2022年3月3日

【プレスリリース】日本の金融機関もアフリカの再生可能エネルギーシフトを阻害:最新の調査報告書で明らかに

プレスリリース

2022年3月3日

国際環境NGO 350.org Japan

 

日本の金融機関もアフリカの再生可能エネルギーシフトを阻害:
最新の調査報告書で明らかに

 

バンクトラック(Banktrack)などの国際NGOが、350 Africaなど19のアフリカのパートナー団体(※1)と共同でまとめた調査報告を発表しました。日本を含む先進国の金融機関による巨額の資金提供によって、アフリカにおける脱化石燃料が進まず、再生可能エネルギーへの公正な移行が阻害されていることが明らかとなりました。

 

本調査報告の主なポイントは次の通りです。

 

  • パリ協定の採択後の2016年から2021年6月までの間に、西、東、中央、南アフリカでは964ものガス・石油・石炭プロジェクト(※2)が存在しました。この964のプロジェクトには406の企業が関与しています。その大部分は、アフリカ以外に本拠地がある企業です。
  • そのうち、金融情報にアクセスでき、かつ大規模で重要な58のプロジェクトと24の企業を抽出し、分析しました。その結果、同期間に、公的金融機関及び民間金融機関が、少なくとも1,323億米ドル(約15兆2145億円 ※3)の融資と引受を、当該化石燃料事業および関連企業に提供していたことが明らかになりました。
  • 同期間、日本の金融機関は、アフリカの化石燃料事業および関連企業に対して少なくとも143億米ドル(約1兆6445億円)もの資金を提供しており、それは全体の10.3%を占めます。日本の143億米ドルのうち、91億米ドルが民間金融機関、52億米ドルが公的金融機関によるものです。
  • 日本の国際協力銀行(JBIC)と三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)は、アフリカの化石燃料事業・企業への支援額では、世界のワースト15に含まれています。JBICが第9位、SMBCグループが第11位です。日本の輸出信用機関である日本貿易保険(NEXI)も、30億米ドル(約3450億円)もの融資について、保証という形で支援しています。
  • 日本の3メガバンクであるSMBCグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)は、いずれも、問題の大きいモザンビークLNG事業を支援しています。また、SMBCグループはナイジェリアLNG第7トレイン拡張事業や東アフリカ原油パイプライン(EACOP)に、MUFGとみずほFGはガーナ沖油ガス田事業(OCPT鉱区)にも関与しており、国際的な批判を招いています。
  • 日本の金融機関によるアフリカの化石燃料事業・企業への融資額(プロジェクトファイナンスとコーポレートファイナンス)は、次の表の通りです。

 

 

化石燃料事業はアフリカのためになっていない:金融機関のためにもならない

化石燃料業界や金融機関は、化石燃料事業がアフリカの発展に貢献していると主張しますが、それは事実と異なります。本調査で取り上げたモザンビークLNGやガーナ沖油ガス田事業などが示す通り、アフリカに多くの化石燃料事業が存在しているにもかかわらず、同地域におけるエネルギー貧困の解決は十分に進んでいません。劣悪な契約条件、債務などは、これらの化石燃料事業が、アフリカの人々のためではなく、それ以外の企業や国の利益のためのものであることを示しています。化石燃料事業は、アフリカにおいて地域コミュニティや自然環境を破壊し、化石燃料への依存を高めさせ、増大する国家債務や政府の赤字と相まって、大規模な失業や貧困の増加につながりかねません。

石油・ガス・石炭のプロジェクトに金融支援を行うことは、金融機関にとってもリスクです。再生可能エネルギーのコストが安価になる中、化石燃料インフラは座礁資産となる恐れがあります。一方、世界各地の気候変動訴訟により、企業は排出量の削減を余儀なくされています。また、アフリカのこの業界にみられる透明性の欠如、汚職、不正な資金の流れ、深刻な環境・人権侵害によって、金融機関への評判リスクもますます高まっています。さらに、気候危機を抑制することができなければ、世界の金融システム全体に対する脅威となります。

 

アフリカで再生可能エネルギーへの公正な移行を

本報告のアフリカのパートナー団体、およびアフリカのネットワークや市民社会は、再生可能エネルギーへの公正な移行(環境、社会、政治、経済、ジェンダーの公正に根ざしたアプローチ)を進めなければ、アフリカ大陸を長い間苦しめてきた不公正がこれからも続くだろうと強調しています。

公正な移行のためには、金融機関は石油・ガス・石炭の新規事業に対する資金支援を直ちに停止するとともに、既存の事業に対する支援を段階的に減らし、ゼロにしなければなりません。化石燃料の代わりに、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを支援すべきです。さらに、これらの再生可能エネルギーの所有権を、アフリカの外に本拠地を持つ多国籍企業からアフリカのコミュニティへと移行させることも必要です。

アフリカの人々はほとんどCO2を排出していないにもかかわらず、最も深刻な気候変動の影響を受けています。そのような地域でコミュニティや環境・人権状況を悪化させながら進められる化石燃料事業に日本の公的・民間金融機関が加担し、その利益を吸い上げていることは、気候変動の時代の植民地主義と言えます。今こそ、日本を含む世界の金融機関は、脱化石燃料へと舵を切るべきです。

 

 

渡辺瑛莉(350 Japanシニア・キャンペーナー): 

国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)のような政府系金融機関、そして3メガバンクなどの民間銀行は、化石燃料の新規や拡張事業への支援をただちにやめ、既存事業から段階的にフェーズアウトし、代わりにアフリカの再生可能エネルギーのポテンシャルを開花させ、持続可能で公正な社会への移行を支援すべきです。近年、3メガバンクは新規石炭事業には融資しない方針を掲げましたが、看過できない抜け穴を残したままです。また、ガス・石油の案件については厳格なルールが一切なく、今も巨額の支援が続けられ、世界の気候の安定とアフリカの人々の環境と人権をリスクにさらしています。カーボンニュートラルは脱石炭のみでは達成できません。タイムリミットが迫る中、すべての化石燃料について厳格な投融資方針を早急に策定し、これを誠実に実施する必要があります。

 

Landry Ninteretse(350 Africaリージョナルディレクター): 

アフリカの人々は、最も大量の温室効果ガスを排出する先進国の人々によって、深刻な気候変動の影響を受けています。歴史的に大排出国であったヨーロッパ、北米、東アジア、オーストラリア、日本などの富裕国は、アフリカ諸国における「公正な移行」とエネルギー移行計画に資金を提供するだけでなく、化石燃料産業への新たな投融資をやめる責任を負っています。今こそ、政府や金融機関が、アフリカ諸国を化石燃料への依存に陥らせるのではなく、化石燃料から脱却させ、持続可能なクリーンエネルギーへの移行へ方向転換させるためにその資金を投入すべき時です。

 

Isabelle Geuskens(Milieudefensie Just Transitionシニア・プログラムオフィサー、および本報告書の主執筆者):

アフリカは、再生可能エネルギーのポテンシャルが最も大きな大陸です。しかし、現在および将来の気候変動を考慮すると、ただちに必要な、よりレジリエントで持続可能な未来の構築に向けて、このポテンシャルを活かせていません。一方、私たち先進国の金融機関や産業界は、化石燃料の開発を煽り続け、新しい化石燃料事業に何十億ドルも注ぎ込み、アフリカ大陸を化石燃料依存に陥らせています。アフリカのための公正な移行とは、化石燃料への資金の流れを止め、何よりもまずアフリカの人々の利益となる再生可能エネルギーの未来に貢献することです。

 

Bronwen Tucker、パブリック・ファイナンス・キャンペーン共同マネージャー(オイルチェンジ・インターナショナル):

アフリカにおける化石燃料プロジェクトの資源と利益は、同地域にエネルギーアクセスや公共財を提供するのではなく、圧倒的にアフリカ大陸の外に流出してしまっています。今、富裕国は、公的金融機関を通じて、化石燃料に再生可能エネルギーの4倍もの資金提供を続けることで、アフリカ大陸に危険で不平等な未来を押し付けようとしています。これらの政府は、アフリカにおける公正な移行を妨げることのないよう、化石燃料への資金提供を止め、代わりに気候資金と債務免除の規模を劇的に拡大するべきです。

以上

 

注:

※1 アフリカのパートナー団体:350Africa.org、 AFIEGO(ウガンダ)、アフリカ石炭ネットワーク、Alerte Congolaise pour l’Environnement et les Droits de l’Homme (ACEDH)(コンゴ民主共和国)、AERC(ガーナ)、 Centre for Alternative Development(ジンバブエ)、Environment Governance Institute (EGI)(ウガンダ)、Friends of the Earth(ガーナ)、Friends of the Earth(トーゴ)、Innovation for the Development and Protection of the Environment (IDPE) (コンゴ民主共和国)、Justiça Ambiental! /Friends of the Earth Mozambique、Laudato Si’ Movement、Lumière Synergie pour le Développement (LSD) (セネガル)、Save Okavango (SOUL)、Solidarité pour la Réflexion et Appui au Développement Communautaire (SORADEC) (コンゴ民主共和国)、Synergie de Jeunes pour le Développement et les Droits Humains(SJDDH)(コンゴ民主共和国)、Woman Environmental Programme(ナイジェリア)、WoMin and Zimbabwe Environmental Law Association(ジンバブエ)

※2 運転中・建設中・計画中・検討中・中断中のものを含みます。

※3 このプレスリリース中の日本円は、1米ドル=115円にて換算した参考値です。

 

参考:

Banktrackによるプレスリリース(英語)はこちら

調査報告全文(英語)はこちら

 

 


本件に関する問い合わせ先:

国際環境NGO 350.org Japan、伊与田昌慶、[email protected]