【プレスリリース】
350.org調査報告書「世界に広がる化石燃料ダイベストメントと自然エネルギー投資の傾向」発表
2016年12月12日
国際環境NGO350.orgは、協力団体とともに、「パリ協定」合意1周年記念である12日に合わせて、米国の投資顧問会社Arabella Advisorsの「世界に広がる化石燃料ダイベストメントと自然エネルギー投資の傾向」に関する第3回年次報告書を発表しました。同報告書によって、化石燃料から投資を撤退する、ダイベストメントの世界的な動きは、2015年9月以来資産規模が2倍になっていることが明らかになりました。ダイベストメントへの世界的なコミットメント(確約)は、76か国の688機関に達し、その運用資産総額は5兆ドルに相当します。[1] 注目すべきコミットメントには、保険・年金・資産管理などの業務を提供する、世界最大級の金融機関エイゴン、労働組合が保有する米国のアマルガメイテッド銀行や各国首都であるワシントンDC、ベルリン、そしてシドニーなどが含まれます。
「観測上最も暑かった2016年も残り数週間となる中で、ダイベストメント運動の成功はもはや否定できません。地球温暖化の影響が深刻化し、トランプ政権のような退行的かつ地球温暖化問題に対して非協力的な政府に直面する中で、私たちの資産を運用する様々な機関が、化石燃料への依存から抜け出すことがこれまで以上に重要となりました」と、350.orgの事務局長、メイ・ブーヴィが述べています。
米国の大学キャンパスで始まったダイベストメント運動は、現在、社会のすべての分野に浸透する主流の世界的運動になりました。ダイベストメントは、大学や年金基金から、信仰に基づく団体や保健機関、保険業界や文化機関などに至るまで、あらゆる種類の機関が参加しています。
近年、日本でもダイベストメントという言葉が使われ始めたにも関わらず、いまだに大きなコミットメントは見受けられていません。むしろ世界的な動きに反して、350.orgの日本支部である350.org Japanの調査で、日本の民間金融機関による化石燃料および原発関連企業への巨額な投資・融資の実態が明らかになりました。
「海外では、脱炭素社会への移行が加速する中、化石燃料関連企業への投融資が将来座礁資産になる恐れがあるカーボン・リスクは重大な問題として認識されています。とりわけ、温室効果ガス排出量の多い石炭関連企業からのダイベストメントが相次いで起きています。一方で脱炭素社会への鍵となる自然エネルギーへの投資は世界的に増加していて、大きなビジネスチャンスです。高排出な化石燃料に依存し続けている日本の電力会社や資源開発関連会社、そしてそれらを支える民間金融機関が急速に事業モデルを改革しなければ、様々な面において莫大な損失を抱える恐れがあります。また、350.org Japanは日本の消費者に「どの銀行を選ぶかという決定こそが地球に直接的な影響を与える」と呼びかけ、カーボン・リスクをしっかりと配慮して、責任のある投融資を行う銀行選びを促す『MY BANK MY FUTUREキャンペーン』を展開しています」と350.org Japan代表の古野真は語ります。
本報告書の発表によって、ダイベストメントは倫理的な取り組みだけではなく、経済的リスクを見据えた世界的な動向だということが明らかになりました。日本は「パリ協定」の締結が出遅れるなど、脱炭素社会への競争において後れを取っています。京都議定書をとりまとめた「環境先進国」としての名誉を挽回するために、日本は100%自然エネルギー社会への取り組みをすぐさまに進めるべきです。
350.org Japanは12月19日に、消費者が、自分が口座をもつ銀行が気候変動リスクを考慮した投資・融資を行っているかを調べられる、『MY BANK MY FUTUREキャンペーン』のウェブサイトを公開します。
[注釈]
1この数値はダイベストメントを表明している機関や個人の運用資産総額です。 環境、社会、ガバナンス(ESG)の問題に足並みをそろえた投資家グループを、管理下の総資産に関する集合体として特定するのは一般的です。 また、化石燃料を排除することにコミットした機関の多くは、その投資資産に透明性がなく、特定のポートフォリオ情報の開示を望んでいません。 そのため、化石燃料会社からの投資撤退に関する正確な指標を、具体的に作成するのは不可能でした。
調査報告書「世界に広がる化石燃料ダイベストメントと自然エネルギー投資の傾向」はこちらのリンクでご覧になれます:https://www.arabellaadvisors.com/wp-content/uploads/2016/12/Global_Divestment_Report_2016.pdf
調査報告書「世界に広がる化石燃料ダイベストメントと自然エネルギー投資の傾向」のエグゼクティブサマリーの翻訳はこちらのリンクでご覧になれます:http://bit.ly/2hGQMWw
化石燃料からのダイベストメントのコミットメントをまとめたリストはこちらのリンクでご覧になれます:gofossilfree.org/commitments
お問合せ
350.org Japan TEL 090-2183-2113 EMAIL [email protected] 担当:棚尾(たなお)