2020年2月18日

【要請書】日本の損害保険会社 3 社に対してベトナム・ブンアン 2 石炭火力発電事業 への保険引き受けを行わないよう求める要請書

要望書

2020年2月18日

 

日本の損害保険会社 3 社に対してベトナム・ブンアン 2 石炭火力発電事業 への保険引き受けを行わないよう求める要請書

 

現在、ベトナムに建設予定のブンアン 2 石炭火力発電事業に対し、日本の大手損害保険会社である東京海上、MS&AD、SOMPO の 3 社による損害保険の引き受けが行われる可能性が高まっていることを踏まえ、 16 カ国の環境NGOなど 32 団体が、この事業への保険引き受けを行わないよう求める要請書を提出しました。

ブンアン2石炭火力発電事業については、小泉環境大臣がこの事業に対する公的支援が従来の日本政府の方針と整合しない点を追求し、海外の石炭火力発電事業への公的支援に関する日本政府の方針の問題を提起しています。

本提案書では、保険引き受けを行わないように求める理由を7つ挙げ、東京海上、MS&AD、SOMPO の 3 社に、ブンアン 2 石炭火力発電事業を含め新規の石炭火力発電事業への保険引き受けを行わないこと求めています。

東京海上ホールディングス株式会社

取締役社長 小宮暁様

MS&AD インシュアランスグループホールディングス株式会社

取締役社長 柄澤康喜様

SOMPO ホールディングス株式会社

グループ CEO 櫻田謙悟様

日本の損害保険会社 3 社に対してベトナム・ブンアン 2 石炭火力発電事業 への保険引き受けを行わないよう求める要請書

現在、ベトナムに建設予定のブンアン 2 石炭火力発電事業に対して、日本の大手損害保険会社である東 京海上、MS&AD、SOMPO の 3 社による損害保険の引き受けが行われる可能性が高くなっています。本 要請書に署名する私たち 16 カ国の 32 団体は、損害保険会社 3 社に対して、この事業への保険引き受け を行わないよう求めます。理由は以下の通りです:

1. パリ協定の目標を達成するためには、ベトナムのような途上国でも 2040 年までに石炭火力発電の運 転を完全に停止する必要があるため1、新規の石炭火力発電所が、この目標と整合性がないことは明 らかです。

2. 気候変動リスクの高まりの中で、三菱商事とともに本事業に出資していた香港の CLP ホールディン グスが撤退しました。また本事業への融資を検討していたスタンダード・チャータード銀行(英国)、 OCBC 銀行(シンガポール)、DBS 銀行(シンガポール)が撤退しています。

3. ベトナムにおいて、これ以上石炭火力発電への依存度が高くなれば、ベトナムの製造業にとって製造 過程における炭素排出量が多くなり、サプライチェーンにおける脱炭素を求めるメーカーからの注 文の機会を失い、ベトナムの国際競争力が低下することになります。

4. 建設予定地の周辺では、既設の石炭火力発電所や製鉄所などがあり、すでに水質汚染などの公害問題 を引き起こしています。ブンアン 2 石炭火力発電所が建設されることで、地元の公害問題が悪化し てしまいます。

5. ベトナムにおいても新規の石炭火力発電は経済的合理性がなくなりつつあります。2019 年 9 月に英 シンクタンクのカーボントラッカーが発表したレポート2によれば、、ベトナムにおいて 2022 年には太陽光発電の建設コストが既存の石炭火力発電の操業コストよりも安価になると分析されています。

6. アリアンツ、アクサ、スイス再保険、ミュンヘン再保険、チャブ、QBE など石炭関連事業への保険 引き受けを停止/制限する方針を掲げた保険会社は 19 社になり、これらの保険会社は元受け損害保 険市場の 13.6%、再保険市場の 47.6%を占めています。損保 3 社が新規の石炭火力発電への引き受 けを行うことは、このトレンドに逆行しています。石炭火力発電事業関連の再保険の引き受けが制限 されている中で、日本の損保 3 社による石炭火力発電事業の元受けリスクが高まっています。

7. 損保 3 社は、2018 年及び 2019 年の深刻な台風や洪水被害により、莫大な保険金支払いに直面して おり、保険料を次々に値上げしています。保険契約者により多くの負担を求める一方で、気候変動に よる被害をさらに深刻化させる新規石炭火力発電事業を支援し、そこから利益を得ようとする行為 は、倫理に反しています。

したがって、東京海上、MS&AD、SOMPO の 3 社は、ブンアン 2 石炭火力発電事業を含め新規の石炭火 力発電事業への保険引受を行わないことを表明するべきです。 本要請書につきまして、可能であれば 3 月 19 日までにお返事を頂けますと幸いです。ご検討よろしくお 願い致します。

脚注:
1: https://climateanalytics.org/publications/2019/coal-phase-out-insights-from-the-ipcc-special-report-on15c-and-global-trends-since-2015/

2: https://www.carbontracker.org/reports/here_comes_the_sun/

 

本要請書署名団体の詳細はPDFをご参照ください。


本件に関する問い合わせ先:

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝([email protected]