プレスリリース
2021年12月17日
国際環境NGO 350.org Japan
松島火力発電所2号機のガス化発電の設備新設に関わる条件付き容認の撤回を
12月16日、山口環境大臣は電源開発株式会社による松島火力発電所2号機のガス化発電の設備新設に対し、条件付きながら容認する意見書を公表しました。
先月イギリス・グラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約締結国会議)では、パリ協定の1.5℃目標を目指すことが国際的に合意されています。合意文書には二酸化炭素(CO2)の排出量を2030年までに2010年比で45%削減すること、そして排出削減対策を講じていない石炭火力の段階的削減が明記されました。このような中、国際的に排出削減対策とは認められておらず、限定的な削減効果しかない対策に基づく設備新設を容認したことは、国際的合意に反するだけでなく日本の排出削減目標達成にもブレーキをかけるものであり、全く容認できず即時撤回を求めます。
異常気象の頻発や生態系の崩壊など気候変動リスクが深刻化する中、本事業は今後数十年にわたりCO2排出を続けることを意味し、気候変動リスクの拡大につながります。また、将来、国際的にさらに厳しい気候危機対策が導入された場合に、座礁資産化し投資家に損害を与える事態にもなり得ます。
本事業は、40年を超えた老朽石炭火力を効率化し、10%程度のCO2削減を見込んで、2050年までにバイオマスやアンモニアの混焼、CCS(炭素回収・貯留)技術も活用し、ゼロエミッション火力を目指すとされていますが、こうした技術の目処は全く立っていません。環境十全性だけでなく、経済性の観点からも、とりわけ再生可能エネルギーがアジアも含む多くのマーケットで著しい価格低下が起き、石炭火力と競争力を持ちつつあることに鑑みれば、これらの技術に期待を寄せることは脱炭素化を遅らせるばかりでなく、日本企業の国際的競争力の低下や、日本経済の停滞にもつながりかねません。
今回の決定が前例となり、今後同様の石炭火力の延命が実行されて再生可能エネルギーの拡大など必要な対策が遅れれば遅れるほど、日本が国際的脱炭素化への潮流から取り残され、先進国としての地位を危うくし、責任を全うできないことを危惧します。
科学の要請では、1.5度目標を守るためには、石炭火力の新設だけでなく既存設備の拡張は容認できず、既存設備も先進国(OECD諸国)では2030年までに、世界全体でも2040年までに全廃が必要であり、本事業はこうした要請に完全に逆行します。
この決定の即時撤回を切に求めます。
本声明に対するお問合せ:
国際環境NGO 350.org Japan
[email protected] (代表:横山隆美)