2022年5月27日

【声明】脱石炭をめざすG7で孤立を深める日本:政府はパリ協定1.5℃目標のため2030年までの脱石炭にコミットすべき

2022年5月27日

国際環境NGO 350.org Japan

 

脱石炭をめざすG7で孤立を深める日本:
政府はパリ協定1.5℃目標のため2030年までの脱石炭にコミットすべき

 

27日、ドイツのベルリンで開催されていたG7環境・気候・エネルギー大臣会合は、成果文書を発表しました。

ロシアがウクライナに侵攻し、エネルギー問題が注目されていますが、それと表裏一体にある気候変動対策も、今会合の最重要課題でした。今回の合意は、G7諸国の責任の大きさに比して不十分ではあるものの、昨年のグラスゴー気候合意で示された「1.5℃目標」への決意をもとに、気候変動への対策強化を続ける意思を示したものといえます。他のG7諸国が脱石炭・脱化石燃料の政治合意を実現させ、気候危機の対応を進めようとした中、日本政府が後ろ向きな交渉姿勢でこの会合に臨み、その成果を弱めたことは極めて残念です。

この成果文書は、石炭のみならず化石燃料全般について、新たな公的国際支援を2022年末までに止めることが盛り込まれた一方、石炭火力発電フェーズアウトの期限の合意は見送られました。この脱石炭の期限に唯一反対したのが日本だったと伝えられています。科学者たちは、パリ協定の目標のためにはOECD諸国は2030年までに脱石炭が求められると再三指摘してきました。今回の日本政府の科学に背を向けた交渉姿勢は、G7として脱石炭の強い政治的意思を発信する機会を失わせるものです。

日本政府は、2030年時点で国内の発電量に占める石炭火力発電の割合を19%にする方針です。アンモニア混焼や炭素回収利用貯留(CCUS)を用いた石炭火力発電は、「排出削減措置が講じられていない(Unabated)」ものには当たらないとして、2050年に向けて活用を続ける方針です。しかし、このような革新的技術はその実用化の見通しがたっておらず、安価な再生可能エネルギー電力に比べてコストも高く、信頼性のない解決策として国際的な批判を受けています。また、化石燃料由来のアンモニアは、石炭火力発電に20%混焼してもCO2削減効果は数%程度しかなく、排出ゼロが求められる時代には不適格です。国内の石炭火力発電所のすべてで20%のアンモニア混焼を実施するためには、現在の世界全体のアンモニアの貿易量に匹敵する量のアンモニアが必要とされ、実現可能性が乏しいと言わざるをえません。

ロシアによるウクライナへの侵攻とエネルギー問題は、国外の化石燃料への依存を続けることの不安定さを浮き彫りにしました。国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル事務局長も「我々は気候変動の解決をロシアによる攻撃のさらなる犠牲にしてはならない。クリーンエネルギー及びエネルギー効率への投資拡大の必要性は、今日、これまで以上に高まっている」と述べています。気候変動の解決のみならず、エネルギー安全保障を向上させ、大気汚染を改善し、クリーンな雇用を増やし、中長期的なエネルギーコストを抑えるためにも、最優先されるべきは省エネルギーであり、再生可能エネルギー100%への公正な移行です。

日本政府は、パリ協定1.5℃目標への決意を改めて共有し、グラスゴー気候合意が求める今年中の2030年目標の強化と、2030年脱石炭のロードマップづくりにただちに着手する必要があります。そのためにも、化石燃料産業に投入されている巨額の資金の流れを、省エネルギーと再生可能エネルギーへと転換させなければなりません。また、来月予定されているG7サミットにおいて、G7としての脱石炭・脱化石への政治意思の表明を妨げるようなことはあってはなりません。

日本が脱炭素の国際合意の推進を阻むのではなく、脱炭素社会に向けた世界のリーダーになることを強く要望します。

 

 


本件に関する問い合わせ先:

国際環境NGO 350.org Japan https://world.350.org/ja/

担当者:伊与田昌慶 E-mail: japan[@]350.org