声明
2022年11月11日
国際環境NGO 350.org Japan
COP27バイデン大統領の演説をうけて
【エジプト、シャルム・エル・シェイク】11日、バイデン米大統領はCOP27で行った演説の中で、米国内および世界全体での気候変動への取り組みを表明しました。アフリカ全体と太平洋諸島を含む、開発途上にある国や地域の気候変動への適応を支援すると約束しました。さらにバイデン大統領は、大統領主導の途上国支援計画「適応とレジリエンスのための緊急計画(PREPARE)」への1億5,000万ドルの拠出を含め、計画の強化も約束しています。また途上国でのグリーンボンド発行を支援する「気候ファイナンス+」を通じ、公的資金を利用し大規模な民間投資を促すと述べました。
バイデン大統領は、自らが掲げたコミットメントを米国は守ると述べたうえ、最近可決された、気候変動対策の強化の「インフレ抑制法」に触れ、気候リーダーとしての米国の役割を改めて強調しました。
これに対し、350.orgのメイ・ブーヴィ事務局長は、次のコメントを発表しました。
「11日の演説で、バイデン大統領は、すべての国は相互に関係していると強調しました。その通りです。だからこそ米国は、インフレ抑制法を通じ得られた国内での成果をもとに、特に気候危機の原因にほぼ責任のない国々に対して、世界的に必要とされる支援を提供しなければならないのです。
米国は、世界最大の温室効果ガス排出国の一つです。地球の至るところで気候危機を深刻化させ、発展途上にある国や地域に回復不能な損害を与えたことについて、最大の責任を負う国です。この世界で真の気候リーダーとなるには、米国は自らの責任を自覚し、途上国が気候変動に適応するために必要となる資金を支払わなくてはいけません。さらに化石燃料事業への資金拠出を打ち切ることはもちろん、最も脆弱な国々が気候災害で被った『損失と被害』に対応できるよう、大規模な資金拠出を約束し、実行に移す必要があります。
気候危機に立ち向かうには、適応策への一定額以上の資金拠出が必要です。世界平均気温が0.1℃上昇するたびに重大な結果がもたらされるこの危機的状況においては、少しずつ対策を強化するという姿勢では間に合いません。もっと抜本的なアクションをただちに起こさなくてはいけないのです。米国は、率先して化石燃料産業の責任を追及し、何兆ドルもの化石燃料補助金を撤廃し、その資金を気候変動対策に回していくべきです。
グローバル組織である350.orgは、アフリカから太平洋の島々、南米から北米、そして欧州やアジア各地において活動しています。COP27において、そしてCOP27以降も、私たちは、世界の気候変動対策が公正に行われること、排出大国が責任を負うこと、そして自らが招いた被害について化石燃料企業の責任を追及することをめざし、行動します。」
350.orgアフリカ地域キャンペーン担当のチャリティ・ミグウィは、次の通りコメントしています。
「世界きっての温室効果ガス排出大国として、バイデン大統領が表明した内容は、気候危機の壊滅的影響に直面する地域の期待を大きく裏切るものです。米国が支援や対策を遅らせたり、怠ったりしている間に、アフリカ各地の地域コミュニティは、深刻化の一途をたどる気候災害に見舞われ続け、その被害に対する補償もないままです。しかも米国は、化石燃料に多額の資金を投入し続けています。“気候リーダー”による真の気候変動対策とは、化石燃料を段階的に削減したうえ、切実に必要とされる“損失と被害”への資金を提供し、さらにアフリカにおける自然エネルギーへの公正な移行を支援することです。これにより、他の先進各国に対し、至急行動を起こすよう強く促すことにもつながります。」
350.org太平洋地域担当責任者のジョセフ・シクルは、次の通りコメントしています。
「米国が2030年までにパリ協定の目標を達成する見込みだということは、太平洋地域にとって励みになります。ただし行動が伴わなければいけません。1.5℃目標をあきらめるなど、小島嶼国には到底受け入れられません。米国は、化石燃料の段階的廃止に取り組まなければ、私たちの島を壊滅させることに加担したことになります。莫大な化石燃料補助金を、真の気候変動対策のために使うべきです。必要なのは、保険制度でも気候適応策への小規模な投資でもなく、最も必要としているコミュニティが十分な資金にアクセスできるようにすることなのです。
気候危機の最悪の影響に見舞われている地域に暮らす私たちは、バイデン大統領が演説の中で、損失と被害に対応するための資金にあえて触れなかったことに失望しました。もし米国が真の気候リーダーであるのならば、化石燃料を段階的に廃止したうえ、汚いエネルギー源への資金を打ち切り、COP27において“損失と被害資金ファシリティ”の設立を支援するはずです。」
350.org北米責任者のジェフ・オルドワーは、次の通りコメントしています。
「バイデン大統領は、インフレ抑制法(IRA)を可決させるという重要な前進を成し遂げました。今後も私たちは、化石燃料の段階的廃止という真の気候解決策が、適切かつ公正に進められるよう取り組んでいきます。あらゆる地域社会の気候アクションにとって極めて重要なこの時期、バイデン大統領は、気候危機の最前線地域の人々や先住民リーダー、気候活動家の要請に耳を傾け、自らが掲げた気候コミットメントを果たすべく、意欲的な大統領令を執行していくことが求められています。COP27において、バイデン大統領は、気候変動をめぐる世界的なリーダーシップの義務と責任について強調しました。まずはそれを、米国から始めるべきです。バイデン政権は自らが掲げた約束に従い、温室効果ガスと環境汚染の主原因である化石燃料の生産、輸出、消費に直接介入しなければいけません。さらに気候非常事態を宣言し、米国内のみならず、世界各地のコミュニティを脅かす気候危機を招く、すべての新規化石燃料事業について、連邦政府として承認を拒否することで、気候リーダーシップを発揮すべきです。」
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※COP27シャルム・エル・シェイク会議
2022年11月6日から18日まで、気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)がエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されています。COP27には、アフリカをはじめ世界各地から国際環境NGO 350.orgのメンバーが多数参加し、交渉をウォッチするとともに、気候危機対策が前進するようアクションを行います。350.org Japanからはスタッフの伊与田昌慶が現地参加中です。
国際環境NGO 350.org Japan https://world.350.org/ja/
担当者:伊与田昌慶 E-mail: japan[@]350.org