既設の石炭火力発電所の影響で、住民は漁業や農業など生計手段への影響、および健康被害に直面しています。
私たちの税金や預貯金を活用し日本政府や民間銀行がこのような問題を及ぼしている事業に巨額な支援を行っているケースはインドネシアに多数あります。
チレボン石炭火力発電所を覆う黒い雲。西ジャワ州チレボン県アスタナジャプラ郡カンチ村から。
撮影:アルディレス・ランテ(Ardiles Rante)
今年の2月に350.org事務局長メイ・ブーヴィは西ジャワ州インドラマユ県にある石炭火力発電所、そして日本の民間銀行も巨額な支援を行っているチレボン県の石炭火力発電事業を視察し、付近で生活をする住民と対話するためにインドネシアを訪れました。その時の体験談を取材形式でご紹介します。
Q:インドネシアのどの石炭力発電所に隣接するコミュニティを訪れましたか?
メイ・ブーヴィ(以下、メイ):旅路はまず、インドネシア西ジャワ州チレボン(Cirebon)から始まりました。現地の住民たちは、稼働中の石炭火力発電所の停止と、発電所増設計画の撤回を目指して闘っていました。 丸一日、彼らと語り合い、親交を深めました。反石炭プロジェクト運動を率いる彼らこそ、チレボンを特別な場所にしているのです。 さらに、チレボンでは新たな発電所を建設するために、日本の国際開発銀行とメガバンクを始め、約21億米ドル(約2366億円)の融資を決めているという話も伺いました。翌日は、同じ西ジャワ州のインドラマユ(Indramayu)にある別のコミュニティを訪れました。現地の住民たちは、中国が支援し建設されたの石炭火力発電所のせいで、深刻な健康被害を受けています。 日本のJICAもそこで、新たな石炭火力発電所への融資を検討しています。
Q:住民との対話を通じてどのようなことを学びましたか?
メイ:チレボンやインドラマユ、そしてインドネシア全土で、漁業やそれを生業としてきた人々に具体的に何が起きたのかについて知りました。魚がいなくなってしまったのです。 チレボンの名物は、テラシとよばれる小エビのペーストです。 ウィキペディアのチレボンのページにも、テラシについての記載を見つけました。 チレボンにとってのテラシは、米国人にとってはパン、日本人にとってはお米のようなものかもしれません。 問題は、この小エビの棲息地に発電所が建設されて以来、網いっぱいの小エビが採れなくなってしまったのです。今日出会ったドゥスマッドという漁師も、その影響を受けた一人です。 そこでドゥスマッド、塩づくりで生計を立てようとしたのですが、塩田は石炭灰が混じり、塩づくりには適さなくなっていたのです。ドゥスマッドと同じ村の住民たちは、インドネシア全土で活動中のNGO「インドネシア環境フォーラム(WALHI)」や「Jatam」、「グリーンピース」といった、350のパートナー団体による支援を受けています。 今週開催したこれらの団体とのミーティングで、チレボンの発電所2基を含め、インドネシアでは計109基、発電量にして3万5千メガワットの発電所の建設計画が進行中であることを知りました。 同国政府は、脆弱な環境影響調査基準などで、石炭プロジェクトを積極的にサポートしています。その上、これらのプロジェクトは、主に日本政府や民間銀行などからの多額の投融資を受けています。だからこそ、日本の預金者が自分の銀行どのようなお金の使い方をしているのかについて考え、アクションをとることが大事になってくると思います。
西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電所近くの自宅で、自分のX線写真を見せてくれたアイニちゃん(8歳)。肺の部分に小さな影が見える。
撮影:アンディレス・ランテ(Ardiles Rante)
Q:最後に、この体験を受けて感じたことを教えてください。
メイ:チレボンやインドラマユのように、最前線で闘う住民たちが日々味わうであろう挫折を思うと、打ちのめされそうになります。生業を奪われた上、文化の土台そのものまでが壊されているのです。 でも、別れ際のドゥスマッドのことを、私は決して忘れません。彼は、笑顔で私たちに祝福の言葉を伝え、私たちのために祈り続けると言ってくれました。気を落とさずに闘い続けるよう、励ましてくれたのです。滞在中は、私は米国から、キーストーンおよびダコタ・アクセス両パイプラインの建設をトランプ政権が承認したという非常に残念な知らせが届き、落ち込んでいました。しかし、世界を見渡せば、大切な土地や愛する人を守るため、至る所でこのような闘いが繰り広げられています。あるいは、それは水や汚染、気候への影響といった、地域の未来の安全に関わる闘いでもあるのですが、結局のところ、これらの問題は私たち皆に影響を及ぼします。
終
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自らお金の流れを考える
350.org Japanは、化石燃料や原発にお金を流していない、地球にやさしい銀行選びを促すMY BANK MY FUTUREキャンペーンを現在展開しています。事務局長は「日本の預金者が自分の銀行どのようなお金の使い方をしているのかについて考え、アクションをとることが大事になってくる…それは水や汚染、気候への影響といった、地域の未来の安全に関わる闘いでもあるのですが、結局のところ、これらの問題は私たち皆に影響を及ぼします」とインタビューの中で述べています。私たちが個人として行っている様々な「選択」はすべて地球環境および私たちの未来につながっていることをもっと意識しなければなりません。
来る5月に350.org Japanは「気候変動の影響」と「個人として行えるエシカルな選択」に焦点を当てた、気候変動・エネルギー問題に関する知識を深め、一歩踏み出し「行動」をとるための特別イベント企画しています。これは5月5日から13日まで、化石燃料などの持続不可能なエネルギーからのダイベストメントを世界中で求める「グローバル・ダイベストメント週間」に合わせて開催されます。
こちらのイベントへの登録は下記のリンクよりできます。ぜひともご参加ください!http://act.350.org/event/gdd2017_attend_ja/13538
インドラマユの人々との連帯を表して拳をあげる、350.org事務局長メイ・ブーヴィ。
撮影:アンディレス・ランテ(Ardiles Rante)