少し昔に菜食主義と言うと、健康志向とか、動物を殺すことや畜産動物の過酷な扱いに対する反発が原因で始めた人が多かったのではないでしょうか。今、周りの NGO 関係の人を見ると、温暖化問題の意識から菜食主義者やビーガン(vegan=完全菜食主義者)に転向している人が多いのに驚きます。

農林畜産業というと、グリーンで環境にやさしい印象ですが、実は世界の温暖化ガス排出の23%はこれらの産業(農業・林業・その他土地利用部門)から出ています。現在の農業では機械化による化石燃料の燃焼や、製造に化石燃料が必要な窒素肥料などを大量投入します。

また森林の伐採や焼くことで農地化や牧草地化すると CO2の吸収量が減少します。森林を焼けば当然CO2の排出です。畜産では家畜のゲップやし尿処理からメタンが排出されます。経済のグローバル化で、海外から食料を輸送するために大量の化石燃料を消費します。食料を輸入に頼る日本では顕著です。


現在の工業的農業では、1キロカロリーの食料を生産するために、10キロカロリーの化石燃料によるエネルギーを使用していると言われています。また、1Kg の牛肉を生産するのに、7Kg を超える植物タンパク質と5万リットルの水が必要です。牧草地に牛のエサとなる植物ではなく、我々が食べる植物を植えることで食料生産の効率が上がり温暖化を抑制できます。

温暖化抑制には、従来のせいぜい2~3年先しか見ていない経済や生活のあり方を、50年後、100年後の影響を見据えたものに大きく変革する必要があります。今回のテーマで言えば、食料の有機的再生農法で、我が国の食料自給率(現在38%)を上げると共に、肥料の投入と輸送で使用する化石燃料を減らす方向に転換すべきです。これは温暖化で世界の食料供給力が不安定化するリスクがある中、食料安全保障の面からも有効です。

 

 

個人にできることとしては、肉食を控えること。Wikipedia で引いてみると、菜食主義者の人口割合は日本が4.7%、米国9.3%、英国14%、インド29%-40%です。

そう言えば、ポール・マッカートニーは菜食主義で、YouTube で菜食主義を奨励していました。日本では菜食主義者やビーガンの人が外食できる店がまだ少ないです。最近アムステルダムの会議(飛び恥ですね)に参加しましたが、仲間と外食をした時にビーガン対応の店が結構ありました。私は現在のところ野菜好きの雑食で、菜食を全ての人に押し付けるのは好みません。

しかし、世界人口の増加が続き肉の消費量が増加している環境下で、人々が肉食を抑えることはエネルギー面ばかりではなく、森林から牧草地への転換を防ぐ、CO2吸収源の保全からも温暖化防止に繋がります。
また、日本でも菜食のメニューが増えれば、菜食主義とは言わなくても環境にやさしい菜食傾向になる人が増えるだろうと思います。

 


個人のライフスタイルの転換ももちろん重要ですが、気候危機に対応するためには、個人のライフスタイルの中で解決できること以上に、国や行政の政策や企業の行動の変化などが不可欠です。そのために私たちの声を伝え続けていきましょう。

横山隆美