今年から始まる今後10年間は、人類の歴史にとって極めて重要だと言われており、「気候の10年(Climate Decade)」と名付けられています。そんな中、昨年から4ヶ月以上燃え続けているオーストラリアの森林火災は、日本の国土の約半分の面積を焼き尽くしてなお鎮火の目途が立っていません。

昨年は他にも、バハマを襲ったハリケーン”ドリアン”、インドの大洪水、台風15号、19号など、温暖化の影響で威力が増したと思われる大規模自然災害が相次ぎました。

2019年は、温暖化を「危機」として実感させる自然災害が増えたことに加え、グレタ・トゥンベリさんの訴えが人々の共感を得て、学生や市民の活動が一挙に高まりました。

9月の国連気候行動サミットの期間には、世界185カ国で760万人がマーチやアクションを行い、日本でも温暖化の抗議運動としては異例の5,000人がマーチに参加しました。TV や新聞の報道でも頻繁に取り上げられるようになり、12月にマドリードで開催されたCOP25では、小泉環境大臣への注目との相乗効果もあって気候危機の認識が広がりました。

このように振り返ると、2019年は温暖化解決への歴史的な1年になるかもしれません。しかし、運動は始めるのも大変ですが、それを継続させるのにも相当なエネルギーが必要です。今年は運動をさらに継続・拡大できるか、昨年を歴史的な年にできるかの試金石となる重要な1年です。

 

時間軸を将来に伸ばすと、温室効果ガスの排出を今のままのペースで続けると、最悪の場合2030年を過ぎた頃には世界の平均気温が1.5°Cを超えると予測されています。IPCC(気候変動に係わる政府間パネル)が、パリ協定で目標とした2.0°Cの上昇をした場合1.5°C上昇に比べ環境への影響が格段に大きいと報告して以来、1.5°Cは世界が新たに目指すべき目標となりつつあります。

温暖化のペースをスローダウンさせ1.5°C目標を達成するためには、2030年までに温室効果ガスの排出(絶対量)を2010年と比べて約半分にする必要があります。そのためには複利計算すると今年から世界全体で毎年約7.6%ずつ削減する必要があります。

これの意味するところは、化石燃料を燃やすことで成り立っている今の経済・社会のあり方を大幅に変える、脱炭素社会への大胆な移行です。

しかし、先進国の人々が今享受している快適な生活を放棄することに合意を取ることは困難です。また、世界の人口が増加を続け、さらに発展途上国が生活レベルを上げていくことを考えると、排出量削減は容易なことではありません。

 

私は科学者ではありませんが、最も効果がある解決策は、恐らく一刻も早い自然エネルギーへの転換と森林の維持・拡大です。それには政府の大きな政策転換が求められますが、現在の経済・社会のあり方から利益を得ている企業や人々の思惑があり、遅々として進みません。

これを打破しようと、自然エネルギーで100%まかなおうという企業集団RE100や金融機関のダイベストメント(投資撤退)など非政府セクターの動きが活発になったのも昨年の特徴です。6月にニューヨーク州議会で2050年までに温室効果ガスの排出をネットゼロにする法案を通すなど、世界の多くの自治体、団体、民間企業が CED(Climate Emergency Declaration=気候非常事態宣言)を宣言しました。自治体数は、昨年9月現在で20か国の1,075自治体(住民総数は2億6,585万人)に上っています。

2020年を学生や市民、地方や団体というコミュニティの運動から政府の政策を変える年にしたいです。

横山隆美