こんにちは!350 Japan代表のタカこと横山隆美です。
これまで「Before it’s too late 通信」として自身のメールリストに、「気候変動で何が起こっているのか」「どう感じ、どう思っているのか」を発信していました。そして今回から350のみなさんにもお届けさせていただくこととなりました。
これからどうぞよろしくお願いします!
マドリードの COP25については、新聞やTVで頻繁に報道されていますので皆さんもご存知だと思います。残念なことに、日本の対策の遅れと、脱炭素社会に向けた強い意志がないことに対して国際的に批判が高まっています。日本は G7で唯一石炭火力発電所の新設がされており、2012年以来15基が稼働し、建設中と計画中の発電所が22基あります。さらにアジアなど海外にも石炭火力プラントを輸出していることが問題になっています。小泉大臣は今以上の行動が必要と認識しつつも、省庁間の合意が得られないことを仄めかしていましたが、「化石賞」を2度も受けたことを政府は厳しく受け止めるべきです。
私が先日参加したセミナーで、脱石炭をしたら鉄鋼や電力など日本の経済を支えている産業がガタガタになるという発言がありました。ただ、温暖化対策の必要性が言われて30年も経つにもかかわらず、転換の努力を何もしてこなかった産業を、さらに延命して日本の経済が持続的になるとは思えません。
COP25では、小泉大臣やグレタさんの発言をライブで見ることができました。グレタさんの発言で少し触れていましたが、温暖化については金融機関にも責任があります。石炭火力発電所の建設には資金が必要で、銀行などがその資金を提供しているからです。金融機関の投融資に関して2003年に策定された(その後改訂あり)エクエーター原則では、「金融機関という役割を通じて責任ある環境管理と人権尊重を含めた責任ある開発」を謳っており、また今年9月に大手銀行が署名した国連「責任銀行原則」では第一項でパリ協定との整合性が規定されています。ところが、COP25の期間中にドイツのウルゲワルドとオランダのバンクトラックというNGOが発表した資料によると、石炭火力発電事業者に対する融資額(2017〜2019年)において、みずほフィナンシャルグループ、三菱UFGファイナンシャルグループ、三井住友ファイナンシャルグループが、それぞれ世界で1位、2位、3位でした。これでは国際的に批判されても仕方ありません。
金融機関の温暖化対策でも欧米は先を行っています。先月フランスの銀行 BNP パリバは2030年までに EU での石炭火力関係の投融資を止めること、2040年までには全世界の石炭火力関係投融資から撤退することを発表しました。保険業界では独アリアンツ社や仏アクサ社、スイス再保険、ミュンヘン再保険、米チャブ社などがかなり踏み込んだ投資撤退(ダイベストメント)を公表しています。
日本の銀行や保険会社にも一部ダイベストメント宣言をしている会社はありますが、プロジェクトファイナンスや新規発電所だけを対象にしているなど抜け穴が多く限定的で、実態が伴っていません。
グレタさんが訴えているように、一刻も早く CO2の排出を大幅削減することが必要です。今のままの排出を続けたら、辛うじて地球環境を守ることができると分析されている1.5°Cの気温上昇に収めるためには、炭素予算(排出できる残量)はあと8年しかもちません。COP25の交渉が難航し目立った成果をあげられませんでしたが、どの国も自分の約束を最小限にしようと躍起になっているという印象です。氷山に衝突するタイタニックのディナーで、どちらの皿の肉が大きいかと争っているような暗澹たる気分になりますが、我々の力で変えていきましょう。
横山隆美