2020年3月31日

【プレスリリース】日本政府によるNDCの据置提出は排出削減の国際的要請に逆行 速やかに目標引き上げに向けた議論を開始し、COP26までに再提出を

プレスリリース
2020年3月30日

国際環境NGO 350.org Japan

 

 

日本政府によるNDCの据置提出は排出削減の国際的要請に逆行

速やかに目標引き上げに向けた議論を開始し、COP26までに再提出を

 

 本日、日本政府は、パリ協定における温室効果ガス国別削減目標(NDC)の引き上げを行わないまま、国連気候変動枠組条約事務局に再提出することを決定しました。NDCを巡っては、現行の2030年排出削減目標(2013年比26%削減)がパリ協定の目標とも整合しないことから、国内においてもNGO(注1)、若者団体(注2)、企業・自治体関係者(注3)や国際投資家グループ(注4)をはじめ幅広いステークホルダーが引き上げを求めてきました。また、再三にわたって引き上げを求めてきたグテーレス国連事務総長のほか、本年11月に開催されるCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)のホスト国である英国政府からも日本政府に対して引き上げ要請が行われるなど(注5)、国際社会からも強い声が上がっていました。にも関わらず、日本政府がこうした要望に全く耳を傾けず、透明性の高い議論のプロセスを欠いたまま、何の引き上げも行わずにNDCを再提出することを決定したことは極めて遺憾です。政府は、平成28年5月に閣議決定された地球温暖化対策計画の見直しに着手し、その見直し後、追加情報を国連気候変動枠組条約事務局へ提出する予定」としていますが、今求められているのは拙速なNDCの再提出ではなく、具体的な目標の引き上げに必要な国民的議論の開始です。

 

 今年は、パリ協定の実施の年に当たると同時に、各国がNDCを見直す最初の年であり、持続的な地球環境を守るために大変重要な年と位置付けられます。協定署名国の全てが削減目標を達成できても、今世紀末には世界の平均気温は3度上昇し、目標だった2度未満を大幅に上回ると予測されています。さらに一昨年IPCCは1.5度特別報告書で、2度未満と1.5度上昇の場合には、海面上昇や自然災害の増加、被害を受ける人口の増加と気候難民の発生、生態系への影響などに関し大きな違いがあると発表しました。各国はこれを真剣に捉え、特に昨年9月の国連気候行動サミット以降、削減目標の引き上げに動いています。

 

 1.5度目標を達成するためには、2030年までに2010年比で温室効果ガスを少なくとも45%削減し、2050年までに実質排出ゼロを達成しなければなないとされています。世界第5位の二酸化炭素排出国であり、一人当たりの排出量でも国別排出量が日本より上位にある中国やインドを大きく上回る日本は、気候危機の解決に大きな責任があります。

 

 一方、温室効果ガス排出の最大の原因であると言われている石炭火力発電所の建設計画を国内外で推進しているのが現状です。これらは一旦建設されると、何十年か稼働されることになり、日本だけでなくプラント輸出先国における温室効果ガス排出削減の大きな阻害要因になり、国際的にも批判を受けています。

 

 このままのレベルで温室効果ガスの排出を続けると、温暖化の結果がさらに温暖化の原因となる不可逆的な悪循環をもたらし、将来世代に大きなツケを残すことになります。

 国際社会の努力に水を差すのではなく、気候危機の解決に向けて貢献するためにも、日本政府は、速やかに透明性の高いプロセスで目標引き上げおよびエネルギーミックスのあり方についての議論に着手し、COP26までにより高い目標を再提出すべきです。

 


注1:CAN-Japan声明「日本政府に温室効果ガス排出削減目標の引き上げを求めます」(2020/1/23)https://www.can-japan.org/press-release-ja/2665
注2:Fridays For Future Tokyo声明「温室効果ガス排出削減数値目標の引き上げを求めます」(2020/3/27) https://www.facebook.com/fridaysforfuturejapan/posts/2768667786583989
注3:気候変動イニシアティブ「気候変動対策強化を求める JCI メッセ―ジ」(2020/2/4)※2月20日現在、248メンバー(159企業、25自治体、64その他団体)が同メッセージに賛同しており、企業にはイオン、ソニー、パナソニックなどが、自治体には東京都、神奈川県、長野県、滋賀県、三重県、京都府が含まれている。https://japanclimate.org/news-topics/callforndcenhancement/
注4:気候変動に関するアジア投資家グループ(Asia Investor Group on Climate Change /AIGCC )他「投資家グループが日本の温室効果ガス削減目標引き上げを要請:COP26に向けて圧力が高まる」(2020/2/17)https://www.aigcc.net/wp-content/uploads/2020/02/170220_Media-Release_Japan-NDC_JAPANESE.pdf
注5:日本経済新聞「パリ協定、野心的な目標を ジョン・マートン氏 英COP26特使」(2020/3/5)https://www.nikkei.com/article/DGXKZO56381770U0A300C2TCT000/

 

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