共同プレスリリース
2020年12月17日
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO 350.org Japan
国際保険市場のロイズが脱石炭方針を策定
~適切な方向への一歩だが、直ちに全ての新規石炭事業への保険停止が必要〜
12月17日、ロイズ保険組合が環境・社会・ガバナンス(ESG)のレポート(※1)を発表しました。本レポートは、ロイズのマネージング・エージェントに対して石炭火力発電所建設、一般炭採掘、オイルサンド開発、北極圏での新しいエネルギー探査などを含めた様々な項目への保険引き受けを停止するよう求めています。環境NGOの国際ネットワークであるInsure Our Future キャンペーンは、ロイズの本方針が適切な方向への一歩であるとして歓迎していますが、その一方でより野心的で緊急な行動が必要であることを強調しています。
ロイズの本方針は、 Insure Our Future の4回目の報告書「Scorecard on Insurance, Fossil Fuels and Climate Change(※2)」(邦題:「未来に保険をかける~保険会社の化石燃料・気候変動対策スコアカード2020~(※3)」)がリリースされた直後に出たものです。同報告書は、欧州においては、ロイズ保険組合が石炭事業への保険引き受けを継続している最後の主要保険会社であることを明らかにしています。
Insure Our Future の欧州コーディネーターのLindsay Keenanは、「石炭火力発電所建設、一般炭採掘、オイルサンド開発、および北極圏での新しいエネルギー探査への保険引受を停止するロイズの新方針は正しい方向への一歩として歓迎します。しかし、本方針は2022年ではなく、直ちに実施されるべきです。さらに、ロイズが既存の方針を段階的に廃止する目標期日は、新規石炭開発事業およびタールサンド開発事業にまだ関与している企業に対しては2021年1月にするべきです。ロイズは既存の事業に対しては2030年を最終的な期日としていますが、気候科学と緊急な行動の必要性と整合的ではありません。私たちは、これらの提案が受け入れられるまでロイズに働きかけていきます」と述べています。
ロイズ市場は2018年に、世界のエネルギー保険料総額の約40%(※4)を占めていたと推定されています。ロイズ保険組合の管理者および組合メンバーは、気候危機を助長する事業に保険を引き受け、それらを支援することによって(気候変動の)責任を負います。
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)のプログラム・ディレクターである田辺有輝は、「日本の大手損害保険会社3社(東京海上・MS&AD・SOMPO)もロイズ市場を通じて保険の引き受けに参加していることから、同市場を活用する際はこの方針の適用を免れなくなるでしょう。3社の石炭引受方針にはいずれも抜け穴が多く、一般炭採掘やオイルサンド開発は規制対象になっていないことから、今回のロイズの方針策定を機に更なる強化が必要です」と述べています。
SumOfUs のシニアキャンペーナー・コンサルタントのFlora Rebello Arduiniは、「ロイズは、市場の全てのメンバーに対してアダニ社のカーマイケル炭鉱事業、トランス・マウンテンのオイルサンド・パイプライン拡張事業、および地球環境へ悪影響を及ぼすその他の事業への保険を更新することを禁じるべきです。ロイズは全てのステークホルダーに対して、ロイズのブランド名と信用格付けのもとで実行できることとできないことを明確にし、拘束力のある市場全体の方針を設ける必要があります」と述べています。
Market Forces の英国キャンペーナーの Adam McGibbonは、「ロイズの新しいESGレポートは、同組合のシンジケートに対し、アダニ社のカーマイケル炭鉱事業など新規の一般炭採掘事業のリスクを引き受けることは不適切であると示唆しています。既に、ロイズの17のシンジケートがアダニ社のカーマイケル炭鉱事業に保険を引き受けない約束をしているので、BritやConvexなどもカーマイケル炭鉱事業(鉱山、鉄道、その他の関連インフラおよび事業請負業者への保険提供等を含む)への保険引受を拒否するべきです」と述べています。
脚注
※1:https://www.lloyds.com/about-lloyds/responsible-business/esgreport
※2:https://insurance-scorecard.com/
※3:http://jacses.org/830/
※4:https://lmg.london/london-matters-2020-report/
本プレスリリースのお問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、担当:田辺・小林
メール:[email protected]、[email protected]
国際環境NGO 350.org Japan、担当:横山
メール: [email protected]