共同プレスリリース
2020年12月18日
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGO 350.org Japan
メコン・ウォッチ
脱石炭で他社から後れを取る住友商事・米シンクタンクが指摘
環境NGO5団体は、米国シンクタンクであるエネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)※1が発表した報告書「Overseas Coal Projects Raise Questions for Sumitomo※2」の日本語訳(邦題:海外石炭事業が住友商事に投げかける疑問※3)を公表しました。住友商事は西オーストラリア州にあるブルーウォーターズ石炭火力発電所(434MW)で融資借換が不可能になったことにより、約250億円の減損を計上し、2021年3月期(通期)の連結純損益が過去最大となる約1500億円の赤字(日本の大手総合商社では今期唯一の赤字)と見込まれています。同報告書では、住友商事の脱石炭に向けた動きは、他の大手総合商社から後れを取っていると指摘されています。
具体的には、三菱商事、丸紅、三井物産が一般炭炭鉱への投資から撤退した中、住友商事は2019年度に持分生産量を大幅に増加したことが問題視されています。石炭火力発電事業についても、丸紅がすでに3案件(南アフリカ・ボツワナ・フィリピン)の撤退を表明した中で、住友商事は、今後もバングラデシュへの新規案件(マタバリ・フェーズ2)への建設等を請け負う可能性があることなどが指摘されています。電力供給過剰となっているインドネシアやバングラデシュでは、住友商事が関与する石炭火力発電事業により、政府の財政負担の増大や電気料金の高騰が懸念されています。
著者であるサイモン・ニコラス氏※4は、「今後、投資家が石炭事業に対する制限を強化する中、日本の商社が投資家の注目を集める機会がますます増えるだろう。日本の商社の中でこの投資家からの圧力の高まりを最初に受けるのは、石炭に関して他の商社よりも動きの鈍い住友商事になりそうである」と述べています。
注釈:
※1:エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)は、エネルギーと環境に関連した金融・経済問題の国際的な研究を行っています。多様性、持続可能性、収益性に富むエネルギー経済への移行を加速させることを団体のミッションに掲げています。
※2:IEEFA, Overseas Coal Projects Raise Questions for Sumitomo
https://ieefa.org/ieefa-japan-%C2%A526-billion-loss-on-australian-coal-power-plant-raises-questions-for-sumitomo-and-its-investors/
※3:http://jacses.org/846/
※4:サイモン・ニコラス氏は、IEEFAのエネルギーファイナンス・アナリストで、オーストラリア在住。ロンドンのインペリアル・カレッジを優等学位で卒業。イングランド・ウェールズ勅許会計士協会フェロー。ロンドンとシドニーにて、ABNアムロ銀行、マッコーリー銀行、オーストラリア・コモンウェルス銀行に勤務し、金融部門に16年間携わってきました。
本件に関するお問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、担当:田辺・小林
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