次世代リーダー:350.org 事務局長May Boeve
本文:タイム誌 シャーロット・アルター(Charlotte Alter) (2015年5月28日0
編集: 350.org Japan 清水イアン
「地球温暖化問題を解決するために、化石燃料から収益を上げる企業への投資は、もうやめよう。」企業や組織の説得に奔走する、350.org 事務局長メイ・ブービィ(May Boeve)
メイ・ブービィ(May Boeve)が求めているのは、「方針転換」です。 気候変動防止を目指す草の根団体「350.org」の事務局長を務めるブービィは、2014年の大半を費やし、地球温暖化とは一見関係の弱そうな課題に取り組む団体や個人に働きかけてきました。 ブービィのたゆまぬ努力は実を結び、同年9月には過去最大規模の市民の気候マーチ「クライメート・マーチ」が開催され、ニューヨークでは、主催者発表で40万人もの市民が参加したのです。 また、世界161カ国でも、大勢の市民が街頭から気候対策を訴えました。
ブービィは、「多様な分野の人々を巻き込んで、より大きな気候ムーブメントを築いていくことが、350.orgのの目標です」と語ります。 「1人ではもちろん、1つの組織だけではこの目標を実現することはできません。」
現在31歳のブービィは、米バーモント州のミドルベリー大学の学生だった2007年に、同大学の学生6人、そして環境運動家で執筆家のビル・マッキベンと共同で350.orgを立ち上げました。以来、気候変動との闘いの最前線に立ち続けています。 「まだ20歳そこそこだったけれど、彼女の勢いは当時から圧倒的でした」と、ビル・マッキベンは語ります。
350.orgという名称は、「現在の気候を維持するためには、大気中の二酸化炭素濃度を350ppm以下に引き下げなければいけない」という科学者の指摘に由来しています。 米海洋大気局(NOAA)によると、現在の大気中の二酸化炭素濃度は403ppmです。 この数値を350ppmに戻す唯一の方法は、化石燃料への依存を弱め、再生可能エネルギーを広めていくための「大規模な社会運動」を築き上げていくことだと、ブービィは確信しています。
この大きなミッションを担う彼女は、環境問題を専門としない団体との共通点を見いだし、協力関係を築き上げていく「エキスパート」になりました。 例えば、ブービィは労働組合に対して、環境保護に取り組むことは経済的にもプラスになるのだと言って訴えかけてきました。 気候変動防止に取り組むことは「雇用をつくり出す大きなチャンス」になると、彼女は言います。「可能な限り幅広いムーブメントを築き上げるために必要な歩み寄りをしていくことに、彼女は本当に真剣に取り組んでいます」と評価するのは、労働環境団体から成る組織「ブルー・グリーン・アライアンス」で気候・エネルギーを担当するシニア戦略アドバイザーのジョン・バートンです。
さまざまな分野の運動家に向け、ブービィが掲げた新たなミッションは、化石燃料産業に直接関与する企業への投資を引き上げる「ダイベストする」を、世界最大の機関投資家に働きかけることです。 「投資先を選ぶよう機関に働きかけることで、化石燃料の生産や消費を道徳的な問題にしていくのです」とブーヴィは語ります。 これまでに、ガーディアン・メディア・グループやニューヨークのシラキュース(Syracuse)大学、英国国教会などが化石燃料の採掘、加工、売買に携わる企業からダイベストメントを表明しています。
気候変動はすでに被害をもたらしており、それを元に戻すのは不可能であることを、ブービィは理解しています。 「気候変動を阻止するとは言っていません。 残念ながら、それはもう不可能です。 私たちはすでに気候変動を目の当たりにしていますし、今後の世代もその影響は避けられないでしょう。」 私たちは、気候変動を悪化させてきた化石燃料産業や企業に、責任を問うことから始めないといけないと、彼女は語ります。
ーーーーーーー
1月末から2月にかけて、本記事で紹介された 350.org の事務局長メイ・ブーヴィが来日します。この来日に合わせ、350.org Japan では特別シンポジウム「エシカル金融を始めよう!~私たちの選択が地球を救う~」を2月1日に開催します。イベントには、メイ・ブーヴィに加え、オーガニックコットン・ブランド Avanti 代表の渡邊ちえこ氏、エシカル協会代表の末吉里花氏、サステナブルな資産運用を専門とする鎌倉投信代表新井和宏氏など豪華ゲストを招き、温暖化防止に向けた「エシカル金融」や「エシカル消費」の重要性について議論を交わします。お申し込みはこちらのフォームから行えます。イベント詳細をご覧になりたい方は、こちらの FB ページをご覧ください。エシカル消費のリーダー達が一同に集まるこの貴重な機会にぜひお越しください!