2020年5月15日

【NGO共同声明】MUFGの融資方針改定、石炭は進展ゼロ

NGO共同声明
2020年5月15日

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
認定NPO法人 気候ネットワーク
国際環境NGO 350.org Japan

 

MUFGの融資方針改定、石炭は進展ゼロ

みずほの水準にも達せず失望

 

 

5月13日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が「MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク」の改定を公表しましたが、その内容は不十分であると言わざるを得ません。

 

私たちは、MUFGが1年前、他行に先駆けて石炭火力発電への融資を原則として行わないとしたことを歓迎しつつ、その時点から重大な抜け穴があることを指摘してきました。その後、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)は 、「当該国のエネルギー安定供給に必要不可欠であり、且つ、温室効果ガスの削減を実現するリプレースメント案件」という例外規定はあるものの、新規建設を資金使途とする投融資等は原則行なわない方針を掲げ、また、石炭火力発電所向け与信残高ゼロに向けた目標スケジュールを邦銀として初めて設定しました。MUFGにもさらなる方針の強化が求められている中、今回、「石炭火力発電セクター」部分には全く改定が入らず、進展が見られなかったことに私たちは失望しています。

 

MUFGの石炭方針の抜け穴

 

MUFGは、新設の石炭火力発電所へのファイナンスは原則として実行しないとする一方で、「当該国のエネルギー政策・事情等を踏まえ、OECD 公的輸出信用アレンジメントなどの国際的ガイドラインを参照し、他の実行可能な代替技術等を個別に検討した上で、ファイ

ナンスを取り組む場合があります」との但書をそのまま残しました。また、地球温暖化の抑制のためには不十分である高効率発電技術や二酸化炭素回収・貯留技術(Carbon dioxide Capture and Storage, CCS)などの採用を支持するとしています。なお、2015年に策定されたOECD 公的輸出信用アレンジメントでは超々臨界圧(USC)、超臨界圧(SC)、亜臨界圧のプラントが幅広く認められており、パリ協定の長期目標達成のためには極めて不十分な基準であることが問題視されています。現に海外の民間銀行は、すでにこの基準を超える石炭方針を採用しています。

 

現在、MUFGは他の邦銀3行とともに、ベトナムのブンアン2石炭火力発電事業への融資を検討していますが、すでに海外の銀行団(英スタンダードチャータード、シンガポールOCBC、DBS)は脱石炭方針を掲げ、この事業から撤退しています。また、建設予定地のハティン省は太陽光や風力による発電のポテンシャルが高く、すでに多数の事業が進められています。デンマークのエネルギー庁が昨年行なったLCoE(均等化発電原価)に関する分析でも、大気汚染対策コストも含めた計算で、今年2020年にはベトナムの太陽光や風力がUSCを含む石炭火力発電のコストに比べて安価になることが示されています。MUFGも責任ある銀行であれば、取返しのつかない環境破壊を招き、大気汚染により人々の健康も害し、気候変動の要因となる本事業から撤退すべきです。

 

MUFGの融資実態

 

今年3月にアメリカの環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)らが発表した報告書「化石燃料ファイナンス成績表 2020」によれば、MUFGは2016年から2019年の間に化石燃料事業へ1,188億米ドルの資金提供を行っており、これはパリ協定締結以降の融資・引受額としては世界で6番目に大きな額です。さらに、ドイツの環境NGOウルゲワルド(Urgewald)の報告書によれば、2017年から2019年9月の間に石炭火力発電開発企業へ融資を行った銀行として、MUFGは2位にランクされています。

 

MUFGの姿勢は、みずほFGおよび三井住友フィナンシャルグループはもちろん、海外の銀行の石炭方針と比較し、まったく不十分です。

 

MUFGは、新規石炭火力発電事業への融資についての例外規定を削除し、現在検討中の案件を含め、すべての案件への支援を早急に中止すべきです。私たちは、MUFGが気候変動のリスクをより重視し、石炭と他の化石燃料に関する投融資方針を実効性のあるものに強化することを改めて求めます。また、パリ協定や自らが署名する国連責任銀行原則(PRB)、そしてSDGsと整合性のとれた行動に移ることを要望します。

 

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350.org Japan 渡辺

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