2022年11月4日

【プレスリリース】COP27エジプト会議に向けて世界の市民が「脱化石」を求める:アフリカの化石燃料事業の支援中止を求め、三井住友銀行に3万3417筆の署名を提出

プレスリリース

2022年11月4日

国際環境NGO 350.org Japan

 

COP27エジプト会議に向けて
世界の市民が「脱化石」を求める:

アフリカの化石燃料事業の支援中止を求め、
三井住友銀行に3万3417筆の署名を提出

 

気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)開幕を控え(※)、本日、国際環境NGO 350.org Japanは、巨大な化石燃料事業「東アフリカ原油パイプライン(EACOP)」への関与をやめるよう求める請願を三井住友銀行(SMBC)に提出しました。この請願には国内外から3万3,417筆もの賛同が寄せられました。

パリ協定の1.5℃目標を実現するためには、これ以上の化石燃料インフラを拡大させる余地はありません。しかし、EACOPは、完成すればウガンダとタンザニアを結ぶ世界最長の加熱式原油パイプラインとなり、年間3,300万トンものCO2排出増につながる懸念があります。そればかりか、建設予定地の住民への人権侵害、自然公園での自然破壊、ヴィクトリア湖等への環境汚染リスクをもたらします。このため、アフリカの気候活動家はEACOPの計画に抗議の声をあげています。

世界の数十もの金融機関・保険会社等は、次々に「EACOPを支援しない」とダイベストメント(投資撤退)の方針を表明しています。ところが、SMBCは、このEACOPを主導する仏トタルエナジーズ社の財務アドバイザーであり、30億ドルのプロジェクトファイナンスの共同幹事行です。今年の三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)の株主総会にて、太田純グループCEOは、「財務アドバイザーとして、EACOPにおかしなことがあれば正していく」と発言しており、EACOPへの関与が懸念されています。

3メガバンクのうち、三菱UFJ銀行も、EACOPを支援する可能性を否定していません。他方、みずほ銀行は、「環境・社会課題が円満に解決しない限り、EACOPへの支援はしない」と表明しており、同事業から距離を置いています。SMBC及び三菱UFJ銀行は、みずほ銀行を含む世界中の40以上の金融機関に倣い、「EACOPを支援しない」と速やかに表明すべきです。

国際環境NGO 350.org Japanの広報・政策提言担当の伊与田昌慶は次のように述べています。

「気候と平和の危機の中、日本を含む先進国政府が排出削減対策と途上国支援の野心を引き上げることができるか否かがCOP27の焦点です。日本政府が進めるアンモニア・水素混焼、次世代原子力、CCUS(炭素回収利用貯留)などは、決定的に重要な2030年までの大幅な脱炭素に間に合わない「まやかしの解決策(false solution)」です。気候科学を踏まえ、石炭のみならずガス・石油からの脱却も進め、持続可能な省エネ・再エネ100%への公正な移行へと踏み出すことが必要です。

これら政府レベルの対応と並んで重要なのが、民間の企業・金融機関の行動です。アフリカのCOPで排出削減が議論される裏で、日本の金融機関がアフリカの化石燃料開発を後押しすることがあってはなりません。とりわけEACOPはアフリカの気候市民運動の象徴となっています。日本の我々も気候正義のため、アフリカの市民と連帯の声をあげる必要があります」

 

※COP27シャルム・エル・シェイク会議

2022年11月6日から18日まで、気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)がエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されます。COP27には、アフリカをはじめ世界各地から国際環境NGO 350.orgのメンバーが多数参加し、交渉をウォッチするとともに、気候危機対策が前進するようアクションを行います。350.org Japanからはスタッフの伊与田昌慶が現地参加の予定です。

 

請願書「東アフリカ原油パイプライン融資にNO!」全文

三井住友銀行、スタンダード銀行、ならびにスタンビック銀行:

東アフリカ原油パイプライン(EACOP)は、建設予定地の住民や環境、そして世界の気候に、到底受けれられないリスクをもたらします。この地域における石油探査および開発については、すでに住民の強制移住などの人権侵害が指摘されており、新たな原油パイプライン建設は、こうした人権侵害をいっそう深刻化させる恐れがあります。パイプラインのせいで土地を追われ、移住を余儀なくされる、大勢の住民たちの生活や雇用が脅かされることになるからです。

原油パイプラインは、ビクトリア湖盆地をおよそ400㎞にわたり横断して建設されます。ビクトリア湖は、この地域の住民3000万人以上の生活を直接支えているため、ひとたび原油流出事故が起きた場合、人々に壊滅的な影響をもたらします。

さらに世界が気候危機に突入しようとする中、このパイプラインによって輸送される原油が実際に消費された場合、建設予定国が期待する経済利益をはるかにしのぐ、甚大な影響が気候にもたらされることになるでしょう。地球にはもう、この種の大規模石油インフラを新設するための炭素予算など残されていません。建設予定地に暮らす人々や野生生物、生態系全体に計り知れない危険を及ぼすほか、ひとたび建設されてしまえば、自然豊かなウガンダのマーチソン・フォールズ国立公園でも、原油採取事業が行われる恐れがあります。

一方、東アフリカ原油パイプラインで輸送される原油のほとんどは輸出されることになるため、地元住民に直接恩恵をもたらすことはありません。富をもたらすどころか、アフリカにおける原油採取は、往々にして「資源の呪い」という現象と関連づけられてきました。資源の豊富さとは対照的に、もはや解決し得ない極度の貧困に陥ってしまうのです。けれど今ならばまだ、ウガンダもタンザニアも、資源の呪いを回避することは可能です。私たちは、この事業への融資中止を公式に表明するよう、三井住友銀行、スタンダード銀行、ならびにスタンビック銀行に強く訴えかけます。

 

 


国際環境NGO 350.org Japan https://world.350.org/ja/

担当者:伊与田昌慶 E-mail: japan[@]350.org