れ、化石燃料を消費すればするほど、気候変動による損失と被害が拡大し、ますます多くの対応資金が必要となります。気候正義の実現に取り組むグローバルな市民社会は、化石燃料のフェーズアウトと再生可能エネルギーへの公正な移行を一日も早く現実のものとするため、それぞれの現場で行動し続けます。

350.org 事務局長のメイ・ブーヴィは次のようにコメントしています。

「気候変動の影響が極めて激しかった2022年、私たちはこの会議にやってきました。漸進的な変化では間に合いません。私たちは、1.5℃目標を維持し、気候危機の最悪の被害を回避するための抜本的な対策を求め、迅速で、公正で、公平な化石燃料の段階的廃止を求めました。しかし、COPはまたしてもその実現に失敗しています。

ですが、COPは『試合』ではなく、『成績表』のようなものです。これからも戦いは続きます。化石燃料のフェーズアウトを求める声は、かつてないほど大きくなっています。人々が街頭に立ち、新たな化石燃料プロジェクトを阻止するためのムーブメントを作り上げ、化石燃料産業に対して訴訟を起こしています。本当の対策の前進は、会議室の中ではなく、現実の世界で起こっています。私たちは負けていませんし、これからも決して負けることはありません。」

国際環境NGO 350.org Japanの広報・政策提言の伊与田昌慶は次のようにコメントしました。

「COP27において、日本政府にG7広島サミットの開催国としての準備ができていないことが明らかになりました。日本は、2019〜2021年にかけて化石燃料への公的資金支援が世界最大だとの最新報告をうけて、シャルム・エル・シェイクで強い批判にさらされました。交渉においても、パリ協定1.5℃目標に必要な『すべての化石燃料からのフェーズアウト(段階的廃止)』の合意へ、真に求められる貢献を果たせませんでした。むしろ、日本政府と日本企業は、化石燃料の利用を事実上延命させる意味を持つ『まやかしの解決策(False Solutions)』であるアンモニア/水素混焼、CCS/CCUS、次世代原子力を推進していることに批判の声が集まりました。

日本の岸田文雄首相は、最新のIPCC報告書を踏まえ、日本の気候・エネルギー政策と目標をただちに見直し、G7広島サミットまでに強化する必要があります。さらに、日本のメガバンクである三井住友銀行や三菱UFJ銀行は、アフリカの市民の声を聴き、東アフリカ原油パイプライン(EACOP)のような化石燃料事業には支援しないと明確に約束すべきです。さもなければ、日本の官民によるパリ協定への支持や「カーボン・ニュートラル」との宣言は、グリーンウォッシュだと非難されることになるでしょう」

StopEACOPキャンペーンのオマール・エルマウィは次のようにコメントしています。

「三井住友銀行と三菱UFJ銀行は、『東アフリカ原油パイプライン(EACOP)を支援しない』と表明していません。EACOPは、人々、自然、気候に悪影響を与えるだけでなく、人権侵害、事業の情報公開の拒否、抗議する市民団体への脅迫など、様々な問題を抱えています。私たちアフリカの活動家は、EACOPを阻止する決意を持ちながらCOPを後にします。日本の三井住友銀行や三菱UFJ銀行が、ウガンダ人とタンザニア人の意思を尊重することを求めます。EACOPは、アフリカから資源を奪うことを目的とした新植民地主義的なプロジェクトであり、アフリカは残された影響に苦しみ続けることになるのです。

私たちは日本政府と金融機関に対して、アフリカの豊富な再生可能エネルギーを支援するよう求めます。それは、私たちの生活や暮らしに悪影響を与えることなく、エネルギーへのアクセスが限られているアフリカ人に必要なエネルギーを供給する真の解決策なのです」

 

 

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※COP27シャルム・エル・シェイク会議

2022年11月6日から20日まで、気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)がエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されました。COP27には、アフリカをはじめ世界各地から国際環境NGO 350.orgのメンバーが多数参加し、交渉をウォッチするとともに、気候危機対策が前進するようアクションを行いました。350.org Japanからはスタッフの伊与田昌慶が現地参加しました。

 


国際環境NGO 350.org Japan https://world.350.org/ja/

担当者:伊与田昌慶 E-mail: japan[@]350.org