2022年11月16日

【プレスリリース】G20サミットで日米インドネシアが「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」締結を発表 日本はG7サミットまでに脱化石の強化を

プレスリリース

2022年11月16日

国際環境NGO 350.org Japan

 

G20サミットで日米インドネシアが「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」締結を発表

日本はG7サミットまでに脱化石の強化を

 

【インドネシア:バリ島、エジプト:シャルム・エル・シェイク】 15日、G20サミットに出席するため、各国・各地域のリーダーがインドネシアのバリにて一堂に会しました。

G20は、気候危機に対し最大の責任があります。これらの国とその企業・金融機関は、東アフリカ原油パイプライン(EACOP)やバングラデシュのマタバリ石炭火力発電所、インドネシアのジャワ9・10石炭火力発電所をはじめとした、気候に壊滅的な影響をもたらす化石燃料事業を、今なお推進しているからです。アジア各地の市民は、自然エネルギー100%への公正な移行を優先課題とするよう、G20に要請してきました。

インドネシアは世界最大の石炭輸出国であり、日本も主要な輸出先の一つです。また、インドネシアは発電の6割を石炭火力に依存しています。

15日、日本、米国等とインドネシア政府が「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」を締結したと発表しました。JETPのもと、インドネシアにおける脱化石燃料を支援するため、日本と米国等が200億米ドル(約2兆8千億円)を拠出すると発表されました。

インドネシアの石炭火力発電所を閉鎖し、電力部門の二酸化炭素(CO2)排出量を従来の想定より7年早い2030年にピークアウトさせることが、この融資の目的です。これに対しインドネシアは、電力部門の排出量を2030年までの2億9千万トンをピークとして、その後減少に転じさせると約束しています。

インドネシアのルフット・パンジャイタン海事・投資調整大臣は、「我が国の経済成長を妨げるような気候変動政策を、我々は望まない」と、かつてコメントしていました。しかし、インドネシアのJETPでは、化石燃料ガス事業への融資は認められていません。世界的なエネルギー危機の中、またエジプトでのCOP27最終週において化石燃料産業がエネルギー移行の協議を妨げている中、これは前向きな進展です。

インドネシアの市民団体は、気候資金およびJETPに関する指針や規則違反に関する詳細を提言してきました。公正なエネルギー移行を実現するには、JETPのもと決定されるインドネシアとの合意が、脱炭素を促す有意義なプロセスで実施される必要があります。また労働者や若者、産炭地の人々など、影響を受ける地域の人々にとって、民主的でアクセス可能なものでなくてはなりません。

インドネシアは、JETPを締結する世界で2番目の国となります。2021年のグラスゴー国連気候会議で世界初のJETP締結を発表した南アフリカについては、融資をめぐる透明性の欠如など、多数の問題が指摘されています。G20と同時期に開催され、現在2週目を迎えるCOP27では、先週の時点で南アフリカとのJETPについても進展が見られました。ンドネシアのJETP締結を受け、南アフリカのJETPに関する情報公開が以前よりも進みました。南アフリカおよびインドネシア両国が締結したJETPが、気候変動対策の途上国支援を進めていく参考になりうるため、世界中の国や市民団体が注視しています。

350.orgは、気候変動の影響が深刻なインドネシアおよび南アフリカ各地の支援者や市民団体と共に、パートナーシップの名称である「公正なエネルギー移行」の実現に必要な多数の指針を特定しました。またこれら指針は、化石燃料からの自立や、誰もがアクセスできる万人のための安価な自然エネルギーの確保に向けアントニオ・グテーレス国連事務総長が提案した「気候連帯協定(Climate Solidarity Pact)」の足がかりとしても有効です。

 

 

350.org Japan広報・政策提言担当の伊与田昌慶のコメントです。

「日本も関与するJETPによってインドネシアにおける石炭火力発電からの脱却が、民主的で透明性ある形で進められ、再生可能エネルギーへの公正な移行が加速することを期待します。JETPのような途上国の脱炭素化支援においては、化石燃料であるガスはもちろんのこと、アンモニア/水素混焼やCCS/CCUSなどといった、2030年までの大きな排出削減に役に立たず高コストな『革新的技術』を位置づけてはなりません。COP27で明らかにされたように、日本は2019〜2021年にかけて世界最大の公的資金による化石燃料支援国です。日本政府及び民間企業・金融機関が化石燃料拡大への関与を早急にやめ、支援先を省エネルギーと再生可能エネルギーに切り替えることで、JETPによる日本の貢献が真に評価されることになるでしょう。

他方、インドネシアの脱石炭火力発電を支援する日本政府は、G7で唯一2030年以降も石炭火力を維持する政策方針に拘泥し、今もなお石炭火力発電所の新設を許しています。このことは、日本においても『公正な移行』が必要であることの証左です。科学の分析によれば、日本のようなOECD諸国は2030年までに国内の石炭火力発電をゼロにする必要があります。日本は、途上国支援の強化と同時に、エネルギー政策の見直しを早急に始め、国内における脱石炭、脱ガス、脱石油を進める必要があります。遅くとも来年5月のG7広島サミットまでに脱化石燃料の新たな前進を示すことが、G7議長国としての最低条件です。」

 

350.orgアジア担当責任者のシシリア・ヌマラ・デヴィのコメントです。

「今週、インドネシアのG20およびエジプトの国連気候変動会議に出席する各国首脳は、石油・ガスへの支援増加や開発推進を提案することが懸念されています。こうした化石事業は、パリ協定と整合性がとれないばかりか、公正なエネルギー移行とも矛盾します。エネルギー移行に向けた途上国支援に、気候危機をいっそう深刻化させる『誤った解決策』を組み込むことのないよう、特に経済大国であるG20首脳をはじめとした世界中の指導者に、私たちは要請します。

G20バリサミットは、エネルギー移行の加速を求める市民社会の声を封じ込める動きが顕著でした。私たちは、これを遺憾に思います。市民を抑圧する政府は、一握りのエリートにだけ恩恵をもたらす誤った解決策しか選ばないからです。だからこそ私たちは、市民社会や気候変動による影響が深刻な地域社会が牽引する、説明責任と透明性が確保された公正なエネルギー移行を求めるのです。」

 

350.orgインドネシアチームリーダーのフィルダウス・カヤディのコメントです。

「インドネシアのエネルギー移行は、大勢の人々や地域の暮らしに影響をもたらすでしょう。JETPの協議では、透明性を確保し、特に気候危機の影響が深刻な地域を中心に、あらゆるレベルの人々を巻き込むべきです。これまでインドネシアでは、こうした決定において透明性が欠けていました。JETPの議論にエリートしか参加できなければ、誤った解決策の導入につながる懸念があります。実態を伴わない、環境や気候への見せかけだけの配慮を隠れ蓑に、巨万の富を有する企業がインドネシアで石炭やガス事業を進めるのを許すわけにはいきません。」

 

350.org南アフリカ公的資金キャンペーン担当のアリア・ケイジーのコメントです。

「JETPの発表以来、南アフリカの市民社会の一員である私たちは、合意の透明性、特に説明責任とガバナンスに注視してきました。COP27前に公表された、JETP実施の指針となる資金支援計画によって、先進国が提示する融資(特に商業融資)等に対し、市民はより厳しい姿勢で臨むべきであることが明らかになりました。融資の種類だけでなく、その融資が市場中心的なものであるか否か、関係する民間企業が何を優先するのかを精査する必要があります。公正な気候資金によって公正なエネルギー移行が進めば、地域経済におけるバリューチェーンが構築され、(化石燃料企業が独占的に所有するのではなく)社会全体が代替エネルギー源を所有することになります。つまり社会全体に恩恵がもたらされるということです。」

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※公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)

JETPに関する背景説明資料(英語)はこちらよりご覧いただけます

 

※COP27シャルム・エル・シェイク会議

2022年11月6日から18日まで、気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)がエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されています。COP27には、アフリカをはじめ世界各地から国際環境NGO 350.orgのメンバーが多数参加し、交渉をウォッチするとともに、気候危機対策が前進するようアクションを行います。350.org Japanからはスタッフの伊与田昌慶が現地参加中です。

 


国際環境NGO 350.org Japan https://world.350.org/ja/

担当者:伊与田昌慶 E-mail: japan[@]350.org