2019年12月16日

【プレスリリース】COP25は化石燃料産業にとっての成功。気候変動対策求める市民の声に、あまりに弱腰すぎる政府対応

プレスリリース

2019年12月16日
国際環境NGO 350.org Japan

 

COP25は化石燃料産業にとっての成功。気候変動対策求める市民の声に、あまりに弱腰すぎる政府対応

 

 

マドリード — 15日に閉幕したCOP25(気候変動枠組み条約第25回締約国会議)において、各国代表団は、またしても人類の存続に関わる気候危機への取り組みに失敗しました。 この2週間、各国の交渉官は「ルールブック」と呼ばれる、2015年に採択された気候変動への国際的な取り決め「パリ協定」を実施する上での規定詳細をまとめる最終調整に奔走していました。 その際、議題のほぼ全てについて、石炭・石油・天然ガスに既得権益をもつ少数の影響力ある国々が、ルールづくりの進展を徹底的に妨害したのです。

 

これは、2019年に気候ストライキやマーチに参加、迅速かつ抜本的な気候対策を求めた数百万人の市民の声、また、ますます懸念を強める科学者や研究者の声とは際立って対照的です(*)。

 

 350.org 日本支部代表の横山隆美は、COP25における日本の対応に関して「日本政府の代表としてCOP25に出席した小泉環境大臣は、世界から『石炭中毒』という厳しい批判があると認め、国内の石炭火力新設や輸出に対する認識と世界の認識との間に大きなギャップがあると語ったものの、温室効果ガス排出削減目標の引き上げや脱石炭に触れることはありませんでした。加えて、日本の二酸炭素排出量が減少していることや地方自治体の脱炭素取り組みなど、政府自体の努力とは言えない結果をアピールすることで批判をかわそうとしたことに失望を禁じ得ません。報道によれば、経産省が小泉大臣の前向きな発言を阻んだと言われていますが、気候の不可逆的転換点が迫っているという危機感を政府内で共有し、削減目標を大きく引き上げ、一刻も早く具体的な行動計画を作成することが求められています。」と総括しました。

 

以下に、350.orgのメイ・ブーヴィ事務局長による声明を掲載します: 

 

「COP25は化石燃料産業の成功に終わりました。化石燃料産業は巧みに交渉の進展を妨げ、結果を骨抜きにし、勝利を手にしたのです。残り時間が少なくなる中、気候会議はまるで燃え盛る建物の中に人質が閉じ込められているような状況になりつつありました。人質にされたのは大半の気候交渉官や、人類と地球で、その間、化石燃料産業と数少ない傲慢な国々の政府が自分たちの主張を押し通し、交渉プロセスを乗っ取ったのです。結果、交渉官は3日間連続でこれにかかりっきりにならざるを得なくなり、その隙に化石燃料産業は、ほとんどの大きな問題をCOP26に持ち越すという非常に弱い合意文書を手にすることができたのです。」

 

「気候ストライキから1年、気候科学がますます大きく警鐘を鳴らす中、これだけは明確にしなければいけません。気候崩壊に対し受け入れられる唯一の対応は、政府が化石燃料の段階的廃止に直ちに着手するほかないということです。それに伴い、政府はこの危険な産業に提供してきた資金も打ち切らなければいけません。 これのみが、そしてこれこそが、気候危機の解決に向けた成功基準であったにもかかわらず、この重要な試練において、政治家はまたしても私たちの期待を裏切ったのです。 気候交渉は再び膠着状態に陥ってしまいました。化石燃料産業に支配される政府や、CO2を大量排出する企業が交渉の進展を妨害したり、遅らせたりしているのです。 科学を踏まえると、膠着状態に陥るということは、私たちの方が負けつつあるということです。 私たちの知る『すべきこと』と、政治家がやろうとしていることとの間に横たわる隔たりが、かつてこれほど大きかったことはありません。 恐ろしいほどの勇気と責任感の欠如。これを説明できるのは、化石燃料産業による政治家支配という悪影響以外に考えられません。」

 

「若者の活動家や先住民のリーダーたちが世界各地から集まり、気候交渉には道徳的側面に関するプロセスが欠けていると指摘しました。 というのも、若者の活動家や先住民のリーダーたちは発言権を与えられなかったばかりか、交渉会場から締め出されてしまったのです。そして会場に残ることを許された化石燃料ロビイストが、『対策が不十分である』という事実を隠蔽するための複雑なルールを作ったのです。」

 

「今年の気候交渉は、これで閉幕になりますが、市民運動が終わるわけではありません。 帰国後、私たちは世界中の首都で、関係省庁で、銀行本社で、あるいは化石燃料インフラで、さまざまな行動を起こし続けていきます。 マーチに参加したり政治家に圧力をかけたり、旧態依然とした政策を変えるための行動はこれからも継続します。 さらに私たちの声を確実に届けるため、投票にも行きますし、さまざまなキャンペーンにも参加します。 必要な気候政策を支援する動きは世界中に広がっているのです。  人々は、全人類と地球にとって有益な公正な移行を望んでいます。特に、深刻化する気候危機に対し、もっとも大きな被害を受ける脆弱な地域の人々のために。

2019年を、『気候危機への対策を求め行動を起こす若者たちの年』と呼ぶ人もいますが、本番はまだこれからです。」

 


 

(*)この2ヶ月間にわたり、国連機関や研究機関が多数の報告書を提出、気温上昇を1.5未満に抑えるには、今から2030年までの間に、温室効果ガス排出量を 毎年7.6%削減(前年比)しなければならないと指摘しています(UNEP:国環境計画)。現行のままだと3.2°Cの気温上昇は避けられない上、世界全体では気温上昇を1.5未満に抑えることを想定した排出量の2.2倍分の化石燃料が2030年に生産されようとしています(UNEPおよびストックフォルム環境研究所)。 一方、温室効果ガス排出量は増加の一途をたどり、 海面上昇や氷河の融解、極端な異常気象をはじめとした、気候変動による明確な影響や兆候は、過去5年間で増え続けているのです (WMO:世界気象機関)。

 


本件に関するお問い合わせ:

国際環境NGO 350.org Japan 代表 横山隆美

Email: [email protected]

Tel: 090-4668-6653