2019年9月6日

9月国連気候サミット前にグローバル気候マーチを開催

プレスリリース

 

報道関係者各位
2019年9月6日

Fridays for Future有志
グローバル気候マーチ賛同団体有志

 

9月国連気候サミット前に
グローバル気候マーチを開催

〜国内複数都市に「気候非常事態宣言」を求めることを学生有志が発表〜

 

 

 本日、日本国内16都道府県で9月20日に行われる「グローバル気候マーチ(Global Climate Strike)(注1)」に先駆けて、マーチを企画している若者・市民の有志代表が環境省記者クラブにて記者会見を行いました。

 

 「グローバル気候マーチ(Global Climate Strike)」はパリ協定に基づき提出された各国の削減目標全てを達成しても、持続的な地球環境を辛うじて守ることができる1.5℃目標が達成できないこと、加えて各国の対策の進捗が遅いことから、グテーレス国連総長が懸念をもち招集した「国連気候アクションサミット(UN Climate Action Summit 2019)」に向けて、世界一斉に実施されるイベントです。

 9月20日に世界各国でマーチや関連企画が行われることになった背景には、ノーベル平和賞にもノミネートされたスウェーデンの高校生、グレタ・トゥーンベリ(16)が開始した気候変動対策の強化を呼びかける、学校ストライキが世界中へ広がっていることが挙げられます。9月20日の気候マーチや関連企画の日本での開催予定地は現在16都道府県・18ヶ所で、また世界では100ヶ国以上で、700以上のイベントが計画され、今後もその数は伸び続けると思われます。

 

 マーチ開催に先立ち、国内での「グローバル気候マーチ(Global Climate Strike)」の企画の中心となっている、学生の有志団体であるFridays for Future Tokyoは東京都議会に対して「気候非常事態宣言(CED, Climate Emergency Declaration)(注2)」を決議し、発令することを求める請願書を提出すること(注3)を同日発表しました。 世界中で記録的な猛暑や豪雨が観測された2018年の夏以降、気候変動問題の悪化を危惧し、世界の様々な国、自治体や団体などが「気候非常事態宣言」を相次ぎ発表しています。具体的には、現時点で約1000近く(注4)の国(イギリス、フランス、アルゼンチン、カナダなど)や自治体(米国のニューヨーク市やサンフランシスコ市など)が「気候非常事態宣言」を発令しています。日本国内では、すでに京都市、大阪市(注5)で市長に対し「気候非常事態宣言」を求める活動がなされ、また、名古屋市でも同様の計画があります。

 

 「僕がこの活動に参加する前、周りに環境問題について話しても真剣に取り合ってもらえませんでした。でも活動を通じて、同じ想いを持つ多くの学生と出会いました。今の日本では気候変動を他人事と思っている人が多い。僕は、政府や企業に気候対策の強化を訴えることと同じくらい、人々の環境意識を高め、世代や国境を越えて繋がることが大切だと思っています。その輪がさらに広がりアクションを起こす人が増えれば、気候変動を止めることができる政策を実現できると信じています。今回のマーチが社会を変えるきっかけになるよう願っています。9.20に会いましょう。」と井上寛人(19)は述べました。

 

 「同世代の方々へ。皆さんの思い描いている未来とはなんでしょうか。志望大学に受かること、大企業に就職すること…。皆さんの思い描いている夢はとても明るいものでしょう。しかし、みなさんの取り巻く環境の未来は明るいものでしょうか。未来を作るのは私たち学生です。皆さんで『マーチ』という形で第一歩を踏み出しましょう。大人の方々へ。気候変動なんて自分たちには関係ないと思っていませんか。本当にそれでいいのですか。もう手遅れになった時、皆さんは胸を張って未来の子どもたちに『明るい未来を残した』と言えるでしょうか。責任は誰にあるのでしょうか。みなさんのたった小さな行動から大きなものを変えることができます。まだまだ未熟な私たちの叫びを真摯に受け止め共に考えていきましょうと高校生3年生の中村涼夏(18)は述べました。

 

 小林誠道(19)は「私は大学で防災・減災について学んでおり、温暖化を原因とした『異常気象』の被害が増加している現状に大変心が痛めつけられています。こうした現状を『自分自身に降りかかる危機』として多くの人々に考えて頂きたいです。現在世界の平均気温は1度上昇していますが、各国政府の現在の温室効果ガス排出量の削減目標では温暖化を食い止めることができず、約束通り実行しても3度上がってしまうと言われています。パリ協定の目標の2度と1.5度では、1.5度に抑えることで影響を大きく減らすことができると言われています。23日には各国の政府がより厳しい削減目標について話し合います。私たちはその議論に参加することはできませんが、影響を与えることはできます。20日に行われるマーチで、地球の未来を守るため一緒に声を上げてみませんか」と語りました。

 

 「私がグレタさんを知ったのは、スウェーデンでのSDGs視察ツアーに行った直後、就職活動が解禁された今春でした。『あなたたちは誰よりも自分の子どもが大切だと言いながら、子どもたちの目の前で彼らの未来を奪おうとしている。』 彼女の発言は、私が就活で出会う『大人』に対する憤りを代弁していました。視察ツアー後、日本の環境政策の遅れに危機感を覚えた私は、SDGsを推進する企業の選考を受け、現状の取り組みを自分ならこんな風に改善するとアピールしました。ところが、多くの企業の態度は表向きに唱えるスローガンとは裏腹に、私の提案に消極的もしくは否定的なものでした。グレタさんの言葉を聞いて、これからの時代を生きる私たちの世代こそ、彼女のように自らの未来が脅かされていることを認識し、躊躇わずはっきりと大人へ向けて物申す権利があるのだと実感しました」と宮崎紗矢香(22)は述べました。

 

 東北大学大学院教授の長谷川公一は、「被災地宮城県と仙台市周辺では、震災後、石炭火力発電所の操業開始、インドネシアやマレーシアなどの熱帯雨林を破壊するパーム油発電所の建設工事、輸入木質バイオマス発電所の建設計画が相次いでいます。世界で石炭火力発電からの撤退の動きやダイベストメントが加速する中、日本はG7諸国の中で唯一、国内外で石炭火力発電所の新設計画を継続しており、世界からも強い非難を浴びています。宮城県で私たちは、17年9月に日本で初めて石炭火力発電所の操業差止めを求める裁判を提起しました。神戸と横須賀でも建設差止めの裁判が続いています。気候変動・温暖化に関する報道記事は2008年がピークで11年以後は急減し、パリ協定の15年に若干上向きますが、16年以降は減り続けています。メディアの皆さんにはこうした問題を報道して頂きたいと思います」と語りました。

 

 バートンジャパン合同会社の須川尚美は、「スノーボードを主軸とした用具、バッグ、アパレルを製造販売する当社では、冬のアウトドア体験を未来の世代にも楽しんでもらいたいという願いから、気候危機に対する運動に強く共感し、今回のマーチへの参加および全面協力を決めました。全世界のフラッグシップストアとオフィスの業務を停止し、賛同する従業員は各地のマーチに参加します。日本の7店舗のストアでは営業を停止し、東京・名古屋・大阪の店内スペースをマーチに参加する方たちに開放します。プラカードやポスターを作成するための材料と場所を提供し、同じ意識を持つ参加者のコミュニティ形成やネットワーキングをサポートします。私たちの他にも複数の企業が賛同を表明し、その数は増え続けています。ぜひ若い人たちの運動をサポートしてください」と語りました。

 

 NGO有志代表の荒尾日南子(37)は「このように運動が拡大できたのは、若い人が持っているエネルギー、オンラインで人と繋がる力、そして正義を大切に思う人間らしさにも起因すると思いますが、何より大きいのは、彼らがこの問題に一番大きな影響を受ける当事者であるからです。日本は文化的にも市民運動が広がりにくいと言われていますが、9月20日に向けて毎日多くの人と連絡をとる中で、本当に多くの人が、気候変動に問題意識を感じ何かしたいとも思っていたけれど、自分の生活とアクションを繋ぐものが見つけられない、という体験をしていたのだと気づきました。20日のマーチは、そういった人たちの架け橋になれる1日となると信じています。まだ新規開催の地域を受け付けていますので、興味のある方はホームページよりご連絡ください」と言いました。

注:
1:グローバル気候マーチ 特設ウェブサイト https://ja.globalclimatestrike.net/
2:都市、地方政府などの行政機関が気候変動への政策立案、計画、キャンペーンなどの対応を優先的にとると宣言するもの。https://climateemergencydeclaration.org/
3:FFF Tokyoの東京都議会宛の請願書は9月13日の記者会見にて発表予定です。
4:https://climateemergencydeclaration.org/climate-emergency-declarations-cover-15-million-citizens/
5:FFF OSAKA 請願書 : https://globalclimatestrike-ja.platform350.org/wp-content/uploads/sites/67/2019/09/Fridays-for-Future-Osaka-大阪へ請願書.pdf
FFF KYOTO 請願書 : https://globalclimatestrike-ja.platform350.org/wp-content/uploads/sites/67/2019/09/京都市「非常事態宣言」.pdf
FFF NAGOYA  請願書(掲載予定) : https://www.facebook.com/FridaysforFutureNagoya/

 


 

各地の気候マーチ開催情報一覧(2019年9月6日現在)

 

地域 集合場所 集合時間 連絡先
北海道 調整中 調整中 Ethan Wearn

[email protected]

岩手 調整中 調整中 髙橋望実

[email protected]

仙台 肴町公園 16:30 長谷川公一

[email protected]

福島 福島県庁 11:00 グローバル気候マーチ@福島

[email protected]

栃木 那須町役場 12:00 益子実香

[email protected]

東京 国連大学前広場 17:00 FFFTokyo

[email protected]

石川 金沢市内 10:00 奥圭奈子

[email protected]

吉野谷セミナーハウス 12:00 乾 靖

[email protected]

名古屋 (20日午前)名古屋城周辺

 

9:15 (午前の部)ヴァーリフラン

[email protected]

(20日夕方)栄広場 17:00 (午後の部)FFFNagoya/Climate Action Nagoya [email protected]
京都 円山公園ラジオ塔前 13:30 FFF Kyoto

[email protected]

大阪 中之島中央公会堂前 16:30 FFF Osaka

[email protected]

神戸 みなとのもり公園・

芝生広場

17:00 FFF Kobe 

[email protected]

岡山 下石井公園 12:00 FFF Okayama

[email protected]

福岡 警固公園 15:30 FFF Fukuoka

[email protected]

大分 大分駅北口

竹町商店街入り口 駅前広場

13:00 甲斐さおり

[email protected]

鹿児島 調整中  調整中 薩摩リーダーシップフォーラム SELF

[email protected]

沖縄 県民広場 17:00 Simon Robinson

[email protected]

 

本件に関するお問い合わせ

荒尾 日南子(国際環境NGO 350.org 日本支部)
Tel: 070-5464-1419  Email:
[email protected]

中村 萌(国際環境NGO 350.org 日本支部)
  Tel:080-6774-4528  Email: [email protected]

Fridays for Futureについて
2018年スウェーデンの女子生徒グレタ・トゥーンベリさんが、「気候変動は人類の生存に対する何よりも重大な脅威であると言い続けていながら、皆これまでと変わらない生活をしているのは理解できません。温室効果ガスの排出を止めなければならないなら止めるべき」と、たった一人で始めた気候危機に対するスクール・ストライキは、世界各国の若者の共感を呼び、今では大きなうねりとなっています。日本でも5月に行われた東京でのマーチには総勢250人が参加しました。そして私たちは東京、名古屋、大阪などの国内の複数都市で同じようにFridays for the Futureを立ち上げ活動を始めました。

 

気候危機について
産業革命前から現在までに地球の平均気温は約1℃上昇しました。たった1℃の上昇によって既に、人間社会の危機と捉えられるような事象が多発しています。日本では昨年6月〜9月における熱中症死者が1,518人となり1、2019年7月29日~8月4日までの間に最多1万8347人が緊急搬送されました2。ヨーロッパではフランスなど各地で40℃を超える熱波を観測しています3。また、1980年代とくらべ異常気象による気象災害の数は3倍と増えており、豪雨や洪水、干ばつなど気候変動に起因する災害による世界の経済的損失は、1998年から2017年の間で2兆2500億ドル(約252兆円)に上り、それ以前の20年間に比べて150%増加した4

 

パリ協定とIPCCの1.5℃報告書
2015年、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で合意されたパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち1.5℃に抑える努力をするという長期的目標を掲げ、加盟国から目標値や長期戦略が提出されました。しかしパリ協定に参加する各国が提出した数値目標を達成しても、21世紀末には3℃の気温上昇が免れないと予測されています5。国連の気候変動に関する政府間パネル(以下:IPCC)は現在の排出ペースが続くと、早くて2030年には産業革命前と比べて1.5℃上昇すると警告しました6。1.5℃の上昇でも様々な被害が予測されますが、2℃の上昇と比べて1.5℃に抑えることで、被害を大きく減らすことができるとも発表しています7。IPCCは人間社会の壊滅を回避するためには、より積極的で革新的な社会の変化が必要であると警告しています。具体的に言えば、2030年までに全世界の二酸化炭素排出量を2010年の排出量と比べて45%削減し、2050年頃に排出ゼロにすることが必須だと結論づけています9

 

注釈
1.熱中症による死亡者数(人口動態統計)厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121413.html
2.”熱中症での救急搬送人数は1週間で1万8347人(2019年7月29日~8月4日).”
news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20190806-00137236/
  
3.”All-time temperature records tumble again as heatwave sears Europe.”
www.theguardian.com/world/2019/jul/25/europe-heatwave-paris-forecast-record-hottest-ever-day.

4.”気候変動による災害の経済損失が増加、直近20年は252兆円に.”
www.afpbb.com/articles/-/3192938.

5. “Global temperatures on track for 3-5 degree rise by 2100: U.N.”
www.reuters.com/article/us-climate-change-un/global-temperatures-on-track-for-3-5-degree-rise-by-2100-u-n-idUSKCN1NY186 
6.”Temperatures to rise 1.5 degrees Celsius by 2030-2052 without rapid steps – U.N. report.”
www.reuters.com/article/climatechange-ipcc/temperatures-to-rise-1-5-degrees-celsius-by-2030-2052-without-rapid-steps-u-n-report-idUSL8N1WM0JJ.

7.”The impacts of climate change at 1.5C, 2C and beyond.”
CarbonBrief,interactive.carbonbrief.org/impacts-climate-change-one-point-five-degrees-two-degrees/?utm_source=web&utm_campaign=Redirect#

8.”Half a Degree and a World Apart: The Difference in Climate Impacts Between 1.5˚C and 2˚C of Warming”
https://www.wri.org/blog/2018/10/half-degree-and-world-apart-difference-climate-impacts-between-15-c-and-2-c-warming

9.”Summary for Policymakers of IPCC Special Report on Global Warming of 1.5°C approved by governments.”
www.ipcc.ch/2018/10/08/summary-for-policymakers-of-ipcc-special-report-on-global-warming-of-1-5c-approved-by-governments/