2019年9月11日

 化石燃料投資から投資撤退(ダイベストメント)し、 自然エネルギーへの投資増加。11兆米ドルを上回る。

プレスリリース

2019年9月11日

国際環境NGO350.org Japan

 

 化石燃料投資から投資撤退(ダイベストメント)し、自然エネルギーへの投資増加。11兆米ドルを上回る。

機関投資家たちは過ぎ去った過去に決別
未来に向けた投資を約束


2019年9月9日南アフリカ・ケープタウン市:  本日、化石燃料関連企業から投資を引き揚げ、代わりに自然エネルギーをはじめとした気候変動問題の解決策への投資を増やす国際的な「化石燃料ダイベストメント運動」へのコミットメントを表明している機関投資家の運用資産総額が 11兆米ドル(約1185兆2555億円 9月11日付)を突破したことを公表します。この画期的な成果を記念し、化石燃料ダイベストメント運動を主導してきた活動家たちは、「$11T and counting: new goals for a fossil-free world ($11兆米ドル達成。その額、今も上昇中:化石燃料ゼロの世界に向けた新目標 」(1) と題した新たな報告書を発表しました。息を呑む速さで、矢継ぎ早で化石燃料ダイベストメントへのコミットメントは年々増加しています。  当初、化石燃料ダイベストメント運動が2兆米ドル(約215兆円 9月11日付)を達成するのに2年かかったのに対し、直近では同額に達するのにわずか6ヶ月もかかっていません。

 

 本報告書は、2019年9月10・11日に南アフリカのケープタウン市で開催される、ダイベスト・インベストに関する国際サミット「 Financing the Future(未来のためのファイナンス)」(2)の開幕に合わせ公表されます。 44カ国から約300名の代表が出席するこのサミットには、世界各地で化石燃料からの脱却を目指す運動を展開している活動家たちが一堂に会し、化石燃料産業から再生可能エネルギー100%の未来に向けた資本の流れを加速させるための協議を行います。またサミットでは、電力へのアクセスをもたない世界中の8億5千万の人々へのエネルギー確保についても、主要議題として話し合います。

 

サミットの会場となるケープタウン市は、化石燃料ダイベストメント運動を象徴する場所でもあります。アパルトヘイト時代、南アフリカ政府による人種隔離政策を撤廃するため、各国政府は、同国政府と関連のある企業からのダイベストメントが進められていた歴史があります。人種、ジェンダー、社会的平等を目指す活動は今、気候正義を目指す活動と手を取り合って進められています。サミット主催者たちは、市民主導の化石燃料ダイベストメント運動が成果を上げてきたことを強調する一方、南アフリカで増加傾向にある外国人排斥やジェンダーに基づいた暴力を直ちに非難、正義のために闘うのであれば、思慮深いリーダーシップが不可欠であることを強調しました。

 

 「クライメート・ジャスティス(気候の公平性)を求める闘いは、基本的人権を求める闘いでもあります。  ますます深刻化する干ばつ、勢力を増すハリケーン、あるいは紛争に直面するすべての人は、化石燃料企業による不当な扱いを受けているということです。  水、食料、住まい、健康、ひいては命そのものまで含む基本的人権が損なわれているのです。このことを踏まえ、アムネスティ・インターナショナルは、化石燃料企業から投資を引き揚げることを決定しました。  「これにより、すべての人の人権、そしてクリーンで再生可能なエネルギーに向けた取り組みは、クライメート・ジャスティスを語る上で欠かせないものとなります」と、  アムネスティ・インターナショナルのクミ・ナイドゥ(Kumi Naidoo)事務局長 は、サミットの開幕スピーチでコメントしました。

 

 「ダイベスト・インベスト」の運動の活発化、ならびにサミット開催にあたり、非常に重要なリーダーシップを継続的かつ長期にわたり発揮してきたのは、宗教団体です。  今日、新たに22の宗教団体が化石燃料ダイベストメントを宣言、 これにより地球を汚染するエネルギー源との決別を表明した宗教団体は、全世界で170を超えました。(3)

 

 「地球温暖化に伴い、飢えや病気や紛争が増加、その影響は数百万もの人々に及んでいます。この危機のレベルに見合った対応を、宗教団体は明確に掲げているのです。  我々は化石燃料から投資を撤退します。そして貪欲が愛に打ち勝つことなど決してないということを明らかにします」と、 カトリック教会によるグローバル気候運動「Global Catholic Climate Movement」のトマス・インスア(Tomás Insua)事務局長 はコメントしました。

 

化石燃料ダイベストメントへの取り組みを表明した団体の数という点では、宗教団体、財団、学校、保険・医療組織をはじめとした、特定の使命や目的をもつ投資家が引き続き上位を占めています。一方、その対象となる資産の大半は、世界的な資産運用会社、政府系投資ファンド、保険会社、公的年金基金をはじめとした機関投資家によるものです。  かつては「道徳的に正しく、取り組むべき行動」と厳密に規定されてきたダイベストメントですが、今や気候変動がもたらす金融リスクへの唯一かつ賢明な対応策として見なされるようになりました。 ここ10年以上、市場の動きに後れを取ってきた化石燃料産業は、S&Pによる2018年度の格付けで最下位にランクを落としました。 不安定な上、すでに採算ベースを下回っている化石燃料産業は、今後低炭素経済への移行に向け様々なリスクも抱えているため、同産業への投資が非常に不毛な賭けであることは一目瞭然です。

 

 「機関投資家には、文字通り未来を左右する力があります。  化石燃料産業を拡大させるのか縮小させるのか。自然エネルギーへの移行を遅らせるのか加速させるのか。これらを決定づけるのはお金の動きです」と、国際サミット「Finance the Future」の共催団体である「ダイベススト・インベスト」のクララ・ボンドリッチ(Clara Vondrich)事務局 はコメントしています。  「今なお化石燃料の採掘と燃焼を止めようとせず、取り返しのつかない気候の転換点へと突き進む化石燃料産業などと、投資家は関わっている場合ではありません。今こそ化石燃料ダイベストメントへのコミットメントを表明すべき時です。  歴史の流れに乗るべきか逆行すべきか、自問すべきではないでしょうか?」

 

 化石燃料ダイベストメントへのコミットメントが表明された運用資産の総額は、現在11兆米ドルを上回ります。 2014年の総額520億米ドルから飛躍的に増加、22,000%もの増加率です。  さらに世界各国の1110以上の機関が、石炭、石油、天然ガス関連企業をブラックリストに載せる方針を表明しました。  これらの機関には、政府系投資ファンド、銀行、世界的な資産運用会社、保険会社、市町村などの自治体、年金基金、保険・医療組織、大学、宗教団体、財団が含まれます。  具体例を挙げると、ノルウェー政府年金基金、フィリピン・カトリック中央協議会、ロックフェラー兄弟財団、英国医師協会(BMA)、アムンディ・アセット・マネジメント(資産運用会社)、 フランス預金供託公庫(フランスの公的金融機関) 、ニューヨーク市、ケープタウン市、 ドイツ復興金融公庫(ドイツの開発銀行) 、ストックホルム大学、英国のテート系列の美術館、保険会社アリアンツ、エディンバラの聖マリア大聖堂など実に多様です。なお、最後に挙げた聖マリア大聖堂は、世界で初めてダイベストメントを宣言した大聖堂です。

 「これらの数字は、市民主導の運動(people power)が影響力を増しつつあることを強力に裏付けています。  ダイベストメントの目標を達成できたのは、化石燃料と決別するよう地域レベルで働きかけてきた多数の団体のおかげです。グローバル・サウス(南の発展途上国)初開催となる今回のダイベスト・インベストサミットでは、金融機関の決定に変化をもたらすにはどんな手段が必要で、また資産を動かし気候を守るにはどんなリソースが必要となるのか、アイデアを出し合い、連携し取り組んでいきます」と 350.orgのアフメド・モゴポ(Ahmed Mokgopo)ダイベストメント・キャンペーナー はコメントしています。

 


注釈
(1) 9月9日に発表されたレポートへのリンク(英文):https://financingthefuture.global/11trillion. 世界銀行によれば、11兆米ドルは2018年のグローバル株式市場価値全体の約16%を占める。
(2) サミットのプログラム(また、いくつかのセッションのライブ中継映像)へのリンク(英文):Financing the Future
(3) ダイベストメント宣言を行った機関一覧はこちら
(4) 「Financing the Future」サミットのグローバル・アンバサダーなどによるコメント引用(英文)はこちら

 


本件に関するお問い合わせ先:

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