2022年11月1日

【プレスリリース】29カ国55団体が日本政府の「誤った対策」に反対の声:COP27で化石燃料事業への支援停止を表明するよう要請

プレスリリース

2022年11月1日

 

29カ国55団体が日本政府の「誤った対策」に反対の声

COP27で化石燃料事業への支援停止を表明するよう要請

 

2022年11月6日からエジプトで開かれる国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)を前に、11月1日、29カ国55団体が岸田文雄首相に対し、誤った気候変動対策の推進を止め、化石燃料支援の停止をコミットするよう求める要請書を提出した。

 

日本政府は、水素やアンモニア、LNGなどの化石燃料をエネルギー転換(トランジション)の方策の一部として推進しており、国内外から批判の声が高まっている。

FoE Japanの深草亜悠美は「日々気候変動の影響が深刻になっている。損失や被害が途上国を中心に広がっており、緩和や適応だけでなく、すでに生じている被害への対策資金も必要だ。日本政府の提案する支援策は、化石燃料に依存したものばかりで、温暖化する地球にさらに火を放っているようなものだ」とコメント。

Asian Peoples Movement on Debt and Development(APMDD、債務と開発に関するアジアの民衆運動)のリディ・ナクピルは「気候危機がグローバル・サウスの人々やコミュニティを破壊しているにもかかわらず、化石燃料産業には依然として莫大な資金が流れている。日本政府が化石燃料に水素とアンモニアを混合することを提案しているのはその一例だ。私たちは日本政府に対し、再生可能エネルギーシステム、適応、損失と損害により資金を向けるよう求める。それこそが人々と地球のために必要だ」と指摘した。

インドネシアの市民社会団体も同日、岸田首相宛ての要請書「『公正なエネルギー移行』の名の下に インドネシアでの化石燃料の延命や環境・生活破壊はもう止めて」(41団体署名)をジャカルタの日本大使館に提出するとともに、誤った対策の押し付けを止めるよう求めるアクションを大使館前で行った。

在インドネシア日本大使館前にて(2022/11/1)

日本政府は、化石燃料事業に対し最も多くの公的資金を投じている国でもある。本日発表されたOil Change InternationalとFoE USによるレポートによると日本は2019年から2021年の間に、年間平均106億米ドル(1兆5千億円, 1ドル=145.36円)の公的資金を化石燃料事業に投じており、G20諸国中で最大であった。

Oil Change Internationalの有馬牧子は「化石燃料事業への公的資金供与を条件付きで2022年末までに停止するというG7のコミットメントがあるにもかかわらず、日本政府は巨額の資金を化石燃料事業に費やしている。日本政府は化石燃料由来の水素やアンモニアを「脱炭素」という名目で推進しているが、水素やアンモニア事業への支援は、化石燃料事業と関連企業を支援することと同じだ。」とコメントした。

350.org Japanの横山隆美は「国連気候変動枠組み条約事務局は、各国が現在の排出削減対策を実行しても今世紀末の気温上昇は2.6 度になる可能性が高いと発表した。1.5度の気温上昇に抑えるためには劇的な削減が必要であり、水素、アンモニアなどを利用した漸進的な対策では全く不十分である。」と訴えた。

化石燃料依存からの脱却なしに、気候危機を解決することはできない。すでに深刻な被害が生じている中、日本政府による化石燃料支援は気候変動を悪化させるだけである。

Please read our petition letter for the details

 

 

日本政府に対し「誤った対策」の推進をやめ COP27で化石燃料への資金供与停止を約束することを求めます

2022年11月1日

内閣総理大臣 岸田 文雄 様

日本政府は、化石燃料への世界最大の公的資金供与国であり、化石燃料の利用を長期化させる技術を推進している。日本政府は、エネルギー分野の脱炭素化を口実に、水素・アンモニア、二酸化炭素回収・貯留(CCS)、原子力、バイオマス、液体天然ガス(LNG)を国内外で積極的に推進している。第27回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP27)に向け、29カ国56団体は日本政府に対して、化石燃料への国際的な公的支援を終了し、気候危機に対する「誤った対策」の推進を止めるよう要請する。

気候危機は、人々と地球に対する存亡の危機である。2022年6月からの豪雨により、パキスタンは国土の3分の1が水没する壊滅的な被害を受けた。フィリピンでは超大型台風「ノルー」が襲来し、数千人が避難を余儀なくされている。森林火災は悪化し、動物を死に追いやり、国土を荒廃させている。日本に住む人々も、猛暑、大型台風、豪雨の影響を受けている。地球温暖化を1.5度未満に抑えようとしている中、このような誤った対策を試みている時間はない。

水素とアンモニアの混焼は化石燃料への依存度を高める

現在、利用可能な水素とアンモニアのほとんどは化石燃料由来であり、再生可能エネルギーを使って製造されたグリーンな水素とアンモニアはほとんどない。水素とアンモニアは、燃焼時には温室効果ガスを排出しないが、製造時、および輸送時に大量の温室効果ガスを排出する。最新鋭の設備を使っても、アンモニア1トンを生産するのに約1.6トンのCO2が排出される。同様に、水素も「脱炭素型」の燃料とは言い難い。水素とアンモニアの混焼による温室効果ガス排出削減効果は、かなり限定的なものだ。さらに、ブルー水素の混焼は、従来のガス火力発電よりも多くの温室効果ガスを排出しうることが研究により分かっている。

日本政府による水素・アンモニア混焼の推進は、既存の火力発電の延命につながっている。例えば、国際協力機構(JICA)は、インドネシアでの2060年までのカーボンニュートラル達成に向けたロードマップを策定した。そして、このロードマップの実現に向けて、アンモニア、水素、LNG(CCS付き)を3つの主要燃料と位置づけること、短期的には既存石炭火力発電所におけるアンモニアやバイオマス混焼の実施を優先的に支援すること、2051年以降は水素火力(水素は輸入ガスへの依存を想定)が電源構成の大きな割合を占めることを提案している。すでにインドネシアでは、日本企業が相次いで事業化調査や実証事業を発表している。

またJICAは政府開発援助(ODA)を通じて、バングラデシュ政府に対する「統合エネルギー・電力マスタープラン」の策定に関する技術支援を行っており、水素及びアンモニア混焼による火力発電を大規模導入する計画だ。これは、2030年頃に50%のアンモニア混焼の石炭火力発電を導入するなど、非現実的な想定に基づいている。2022年現在、日本企業は20%混焼の実現に向けて実証試験を行っている段階である。再生可能エネルギー利用の可能性は、他のJICA調査報告書と比較して軽視されている。

水素、アンモニア、CCSは、温室効果ガス排出量を削減できないばかりか、経済的・技術的な不確実性がつきまとう。ブルー水素・アンモニアの利用の前提となるCCSは、ほとんど実用化されておらず、高コストやCO2回収の不完全さなどの問題が指摘されている。これらの燃料や技術をエネルギー移行に必要なものとして支援することは、誤った対策の押し付けに他ならない。日本政府は、このような誤った対策を推進することを直ちにやめるべきである。

LNGは「トランジション・エネルギー 」ではない

日本政府は、アジアをはじめ世界各地でLNG市場の拡大を推進しているが、これは脱炭素化、エネルギー安全保障、環境保全に大きなリスクをもたらすものである。日本のエネルギー安全保障の名の下にこういったガス開発支援が行われているが、化石燃料ガスの拡大は気候変動対策と矛盾する。また、ガス価格高騰が続く中、日本を含むアジア諸国のエネルギーの安定供給を損なう。

IPCCの試算によると、現在稼働している化石燃料インフラおよび計画中のインフラを予定されている稼働年数動かすだけで、地球を2度以上温暖化させるのに十分なCO2が排出される。気候科学によれば、ガスを含む新規の化石燃料インフラを導入する余地はないのである。また、シンクタンクのカーボン・トラッカーは、ガス火力発電所を2045年までに段階的に廃止する必要があり、先進国はそれ以前に廃止する必要があると指摘している。したがって、これらの事業への投資は回収されず、座礁資産となる可能性が高い。

さらに、ガスの主成分であるメタンは、地球温暖化への寄与が過小評価されてきた。人為的なメタン排出の40%はエネルギー利用であることから、メタン排出削減の観点からも化石燃料の使用は低減されなければならない。

また、LNG開発に伴う環境問題や社会問題も無視できない。国際協力銀行(JBIC)と大阪ガスは、フィリピン・バタンガス州のイリハンLNG輸入ターミナル事業に出資している。この事業によって、「海のアマゾン」と呼ばれるヴェルデ島海峡(Verde Island Passage: VIP)の豊かな海洋生態系に悪影響をもたらすと警鐘が鳴らされている。また、日本の官民が海外で進めてきた多くのガス開発事業において、環境破壊や先住民族への人権侵害が報告されている。日本の官民によるガス事業への投資は、エネルギー移行を遅らせるだけでなく、地域住民や環境を危険に晒しているのである。

日本は化石燃料に対する数十億規模の資金供与を止め、クリーンで持続可能なエネルギーに移行を

これまで石炭火力発電への日本の公的支援が注目されてきたが、ガスや石油への公的資金の投入額も世界最大級である。Oil Change InternationalとFoE U.S.のデータによると、2018年から2020年の間に、日本は石油、ガス、石炭の開発事業に少なくとも年間約100億ドルを供与していた。日本政府が公的金融機関を通じて海外向けに行った化石燃料への融資は、再生可能エネルギーへの日本による海外向け支援(年平均13億ドル)の8倍以上であった。

2022年のG7サミットで採択されたコミュニケで、G7首脳は、2022年末までに、化石燃料エネルギー分野への新規の国際的な公的支援を終了することに条件付きで約束した,。日本は、来年のG7議長国として、また気候危機の歴史的責任が大きい国として、化石燃料事業に対する公的支援の段階的廃止を直ちに大幅に進めるべきである。

エジプトで開催されるCOP27に向け、日本は真のコミットメントと気候変動対策を示す必要がある。気候変動は緊急の課題である。私たちは日本政府に対し、化石燃料への資金供与や誤った対策の推進をやめ、代わりにパリ協定の目標に沿った、地域社会のニーズを満たすクリーンエネルギーに資金をシフトすることを要求する。

呼びかけ団体(7団体)

Friends of the Earth Japan
350.org Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
メコン・ウォッチ
気候ネットワーク
Oil Change International
Asian Peoples’ Movement on Debt and Development (APMDD)

賛同団体(29カ国48団体)

350.org, Global
NGO Forum on ADB, Regional-Asia
Jubilee AustraliaResearch Centre, Australia
GLOBAL 2000, Austria
Bangladesh Environmental Lawyers Association, Bangladesh
BangladeshWorking Group on External Debt (BWGED),Bangladesh
CLEAN (Coastal Livelihood andEnvironmental Action Network), Bangladesh
Friends of the Earth Europe, Belgium
NOAH – Friends of the Earth Denmark,Denmark
CESTA Friends of the Earth El Salvador, El Salvador
Maan ystävät / Friends of the Earth Finland, Finland
Les Amis de la Terre, France
urgewald, Germany
Alliance for Empowering Rural Communities , Ghana
AbibiNsroma Foundation. Ghana
ENVIRONICS TRUST, India
Centre for Financial Accountability, India
National Hawker Federation,India
Wahana Lingkungan Hidup Indonesia (WALHI) .Indonesia
AEER, Indonesia
Trend Asia, Indonesia
ReCommon, Italy
地球救出アクション97(Save the Earth! Action97), Japan
一般社団法人大磯エネシフト, Japan
認定NPO法人地球環境市民会議(CASA), Japan
Sahabat Alam Malaysia (Friends of the Earth Malaysia), Malaysia
Climate Action Network Southeast Asia, Malaysia
Oyu Tolgoi Watch, Mongolia
Rivers without Boundaries, Mongolia
FoE Nepal, Nepal
Both ENDS, Netherlands
Just Finance International, Netherlands
Aotearoa Plastic Pollution Alliance, Aotearoa New Zealand
AssociationNigérienne des Scouts de lEnvironnement (ANSEN), Niger
Pakistan Fisherfolk Forum, Pakistan
Indus Consortium, Pakistan
Center for Energy, Ecology, and Development (CEED), Philippines
People of Asia for Climate Solutions, Philippines
Center for Renewable Energy and Sustainable Technology (CREST), Philippines
Korea Federation of Environmental Movement (KFEM) – FoE Korea, Republic of Korea
Friends of the Earth Africa, South Africa
SFOC, South Korea
Jordens Vänner / Friends of the Earth Sweden, Sweden
Taiwan Watch Institute, Taiwan
The Corner House, UK
Mighty Earth, USA
Friends of the Earth United States, USA
Vietnam Zero Waste Alliance, Vietnam

Cc:

外務大臣 林 芳正 様
財務大臣 鈴木 俊一 様
経産大臣 西村 康稔様
環境大臣 西村 明宏 様
外務副大臣 武井 俊輔 様
外務副大臣 山田 賢司 様
財務副大臣 井上 貴博 様
財務副大臣 秋野 公造様
経済産業副大臣 中谷 真一 様
経済産業副大臣 太田房江様
環境副大臣 山田 美樹 様
環境副大臣 小林 茂樹 様
国際協力機構 理事長 田中 明彦 様
国際協力銀行 代表取締役社長 林 信光 様
日本貿易保険 代表取締役社長 黒田 篤郎 様

 

 

Contact: 

Friends of the Earth Japan

1-21-9 Komone, Itabashi-ku, Tokyo, 173-0037

tel: (+81) 3-6909-5983 fax: (+81) 3-6909-5986 email: [email protected]