2018年4月19日

【プレスリリース】メガバンク3行、自らの環境へのコミットメントを反故にし、より効率の劣る石炭火力への融資決定

【プレスリリース】

2018年4月18日

メガバンク3行、自らの環境へのコミットメントを反故にし、より効率の劣る石炭火力への融資決定


本日、ベトナム、オーストラリア、日本などの市民団体は、日本の民間銀行が、より効率の劣る石炭火力技術である超臨界を用いたベトナムのギソン2石炭火力発電所建設への融資を決定したことを非難するとともに、銀行による環境・社会リスク管理を定めた重要な取り決めである「赤道原則」の署名銀行として適切に行動し、ギソン2石炭火力発電所への融資から撤回することを求めました。

三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友銀行、みずほ銀行は、ベトナム・ギソン2石炭火力発電所への融資を4月13日(金)に決定したと報道されています。

同プロジェクトには数々の環境・社会リスクが付随することから、市民団体のグループは先月上記3行に対しては、同プロジェクトへの融資決定は赤道原則違反となる可能性を伝えています。しかし、この勧告は無視され、3行は融資を決定しました。ギソン2石炭火力発電所は、ベトナムの発電所の平均温室効果ガス排出量の2倍の温室効果ガスを排出します。

「SMBC、MUFG、みずほ銀行はベトナム人には綺麗な大気とクリーンな電力ではなく、汚染や時代遅れの技術を受け入れるべきだと考えているようです。西側諸国が経験してきた石炭火力の失敗から学び、クリーンな開発のチャンスを模索しているベトナムの人々にとって、この二重基準は侮辱でしかありません」とベトナムのCHANGE Vietnam事務局長のホン・ホアン(Hong Hoang)は述べました。

赤道原則採択金融機関であるスタンダードチャータード銀行は、ギソン2石炭火力発電所の融資銀行団に入っていましたが、先月この融資から撤退しました。

オーストラリアのマーケットフォース事務局長のジュリアン・ヴィンセント(Julien Vincent)は「スタンダードチャータードは、ギソン2石炭火力発電所への融資が赤道原則違反になることから、適切に融資から撤退しました。しかし一方で、日本のメガバンクは赤道原則をないがしろにしています。赤道原則は、プロジェクトが住民、プロセス、環境リスクなどが看過されている場合、銀行に対し融資を提供しないよう求めています。融資を決めた日本の3行は、融資決定を恥じるべきです」と訴えました。

350.org Japan代表の古野真は「三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友銀行、みずほ銀行がベトナムの超臨界石炭火力発電所に融資をすることは、パリ協定が定めている1.5-2度の温度目標と整合しません。また3行は、気候関連財務情報開示タスクフォースによる勧告に賛同していることとも、まったく矛盾しています」と話しました。

 

赤道原則違反

市民団体により明らかになっているギソン2石炭火力発電所融資にともなう赤道違反原則

  • 代替案が検討されていない
    赤道原則原則2は、「全てのプロジェクトについて、スコープ1(Scope 1 Emissions)とスコープ2合計の温室効果ガス排出量が CO2換算で年間 10 万トン超になると見込まれるプロジェクトについては代替案分析を実施する」としています。しかしギソン 2 の ESIA では、そのような代替分析は行われていません。
  • ベトナム国内法違反の可能性
    赤道原則原則3では「アセスメントのプロセスにおいては、第一に、プロジェクト所在国の環境・社会問題関連法規制、許認可の遵守状況を示さなければならない。」としています。しかしEIAは、プロジェクトにより直接影響を受けるコミュニティーとの住民協議が行われたのかどうか、そしてどのように行われたかについて明確にしていません。
  • ステークホルダー・エンゲージメントの欠如
    原則5においては、継続的なステークホルダー・エンゲージメントを求めています。ベトナムの国内法が求めるパブリックコンサルテーションに加え、プロジェクトにより影響を受けるコミュニティーに対し、継続的なコンサルテーションとエンゲージメントが確保されていたのか不明です。
  • 独立したレビュー
    原則7においては、赤道原則採択金融機関に対し、アセスメント文書の独立レビューを行うことを求めています。邦銀3行が、そのような独立レビューを行っているかどうかは不明です。しかし、もし独立レビューが行われていたとしても、技術的な変更を行わず非常に多くの温室効果ガスを排出するギソン2への融資を決定したとすれば、懸念すべき点です。
  • 情報の欠如
    プロジェクトの影響を受けるコミュニティーが潜在的な影響や代替案についての情報にアクセスできないことは、赤道原則原則3に違反し、プロジェクト立地国の規制枠組みを盾にできない、明らかな違反行為です。ベトナムは環境影響評価を一般に公開することを求めていませんが、ベトナムのような「指定国以外の国(non-designated)」においては、IFC(国際金融公社)のパフォーマンススタンダード1の基準を満たさなくてはいけないと規定しています。IFCパフォーマンススタンダード1は、プロジェクトスポンサーがプロジェクトにより影響を受けるコミュニティーに対し、(iii)コミュニティーに与える影響及び適切な緩和手法、(iv)想定されるステークホルダーエンゲージメントプロセスなどに対し、適切な情報を提供することを定めています。これらの情報が、プロジェクトにより直接影響を受けるコミュニティに提供されているかどうか明らかではありません。

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350 Japan 棚尾真理絵: 090-2183-2113, [email protected]