本事業の詳細: 

 

健康と人権に関する重大な懸念

 

ブンアン2は、三菱商事の子会社であるDiamond Generating AsiaとCLP(China Light and Power)ホールディングスの合弁会社であるOne Energy Ltd.が開発を進めている、総事業費約22億米ドルの石炭火力発電所で、日本の国際協力銀行(JBIC)とともに、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、三井住友信託銀行(SMTB)による融資が検討中と報道されている。本発電所は、既存のフォルモサ社の製鉄工場とブンアン1石炭火力発電所に近接した場所に建設される予定であり、どちらの施設に対してもコミュニティが抗議運動を起こしています。フォルモサ社の製鉄工場からの汚染物質流出は、ベトナムの歴史上最も深刻な環境災害と考えられています。 2016年、同製鉄工場は有毒化学物質を海に流出させ、ベトナム沿岸部を広範囲にわたって汚染し、周辺海域での漁業に深刻な影響を与え、コミュニティの食料と生計を奪いました。ブンアン1石炭火力発電所は、貯炭場が住宅地や農地に近接していること、また発電所から大気汚染物質が生じることが懸念されています。同発電所は、2011年、JBIC、MUFG、SMBCが融資を行いました。地域住民や医療センターによると、同地域の既存の設備に起因すると思われる心臓病、脳卒中、肺疾患、皮膚の疾患、癌の発症数は増加しています。

 

さらに、唯一公開されている2010年の環境社会影響評価では、その策定段階で、プロジェクトの影響を受けるコミュニティが事業に関する適切な協議の機会を与えられていなかったことが示されています。したがって、現在もコミュニティが事業についての情報を十分に入手できているか、また協議に適切な形で参加できているか懸念されます。事業の累積的な影響が甚大であることを考慮すれば、すでに多大な負担を強いられているコミュニティとの適切かつ十分な協議が不可欠です。


ベトナムの石炭火力に関連する財務リスク

 

ブンアン2の計画が進むベトナムでは、再生可能エネルギーが石炭よりも急速に安くなっています。英金融シンクタンクCarbon Trackerの最近のレポートによると、ベトナムにおいて、2020年には新規石炭火力発電よりも新規太陽光発電への投資が安くなり、2021年には新規陸上風力発電も石炭より安くなると推定されています。

 

現在ベトナムでは新たな石炭火力発電所(推定発電容量35.7GW)が計画されていますが、それらの進行は大幅に遅れています。遅延によるコストアップと合わせて、再生可能エネルギーのコストダウンが進むことによって、ブンアン2を含む2020年以降に稼働となる新規石炭火力発電のコストは、再生可能エネルギーよりも高価になるでしょう。これらを踏まえると、ブンアン2は座礁資産になるリスクがあると言えます。


銀行のESGポリシーおよび国際的なコミットメントと不整合

 

MUFGとSMTBは、新規石炭火力発電所への融資に原則として取り組まないと明確にコミットした与信ポリシーを採用しており、本事業は融資の対象とすべきではありません。ただし、両銀行のポリシーには大きな抜け穴が存在します。 MUFGは、2019年5月15日の改定されたポリシーにおいて、「当該国のエネルギー政策・事情等を踏まえ、OECD 公的輸出信用アレンジメントなどの国際的ガイドラインを参照し、他の実行可能な代替技術等を個別に検討した上で、ファイナンスに取り組む場合があります。」と述べています。上述した石炭火力発電の座礁資産リスクを考慮し、MUFGは自らの融資について再評価する必要があります。また、SMTBは、関連する国際基準を参照して、事業によっては石炭火力ポリシーの対象外とする可能性があると述べています。最も関連性の高い国際目標であるパリ協定の達成のためには、銀行は石炭への融資を直ちに停止する必要があります。すでにコミットしているにもかかわらず、新規石炭火力発電所への融資を継続するという両行の決定がなされれば、両行のESGポリシーが脆弱であることを露呈することになるでしょう。さらに、みずほとSMBCを含む4行はいずれも、9月22日に国連責任銀行原則(PRB)に署名しており、署名銀行は「SDGsおよびパリ協定に事業戦略を整合させる」ことを約束しています。この約束からわずか1か月余りで新規石炭火力発電所に融資を行うことが決定されれば、国際社会および投資家からの信頼性を大きく損なうでしょう。